第8話 ご飯とデザート
「いただきます」
程なくして真奈実と明音も席に戻り、各々食べ始める。
因みに明音はパスタにしたようだ。
少し前にバイトで
「何か言いたげね」
「いいえ何でも」
「パスタにしただけマシだと思うわ」
「俺何も言ってないよ!?」
「目が言っていたのよ」
といったやり取りをしている横で、一人黙々とハンバーガーにかぶりつく少女。
あんなに嬉々として買っていたのにただ黙々と食べ進めている。
「美味しいくないのか?」
思わずそう尋ねる。
「え、おいひいよ? 今も昔も変わらないこの味。安心感すらあるよね」
「にしては無表情すぎるぞ」
「だって食べにくいんだもん」
「そもそも食べきれるのかどうかだろ」
真奈実の小さな顔ぐらいあるハンバーガーは華奢な女の子が食べきれるか怪しい大きさだ。
食べにくいと言うように、ちびちびとしか食べ進められていない。
まあ最悪もしもの時は俺と明音で食べよう。
「あ、それは大丈夫だよ~。量的には問題なし! むしろ余裕だね」
「なら良いけど」
そしてその言葉通り、真奈実は時間こそ掛かったが余裕そうな表情で全て食べきった。
更にデザートでアイスを買ってくるとか言い出した。
「さっきチラッと聞こえたんだけどさ~、今日割引セールやってるらしいよ」
「へー良いわね。サー○ワン?」
「うん」
「じゃあ行きましょうか」
明音まで乗り気だ。
いやまあ俺も食べるんだけどさ。
そういう訳で1度フードコートを出て同じ階の店舗へと向かう。
「わたしこの時代に来てから良いこと尽くしかも。物価が安いって最高だね。まあ経済的にはあれだけど」
「未来でカップ幾らぐらいするんだ?」
今購入したのは小さいサイズで2種類のカップ型アイス。
これで約600円。割引されて400円になった。
この値段でも少し高くないかと思ってしまうのは俺が普段アイスを買わないからだろうか。
さっきの昼ご飯と合わせると1000円位か。
「700円ぐらい? あんまりよく覚えていないけど」
「まあ少し高いぐらいか」
「先が悲しくなる話なんてやめて早く食べないと解けるわよ」
久しぶりに食べたサー○ワンはまろやかで、イチゴとチーズのとても甘い香りが口に広がる。
偶にならこういう贅沢も良いかもしれないな。
食べ始めて直ぐから、何やら視線を感じる。
その方向を向くとこちらを見たり逸らしたりする明音がいた。
明音にしては珍しく物欲しげな、でも我慢しているような表情だ。
「えっと、1口食べる?」
「……貰う。イチゴとチーズの方」
スプーンで1口分掬い、はい、と明音に差し出す。
「ん。美味しい、ありがと。……こっちも1口良いよ」
なんとお返しがきた。
ではありがたく頂戴しよう。
キャラメル味のアイスを1口貰った。
こちらも更に甘く美味しい。
「土曜のショッピングモールっていうこの往来で堂々と食べさせ合い出来るのが凄いよね。さすがに私たちでも人前は恥ずかしいし。いやそれよりも両親のいちゃつきを見せられるのはどうなの!?」
「特に注目なんてされていないから問題ないわ。真奈実はこれまでも沢山見てきたんでしょ?」
真奈実に呆れられるけど、見られて無いからセーフだと言い張る明音。
と言うか真奈実、見られていないならするのかよ。
「そうだけど。それは2人が大人な訳じゃん? でも今は年同じだし」
「付き合って2ヶ月のカップルならこれ位するものよ」
「人目が無ければね。やっぱりお母さん昨日の話から吹っ切れてる?」
「気のせいよ」
「昨日の話? 何だそれ」
「柚希は気にしなくて良いわよ」
俺の知る由もないが、昨日帰った後2人の間に何かがあったのだろう。
それによくよく考えたらさっきのは間接キスになるけど、まあ付き合ってるし問題ないだろう。
少しドキドキはするけど。
いつか間接じゃない方も叶うなら…………。
いや、今考えるのはやめておこう。
「お父さん顔赤いよ。実は恥ずかしかった感じ?」
「……気のせいだ」
「ふうん」
何故か明音が得意げにこっちを見てきた。
いたたまれないのでアイスを一気に頬張る。
そうしたら案の定頭がキーンと痛くなる。
「まったく何やってるのよ。アイスはきちんと味合わないと」
「あ、そっち?」
「どっちよ」
「いや、なんでもない」
なんやかんやありつつもデザートのアイスを食べ終わり、今度こそ買い物を再会させる。
先程の続きで、まずは2人の服を見に行くとしよう。
「私達の服はある程度見終わったから次は真奈実の生活用品か柚希の服ね」
とか思っていたがもう殆ど終わりらしい。
「先にわたしの日用品を買う事を希望します」
「じゃあそうするか」
「ささっと終わったらさ~、2人で色々見てきなよ。その間わたし本でも見てるから。読書スペース位あるよね?」
「ここの本屋はス○バ付きよ」
真奈実からこんな提案がされるとは思わなかった。
俺達に気でも使ってくれたのだろうか。
「じゃあそういうことで最初は薬局へレッツゴー」
「ありがとな真奈実」
「今日は元々デートの予定だったんでしょ? わたしのせいでこうなったんだからこれぐらいしないとね~」
その割には満喫していたような気もするけど。
薬局にてシャンプーやらリンス、化粧水に乳液に用途がよく分からない物まで多岐にわたる品々を明音のアドバイスを元に決めていく。
何のアドバイスだよって思ったら今の流行の商品とかおすすめメーカーの説明だった。
大差ないだろって言ったら2人に変な目で見られた。
スキンケア用品とかは何となくで選んでいた俺には縁遠いな。
それからその他必要な雑貨を買ったり、巡り巡って決めた服を買いに戻り真奈実の買い物は終了した。
そのおかげか、両手は買い物袋で完全に塞がっている。
誰の手かって? 俺のですよ勿論。
「意外と早く終わったわね」
「ね~。同じ型のファンデが見つかったから楽だったかも」
「でも良かったの? 仕方ないとは言ってもメイク用品一式買え揃えなくても」
「お金はまだ余裕あったからね~。それに持ち歩いていなかったんだもん」
そう、今回買ったのは生活に必要で、真奈実が持っていない物だ。
だから例えばアルンとかいう携帯の充電器は買っていないし、リップクリーム等は無くなり次第調達だ。
メイク用品は滅茶苦茶高かったが、無いと困るだろう。
というかメイク用品があそこまで高いとは思わなかった。
総額幾らだよまったく。
そしてその費用は真奈実が全て支払っている。
例の封筒に入っていた諭吉さんだ。
幾らか出そうかと言っても、『自分のためのものだから自分で支払う』といって聞かなかった。
良い教育を受けてるな。
未来の俺と明音グッジョブ。
こうして買い物は一段落して、ス○バ併設の本屋へとやってきた。
コーヒーを飲みながら買った本をその場で読めるということか。
「じゃあわたししばらくここにいるから2人はゆっくり見てきてね~。3時間ぐらい余裕だからさ。時間余りまくったら映画でも見てきたら?」
「じゃあ行くか明音」
「ええ」
荷物も預かって貰い、明音と2人でまた歩き始める。
ここからはれっきとしたデートの始まりだ。
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