第15話 悠ちゃんと優依ちゃん
『悠ちゃん、推すというのは尊いことなのよ』
「そうみたいだね」
さっきのブルーレイにいた老夫婦が天見優依に手を合わせていたけど、ああいうのが推しっていうんだろうね。
『例えばこれ』
千瑛ちゃんの言葉とともに空間にグラビアアイドルの
『グラビアアイドルの彼女を推す男は多いわ。だけど、そこには性欲という側面もあると思わない?』
「否定はしない」
『彼もそう』
続いて現れたのは人気キャラクターのオフトンマンだ。『僕のお布団でお眠り』で人気だ。
『彼を推す子供達には睡眠欲という要素があるわ。これも純粋な推しとは言えない』
「オフトンマンを推す子供達にはそういう邪気はない気もするけど」
という僕の声を無視して天見優依が映る。
『翻って優依ちゃんよ。優依ちゃんを推す人達は性欲や食欲や睡眠欲なんて邪念を抱きようがないの』
「そ、そうかなぁ」
確かに天見優依は水着姿になったことがないけど、それでも男子には恋愛要素もあるのではないだろうか。
『そんなものはありえないわ。何故なら』
「何故なら?」
そこで千瑛ちゃんはワンテンポ置いた。
『何故なら、優依ちゃんは女の子じゃないもの』
「......えっ?」
一瞬、絶句する僕。
それまで黙って聞いていた山田さんもタバコをポロっと口から落とした。
「ど、どういうこと? もしかして......?」
考えたく無い話だけど、天見優依は男の娘......?
『悠ちゃん、貴方は馬鹿なの?』
「そ、そうだよね、流石にあの外見で」
男はありえないよねと答えようとしたところ、まさかの言葉が返ってきた。
『男なら、女子が劣情を催すじゃない?』
と言って、名前は分からないけどイケメン俳優がシャツを半分脱いでいる映像が出てきた。うーむ、これは男のエロさというか、そういうものが溢れ出ている。
「男じゃ無いんだよね?」
『そうよ』
「でも、女の子でもない?」
『そうよ』
「だったら、何なの?」
『決まっているでしょ。優依ちゃんはアイドルなのよ。真のアイドル、真に推される存在には性別なんていうチンケなものは存在しないわ』
「えぇーっ!?」
男でも女でもない存在?
一体どういうことをしたら、そうなってしまうの?
と、言ったら、千瑛ちゃんは心底呆れたような溜息をついた。
『ここまで説明しても、まだ思い出さないの? 悠ちゃんにとって、優依ちゃんが何者であるのかを』
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