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「はぁ~い、そこまで~。」


手首を掴む骨ばった感触とともに、この状態にそぐわないゆる〜い声が落ちてきた。同時に、女子の黄色い声で沸く。掴まれた手を辿って顔を上げた先、其処に居たのは。


近江涼介。


「だめだよー?藤澤ちゃん。今のは完全に八つ当たりだ。」


近江涼介の肩に手を掛けて、傍らからひょっこりと榛名聖が顔を出す。


「普段からそーやってりゃいいのに、ぶりっこしてっからブチ切れるんだよ、ブス」


女子と私の間に立ちふさがって呆れ顔なのは金髪だ。


予想外すぎる出来事に私は目を瞬かせるばかり。さすが学園の王子、女子達のピンチにナイス過ぎるタイミングで助けに入るなんてなかなか粋じゃないか。


「君らも駄目だよ~?こんな集団で一人をいじめるなんて。」

「どっちかって言うとひとりが集団をいじめてたけどな。」

「まーくんは黙ってなさい。話がややこしくなるから」


……。

こいつら何しにきたの?


コントもそこそこに、主に榛名聖がやさしーく女子たちを窘める。

イケメンの言う事には素直に従う女子達。さっきまでの怒りは何処へやら、すっかり腑抜けた様子で撤退していった。


残ったのは私とH2Oのお三方。

榛名聖は未だ未練がましく振り返る女子達に、愛想よく手なんか振っちゃってて。金髪は心底お疲れ、といった様子で肩を回してストレッチ。

近江涼介はというと。


「…離してよ」


無表情無言のまま私の手首を掴んで離さない。



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