25
「はぁ~い、そこまで~。」
手首を掴む骨ばった感触とともに、この状態にそぐわないゆる〜い声が落ちてきた。同時に、女子の黄色い声で沸く。掴まれた手を辿って顔を上げた先、其処に居たのは。
近江涼介。
「だめだよー?藤澤ちゃん。今のは完全に八つ当たりだ。」
近江涼介の肩に手を掛けて、傍らからひょっこりと榛名聖が顔を出す。
「普段からそーやってりゃいいのに、ぶりっこしてっからブチ切れるんだよ、ブス」
女子と私の間に立ちふさがって呆れ顔なのは金髪だ。
予想外すぎる出来事に私は目を瞬かせるばかり。さすが学園の王子、女子達のピンチにナイス過ぎるタイミングで助けに入るなんてなかなか粋じゃないか。
「君らも駄目だよ~?こんな集団で一人をいじめるなんて。」
「どっちかって言うとひとりが集団をいじめてたけどな。」
「まーくんは黙ってなさい。話がややこしくなるから」
……。
こいつら何しにきたの?
コントもそこそこに、主に榛名聖がやさしーく女子たちを窘める。
イケメンの言う事には素直に従う女子達。さっきまでの怒りは何処へやら、すっかり腑抜けた様子で撤退していった。
残ったのは私とH2Oのお三方。
榛名聖は未だ未練がましく振り返る女子達に、愛想よく手なんか振っちゃってて。金髪は心底お疲れ、といった様子で肩を回してストレッチ。
近江涼介はというと。
「…離してよ」
無表情無言のまま私の手首を掴んで離さない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます