第17話 2人でおでかけ
「これどう考えても俺は場違いなんじゃないのか?」
向かった先は駅ビルの五階。
レディースの衣服をメインに取り扱うフロアだった。
「でもよく見てよ、結構男女のペアはいるじゃん?」
言われて見渡せば確かにいることはいるのだが……ほぼ全員が腕を組んだり手を繋いだり……所謂、カップルというやつだった。
「どう見てもカップルだけどな?」
そう返すと紗奈は強引に俺の腕に自分の腕を通した。
「これなら大丈夫じゃない?」
ニヤッと笑った紗奈はそのまま歩き出す。
「大丈夫ってお前……」
予想もしない紗奈の行動に戸惑っていると紗奈は蠱惑的な笑みを浮かべて言った。
「ならいっそのこと、そういう関係になっちゃう?」
予想の斜め上を行く紗奈の言葉になんと返したものかと考えていたが、
「おっほんっ!!何かお困りですか?」
と、お店の店員に水を刺されて終わった。
「積極的にアプローチしても振り向いてくれないんですよ〜」
困ったような顔で紗奈が店員に言えば、店員はすぐさま営業スマイルを浮かべた。
「それならちょっぴり露出は増えますが、この辺りなんてどうでしょうか?」
店員が手に取った服は肩出しのトップスで、それを紗奈は自分の体に合わせた。
「これから暑くなりますからこのシーズン、人気のあるスタイルになりますね。彼氏さんからみてどうですか?」
「……他の男からの視線を紗奈が気にするか気にしないか次第だな」
そう返すと、むぅ〜っと不満そうな顔をした紗奈は、「店員さん、彼の奢りでこれとこれ、お願いします」と、二着の服を店員に渡したのだった。
「俺が奢るのか……?」
「本当に乙女心を学ぼうって気があるならさっきの受け答えはないと思うんだよね。罰金だよ罰金!!」
たしかに教えてくれとは言ったが……
「なら、何て答えれば良かったんだ?」
そう尋ねると紗奈は腕を組んで得意げな顔で言った。
「repeat after me!!似合ってるよ!!」
無駄に良い発音で言い終わるとチラリとこっちを見るので仕方なく
「似合っているよ」
と棒読みで返した。
「似合ってるけど、紗奈にそういうのは着て欲しくないかも」
「……紗奈にそういうのは着て欲しくないかも……もうこれ言わせてるだろ」
「次で最後のパターンだよ、紗奈……お前が好きだ!!」
「紗奈……」
そう言いかけたところで紗奈が期待に満ちた眼差しで俺を見つめてきた。
「お前、これはもう関係ないだろ」
「チッ……あとちょっとだったのに……」
どういうわけか恨みがましい視線を浴びせてきた紗奈は、ズカズカと歩き出してレジへと向かった。
「俺が出さなくてもいいのか……?」
それくらいの余裕は一応ある。
「反省してるなら態度で示して欲しいかな。この後、期待してるよ」
と言われたのだった。
態度で示せって言われてもなぁ……恋愛経験など無かった俺にそんなことができるはずもなく……仕方なく創作物上でのイメージでこの後、過ごすことになるのだった。
幼馴染に内緒で、俺は先輩を買う。 ふぃるめる @aterie3
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