SA 6. 大事なメールは熟読したい派

3


 サラたちが来院した目的の人物は、贅沢にも個室を使用していた。ベッドがゆうに二つは並ぶ広さだ。ついでに言えば、トイレ、バス付き。

「想像よりもいい部屋だな」

 引っ張ってきた椅子にサラを座らせ、ダンは皮肉気味にそう挨拶をした。

「なんだかんだ言っても俺たちだってA隊よ? 優秀なんだよ」

「優秀な奴は走ってくる車に自分から突撃なんてしないだろうが」

「そりゃそうだ」

 ベッドを挟んだ向かい側、窓に背を預け、腕を組む、監視兼護衛の黒髪の青年がおかしそうに笑う。

 そして目的である人物——ベッドの住人となった赤茶の髪の青年は枕に寄りかかり、自身の犯した失態などどこ吹く風で、サラのようにスマホを両手で握り、嬉々とした顔でスマホ画面をタップし、

「仕方ねーじゃん、兄さんから連絡が来てたんだから」

 と、サラと同じことをのたまう。

「ルカ、返信より先に報告しろ」

 監視の青年が促せど、

「はあ? フィルトンだってスマホいじってんじゃん。もうちょっと待てよ」

 赤茶髪の青年ルカは唇を尖らせて、それでも指は止まらない。

「うちの隊長からだ」

 なお、サラはいかにも仕事をしていますと言った顔で、ニヤケを取り繕っていた。

「特務隊の? あー、もう! 分かったよ」

 そうぶっきら棒に言い捨てると、すっと表情を引き締めた。

「北米からの報告です。本部の予想通り、クズネツォフ掃討時に忍び込んでいたのは、米国にある組織の者でした」

 サラはスマホ画面をタップする指は止めないが、聞き耳は立てていた。

 ダンは腕を組み、「それで?」と先を促す。ルカの話した前提はすでに特務隊内では周知されている。

 ルカは一度頷き、

「ネズミを使ったのは組織そのものだったようですが、その情報を使って再度うちに探りを入れてきているは、組織内にあるR.i.Pという小組織みたいです」

「知ってるとは思うが、お前ら、特務隊みたいな組織だな」

 監視の青年が付け加える。

 ダンが口元に手を当て、ルカが口にした組織名を繰り返す。

 サラはスマホを閉じた。どうにもイヤな予感がしてならない。ながら作業で聞いてはいけないような気がして、何よりも、せっかくのメールの内容がまったく頭に入ってこない。

 サラは足を組み、鮮やかなエメラルドグリーンの双眸をルカに据える。

「そいつらの目的は? ロードとアルがいて、何一つ分からないとか言うわけないよね?」

 すっと細められた目、綺麗だと誉めそやされる顔に見詰められ、ルカの喉が上下に動き、顔を引きつらせる。

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