第4話 【イラストあり】幼馴染の観察眼

 「シフト増やしてくれてありがとうね」

 「いえいえ、ちょっとお金が必要になったんで」


 翌週の月曜日、放課後のコンビニバイトは店長の深雪さんと一緒だった。


 「何か欲しいものでも出来たのかしら?」

 「そう言われれば、そうですね」


 さすがに先輩の時間を買うと答えるわけにもいかず、答えは濁した。


 「ふ〜ん。女の子ってことかな?」

 「……くだらないこと言ってないで、お客さん来ましたよ」


 見透かされているような気がして居心地が悪くなったところで、都合よく客が来てくれた。


 「今日のところは詮索しないでおいてあげるけど、気をつけてよね。奏くんが捕まっちゃったら困るのは私なんだから」


 訝しみつつけれども笑顔で店長の深雪さんはそう言うと業務用の表情に戻った。

 心配には感謝しつつも、お金の使い方は決して褒められたものじゃないという自覚はあるから申し訳なさが先立った。

 今週から月曜、水曜、金曜は午後5時〜午後10時、土曜日は午前8時〜15時というシフトの入れ方をしていた。

 深夜帯じゃないから時給は1100円と少しぐらいだったが一週間で、23100円くらいは稼げる計算だった。

 原則として6時間を超える場合は45分以上の休憩を取らざるを得ないので、土曜日は実質6時間分の賃金となるのに思うところが無いわけじゃなかったが……兎にも角にも勉強とのバランスはこれから調節していくことにした。

 「頑張りすぎなんじゃない?」と店長の深雪さんには言われたが先輩の経験している辛さと比べたらわけもないだろうと思った。


 ◆❖◇◇❖◆


 「おら、三上〜起きてっか?」


 体育の後の6限の英語、奏は珍しく横で寝ている。

 クラス担任でもある若林先生が、気だるげに声をかけるが奏の反応は無い。

 

 「七瀬〜起こしてやれ」


 そう言われて、シャーペンのノックする部分で優しく頬っぺたをつついた。

 

 「……ん?」

 

 目を覚ました奏は、チラッとこっちを見ると慌てて居住まいを正した。


 「寝てただろ〜ちゃんと先生の授業聞いてないと置いてかれちゃうぞ〜」

 「すんません」


 英語の教科係でもある奏は、そう謝るとクラスでは笑いが起きた。

 奏は成績優秀だし教師からのウケもよく、傍から見てると若林先生と奏とは仲良さげに見えるのだ。

 6限が終わって私は何となく奏に異変を感じたので聞こう思った。


 「ねぇ……今日の放課後空いてない?」


 私は奏の顔に疲れが出ていることを見逃さない。

 というか奏に起きる変化だったら何でも気付けるくらいの自信はある。

 何しろ、私は幼稚園の頃から奏とずっと一緒だし奏は多分覚えてないと思うけど……その、キスだってしたこともある。

 それくらいには……と言うよりかはいつも見てしまうくらいには奏のことが好きなのかもしれない。

 告白しないのは私がヘタレってのもあるんだけど、それ以上に奏の口から言って欲しいからだ。

 そんな奏に起こる変化に気付かないはずがないし、理由だって何となくなら検討もついた。

 これまで土曜日だけだったシフトを増やしたんだと思う。

 でもそれならなんで今さらバイトを増やしたんだろ……。

 事情を問うために意を決して誘うと、奏は少し考えるような顔をしてから


 「わかった」

 

 と答えた。

 いつもなら考えるような素振りなんて見せないのに、なんでだろ……。

 謎は深まるばかりだった―――――。




 †イラスト追加のお知らせ†


 近況ノートの方に紗奈ちゃんのイラスト、掲載しておきますので見てってください(ง •̀_•́)ง

 下記URLより近況ノートに飛べます。

https://kakuyomu.jp/users/aterie3/news/16817330656253767077

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