第8話 言葉は無くせど亡くならず
いい世の中になった。そう言われても少女には今の世の中がいいものとはとても思えなかった。
戦争は当たり前のように起こるし、虐殺とか一世紀は前の世界観だと思っていたことが実際に起きている。今でこれなら昔はどんな世界だったのか。
少女は現代訳された古い本を読んだ。でも言葉がなんだか読んでいて詰まる。
意味はわかる。だがどういうわけか婉曲的というか下手な言い回しをしているように感じるのだ。
だけど古本屋で同じ本を試しにめくって見ると理由がわかった。違和感を覚えた箇所にあったのは使われていない差別用語だった。
使われていない言葉だったが似たような意味で使われる言葉はざらにある。規制したところで似たような代替品に入れ替わるだけ。
根本的な解決をしなければ意味がないのに表面だけを取り繕っている。世間は今日も上っ面ばかり。
厭世観とでもいうのだろうか。そりゃ生きているのが嫌になる人もいるんだと少女はため息を吐く。
みんなみんな自殺していったら、この言葉も規制されるんだろう。そしてまた違う言葉に置き換わる。
本の中で差別用語を使うなと訴えている場面があった。伝えたい意味はもう伝わらなくなっていた。
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