命を賭するデスゲーム。その中でも本作は、死にたいと願う人間が集まり、自分の死の値段の多寡をプレゼンテーションをするという内容です。
ジャッジによって、自らの死に1万、10万、100万、1000万、1億と値段が付く。他のデスゲームと違う所は、死ぬことは確定しているところです。死ぬのはま違いない。だけどそこにいくらお金がもらえるのか。
作中のキャラクターたちはみな死にたがっている。本来ならば何も得られないはずの死。だけれど、そこに大金が支払われるというシチュエーションによって、「いびつな欲」と「生命の価値を問う」ことが、浮かび上がってきました。
またホラー作品らしく、恐ろしくもあり絶望も感じさせられる内容になっています。
こんな作品を私は今まで読んだことがありませんでした。
切り口、鮮烈さともに感服するばかりです。
ぜひ読んで、ともに心に傷を負いましょう(暗黒微笑)
SNSで昨今「国は安楽死を認めてください」というハッシュタグを用いた、言葉によるデモが行われている。
本来の安楽死というのは、不治の病かつ痛みが伴うといった苦しみを断つためのものだと思うが、そのデモには多くの自殺願望を持った若者が、今作の主人公の如く
「はよしにたひ」
的なノリで参加している。
今作を読んだ時、その「国は安楽死を認めてください」デモのグロテスクさを思い出した。
現代において、生きる意味を見失うことは簡単だ。
だからといって何も遺さないことは、死ぬことよりもさらにつらいことなのだと思う。
「エンゼルプレゼンテーション」に参加した面々も、金銭のみならず、生きた証を爪痕として遺したかったのだろう。
そう思わなければつらすぎる。
生き残ることではなく、死ぬことが勝ちの悲しすぎるデスゲーム。
心に傷を負った参加者たちの運命はーー
本作の作者は、わたしが最も推している作家の一人です。
今作も最終回を迎えるまで、ためにため、読むのを我慢していた物語でした。
裏切られる事はありません。
保証いたします。
そもそも、デスゲームとは、なんなのでしょうか。
生死をかけて求めるものとは、しかも他人と争う中にある頂点とはなんなのでしょうか。
それがもつ役割とはいったいなんなのでしょうか。
わたしはこれを、「生と死が常に隣接する事実」に直面するための、とてもやさしいシミューレーターと見ています。
生と死は不可分です。その境界に立ち、今辛うじて生者であるわたしたちは、こちらから彼岸を見つめています。
きっと、此岸に片足を突っ込んだまま、此岸にいるのです。
死の領域に対し拒絶をするもよし。
渡航をもとめるもよし。
渡る時の心の準備をするもよし。
様々です。
わたくしごとですが、わたしもかつて彼岸に渡りかけた一人です。
別段望みはしませんでしたが、死は平等にいつかは訪れる物であり、拒絶しきれるものではありません。結果的に生き延びて、いま生きたくて、生きています。
本作の主人公は「死」を望む側の一人でした。
彼の思いを否定する気はありません。
そして、彼が辿った道を知るも、知らぬままで通り過ぎるも、あなたの自由です。
ですが、一言だけ。
ありがとう。あなたがいてくれることで、わたしはこのレビューを書いた意味を得られました。
心から、たくさんの人に届いて欲しい物語です。
どうぞ、画面を開いてください。
生きている内に、読んでください。
デスゲーム、というと『死』を連想し、それに纏わる『登場人物』の姿を思い浮かべませんか?
この作品の凄いところは、まずそれをエンターテインメントとして表現しているところ。
『死』をテーマにしているのに、ドロドロしていないところ。
そして、ゲームに参加している登場人物が個性豊かであるところです。
何故、『エンゼルプレゼンテーション』という番組に参加したのか。
主人公の理由は誰もが抱く感情。
故に共感し、彼の視点だけで物語が進んでいくのにも関わらず、登場人物それぞれの背景、心情が伝わり、さらにその裏側までもが読者に響かせる。
あえて、彼らの視点を必要としない。
それだけでも十分だと思わせてくれる、作者様の力量に感服しました。
登場人物たちが抱く『死』の向き合い方も、数多いる読者の心に響くのではないでしょうか。
最後まで読んで、その『死』に対する概念を改めてほしい。そう思える作品でした。
序盤から追いかけて読んでいるデスゲーム。
毎話毎話、どうなるの?どうなるの?と思いながら読んでいますが、今日が一番「どうなるの!!!!」と思っています。
設定の素晴らしさもさることながら、もっとも評価したいのは作者の文章力。
ゾクゾク感、先行き不明感、謎に謎が重なってゆくミステリアスさ。しかしライトに読み進められるのは、作者の文章力があってこそ。
キャラクターも皆、際立っている。キャラクターの生き様そのものにテーマを置いていることもあり、登場人物の多さがまったく気にならない。それぞれの抱える背景がありありと描かれることで容易に感情移入でき、読者はメインキャラクター全員の人生を背負いながら読み進めていく。こんな小説には、なかなか出会えない。
そして、終盤になっても予測のつかぬ展開。一体この物語はどこに終着するのか。
あぁ、気になる。先が読みたい。
未読の方はぜひ!ぜひ!読んでほしい。
デスゲーム。それは殺し合い。けれど、このデスゲームはひと味違う。自分達で殺し合うのではないのだ。
これは、様々な理由で死を選んだ人たち『死の値段を問われる』物語なのである。
特筆すべきは、それぞれに死への理由がきちんとあり、それをエンターテイメントにされるところ。今起きている社会的な問題や世の中の風潮など様々な要素が取り入れられている。
正直に言おう。読むとズシッと来る。かなりくる。死にたいと思う理由がそれぞれにリアルなのだ。あぁ、きっとこういう人もいるだろうな。そう思える。
そして一番ずしっと来たのは、人間の仄暗さ。特にスタッフの人は恐ろしい。けれど、人間ってそういうところあるよね、と思ってしまうのだ。
連載中なので、この物語の結末を追っていきたい。書籍化、実写映画化をして欲しいです。おすすめです!
デスゲーム小説応募作品です。16話読了時点でのレビューになります。
『デスゲーム』そう問われた時に、誰もが想像するのは策略や騙し合いの中で行われる命のやりとり。
しかし、この小説に登場する人物に、それだけの生存本能を持つ者は誰一人としていません。
皆、自分が人生というゲームから脱落してしまった事を、自覚しているのです。
持田という冴えない男を主人公として物語は進んでいきます。
その冴えないっぷりがハンパじゃない。
ひとつもキラキラしてない。
むしろ「持田、お前……」がキャッチフレーズですらあります。
ゆっくりと進行する物語の中で「おや? 思ってたデスゲームと違うな」が判明して行きます。
テレビ番組という体を取りつつ、私はガチモンのリアリティーショーを見ている感覚に陥りました。この作品は、マスコミへの強烈な皮肉も込められています。
ここに来て、まさかの持田にヒーローを感じるとは思いませんでした。
そう、彼は正しく主人公なのです。
この言葉の意味は、是非、作品の中で確かめていただきたいと思います。