第27話

「そうはならないから、安心して」

淡々とした声が俺の内面を読み取ったかのような口調で言っているのを聞き、俺は真正面に顔をむいた。

あやうく、橋の鉄柱に自転車ごと突っ込みそうになり、ブレーキを握る。

自転車をとめ、俺はすぐに後ろを向く。

カウボーイのバイクが此方にむけて走行してきていた。

「早く、ペダルを漕いで」

声が聞こえると、俺の横を影が遠すぎていく。その影を捕らえる。

声の主は俺に銃をむけた女子生徒、葛道彩葉だった。

彼女は両手にハンドガンを持ち、カウボーイに向けて、銃口を退いていた。

カウボーイは不覚だったのか、「シット!」

バイクのアクセルを急加速させると、葛道の方にむかっていく。

「bitch!!」

カウボーイは何か、悪態めいたことを叫び、葛道にむけてバイクを突進させる。

彼女は逃げることもせず、真っ向からカウボーイを迎え撃とうとする。

「お、おい!」

俺は気が付けば、ペダルを漕ぐのをやめ、葛道に向かい叫んでいた。

本当に死ぬぞ。

そう思った瞬間、カウボーイのバイクに葛道はドンという衝撃音と共にはねられ、宙を待った。

俺は開いた口が塞がらず一瞬の出来事に呼吸をするのを忘れてしまった。

しかし、俺が驚いているつかの間、葛道は空中で体操選手のように宙返りをすると、手にした、ハンドガンをカウボーイに向けて、発砲した。

カウボーイは、すかさずバイクを運転し、その場を離れる。

銃弾は、それて地面にあたる。

宙を舞う葛道は身体をひねり、地面に映画の中のヒーローのように着地する。

着地すると、彼女はすぐにカウボーイに向けて、ハンドガンを向ける。

「Fuck!」

カウボーイは葛道の姿をみて、彼もリボルバーを構える。

葛道は一向に表情を変えることなく、ハンドガンの引き金を絞る。

それと同時に、カウボーイも、リボルバーの引き金を絞る。

お互いの銃声がきこえるが、お互いに負傷はしていなかった。

しかし、それでもお互いに退くこともせず、向きあい続け、銃を構えるだけ。

睨み合いながら、先に口を開いたのは葛道だった。

「ぼっとしてないで早く逃げて」

葛道は俺にむかって背中を向けているが、後ろに目が着いているんじゃないかと思うくらいに、彼女は的確に、俺に言った。

「あっ、は、はい」

俺は情けないくらいの返事をし、自転車をこぎ出す。

「Fuck!」

カウボーイは銃口を俺の方にむける。

視界の端でこちらに向けるのが分かった。

ヤバい。

そう思った瞬間、葛道は、勢い良く俺の方向に走る。

完全にこれじゃあ、弾丸が当たってしまう。

しかし、俺の予想に反した結果が起きた。

カウボーイが発射した弾丸は、葛道に当たることなく、その場で落ちた。

俺は訳がわからず、口を開けてみてしまう。

葛道は片手を上げて、立っていた。

「OH,Jesus...」

カウボーイはバイクを急停止し、銃を下げていた。

「アンタの弾丸なんて、当たらない」

葛道は淡々というと、すぐにハンドガンを構えた。

「Bitti!」

すぐさまカウボーイも反応し、バイクをスロットルを回しバイクを運転する。

葛道は容赦することなく、ハンドガンの引き金を引く。

銃弾は当たることなく空をかすめ、カウボーイは俺の方に向かってバイクを走らせる。

「無駄な争いはしないぜ」

カウボーイは、笑い、葛道の脇を走りぬけようとバイクはしらせる。

俺はヤバいと思い、自転車のペダルに足を書けた。

「HayBOY.逃げるなよ!」

カウボーイはそう叫ぶと、銃を仕舞い、いつの間にか、縄を手にしていた。

本当に馬なら、風情があったのにと俺はどうでもいいことを頭の片隅で考えてしまう。

しかし、今は緊急事態だ、逃げばければ。

俺は、自転車のペダルを勢い良くこぎ始めた。しかし、相手はバイクだ。

それなりの速度をだしているから、振り切れるわけがない。

動こうとしたときに前に立っていた葛道は、走るバイクの前に、立ちはだかろうとする。

「お、おい」

俺は葛道に向かい、叫んだ。

葛道は聞くこともなく、ただカウボーイに対峙しようとする。

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