21
痛――…くない…?
――わけないよね、痛い痛い、もう超痛い。
どうやらヒーローは来なかったらしい。ビリビリと痺れるような痛みが久々に私を襲う。これは手形がついたかもしれない。
さっきといいこの平手打ちといい、奴は相撲かなんかでもやってるんじゃないだろうか。なんかガタイいいし。
頬が熱い。不本意だけど、表情が痛みに歪む。叩かれた衝撃で情けなくもその場に倒れこんでしまった。
それでも負けたわけではないと、ゆらり、視線を持ち上げる。幾分清々したような表情の女達は、荒い鼻息を落として踵を返した。
「やっと静かになったか」
立ち上がって制服についていた砂を払っていると、今度は真上から声が降ってきた。鋭く、酷く淡々とした声だ。ぴたり、手を止めて校舎へと振り返る。
二階の窓には煩わし気に眉を顰め、こちらを見下ろす近江涼介がいた。
「…変なとこ見られちゃったかなぁ」
こんな時でもぶりっこスマイルが作れる私はなかなかの役者だと思う。会話は返ってくることはなく、近江涼介は無表情に私を見つめる。何を考えてるかわからないその表情が、何故か苛立たしい。
「お前、」
ようやくその薄い唇が微かに動く。
「あんな一方的にやられて、悔しくねーの?」
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