第94話 ジェットコースターの様な・・・
ミート・スライサーとフリーザーの各ユニットを在庫分まで先回りして作成し、後は鍛冶屋のおやっさんの方のパーツの上がり具合次第と言う状況になった。
豆腐店の方も問題無く運営出来て居るし、アランさんが張り切っているお陰で工場の方も順調そのものノープロブレムである。
そこで俺は暫く離れていたダンジョンアタックを再開する事にしたのだった。
余り戦闘から離過ぎると勘が鈍るし、美味しい物を食っちゃ寝してたら、幾ら高性能な専用ボディーでもとんでもないビア樽体型にならんとも限らんし。
折角前世とは違ってシュッとした身体なんだから、キープしないとね。
前回Uターンした絶叫物の階段出口にゲートで移動して、この悪意しか感じな断崖絶壁の数十cmの足場をどう移動しようかと思案したが、ちょっと試したい事があって、自分の足下に無属性のフィールド(見えない床)を作ってみて出口から一歩崖の方へと踏み出してみた。
まあこの1歩はかなり腰から背中い掛けて背骨の中の神経がズーーンってなって、思わず生えて無い尻尾はキュッと丸まって股の間に収まる様な感覚だった。
滑空ではあるが、空を飛べるし、最悪ゲートが使えるものの、この透明でスケスケなな床を歩く感覚はかなり怖い。
賭けではあったが、無属性のフィールドはきちんとその役目を果たし、俺を支えてくれている。これは、意外に使えそうだ!
俺は数十cmの足場を物ともせず、無属性のフィールドで1m程に拡張し、鼻歌交じりに歩いて行く。
単に足を滑らせて滑落擦るだけのフィールドと思いきや、ちゃんと魔物が居たよ。山羊の魔物が。立派な鋭い角を持つ白や黒の山羊がメェ~♪と言う暢気な鳴き声の中に殺意を込めて集団で崖の上かた降って来る様に崖を駆け下り角で突き刺そうとして来る。
名前はスローティング・ゴートと言うらしい。角で突き刺すからか?
『女神の英知』曰く、肉はそこそこ美味いとの事だけど、山羊を食うのか?と前世で食べ物と言う認識が無かっただけにちょっと驚いたが、山羊のミルクを飲んだりチーズ作ったりするのも似た様な物かと、某国民的なアルプスの少女のアニメを思い浮かべつつ魔弾でサクサクと文字通り降って湧いたスローティング・ゴート13匹を仕留め血抜きをして収納したのだった。
崖に沿って時折襲って来るロックドロップ・ラットの投石を避けつつ狙撃して「モグラ叩きかよ!?」とツッコミながら戯れ崖の道を1時間程歩くと先の階段の出口とは別の穴?入口?を崖に見つけた。
そこで数十cmの足場が途切れて居たので、どうやらこの穴に入るのが正しいルートらしい。
穴の中は薄暗く、ライトを放って明るくすると、この横穴はやや下り坂になっている事が判明した。
特に異変も罠も無く割と緩い下り坂を下って行く。30分程下った所で急激に気温が下がって来て居る様で吐く息が白くなるのに気付いた。
魔装は常に纏って居るが、一応念の為温度調節の風のシールドを展開し快適温度に周囲の気温を調節した。
更に暫く進むとかなり気温が下がった様で洞窟の天井の彼方此方に氷柱が垂れ下がリ床も所々凍って居る様で油断ならない様相となって来た。
それに先程から時折天井の氷柱が自然と折れて落ちてくるのだ。そう言うゾーンなのか?
まあ幸い、仮に当たっても俺の風シールドと魔装のお陰でチクりともしないのだけど、余り気持ちの良い物じゃない。
そして更に慎重に先へ下って行くと、ゴゴゴゴと言う軽い地響きがして、俺の後方から背中を押す様に風が吹いてきた。
ただ事では無い雰囲気に纏っている魔装とシールドを強化し、足下に無属性のフィールドを展開して滑らない様にと身構えたが、その数秒後には俺の後方から流れてきた濁流に思いっきり飲み込まれてしまって流れて来た岩や氷柱、それに周囲の岩肌に当たったり、削られない様に必死で纏った魔装とシールドをキープする。
直接被害は出てないが、濁流に流され相当なスピードで岩壁にぶつかったり、直径1m程の岩が魔装で砕けたりと言う非常員スリリングな光景と衝撃を目の当たりにしながら
流されて行った。
どれくらい経っただろうか? 幸い水中でも風魔法のシールドのお陰で呼吸の心肺は無く5分なのか10分なのかは不明だが、漸く流されるスピードが遅くなってきて、先の方に明るい光が見えて来た。
どうやら出口の様だ。
実際な話、先達は第40階層で引き返したのは正解だったと思う。
彼らが魔法を使えたかは知らないが、ボスを攻略したとしても、あの恐怖の足場を制してこの穴に入ったが最後溺れ死んでいたかも知れない。
本当に恐ろしい仕掛けと言うか罠なのだろうか? 多分俺じゃ無いと死んでるよね? そんじょそこらのジェットコースターよりヤバイ致死率マシマシのアトラクションである。
と頭のなかでボヤいて居ると、一際先の光りが明るくなったと思ったら、プイッと口を窄めてスイカの種を吐き出す様に穴から吐き出された。
周囲の水と一緒に落下して行く。
来た方向を見上げると、やはり崖の壁面に俺達が吐き出された噴出口らしき黒っぽい穴がチラリとみえた。
さあ、どうする?
絶賛落下中なんだけど、滝の様に水の中に居るのでご自慢のウイング・スーツによる滑空どころではない。
俺はこの周囲の水から脱出すべく、水魔法でジェット水流の様な物を放出し、この共に落下する水の集団から、離脱した!ブワッと下方からの空気に押し上げられるのを感じつつ、ウイング・スーツを展開し、ガクンと落下スピードが落ちて、風に乗って滑空を始めた。改めて開けた視界で周囲を確認すると、遙か下に森林が広がっていて、その森林の中を川が流れており、その下流に階段の入口の様な建造物を発見したのであった。
取り敢えず、あの建造物まで移動しようと滑空する方向をそちらに向けるのであった。
■■■
滑空しながら辺りを観察していたが、俺の下を流れている川は、別に俺をペッと吐き出した水が源流と言う訳では無く、他に水源がある様であの濁流は四六時中流れ込んで居る訳じゃなかったらしい。
しかし、本当に恐ろしい罠だった。死んでいてもおかしくは無い。もし魔法が使えなかったら空中に吐き出される前にお陀仏だったな。
流石に先日の今日なので、こんなヤバイ目にあったなんて土産話に出来ないな・・・。
心配を掛けるだけだからな。
結構距離があった様で長い滑空時間の後、漸く建造物へとたどり着き、地面へと着地した。
建造物の横には大木が周りを取り囲む様に生えており、鬱蒼としている。
あれ? おかしい!! これ、普通の大木じゃない!! 魔物だ!
普通に大木っぽい見てくれだが、トレントって言う木の姿した魔物だ。
奴ら、俺が建造物に近付こうとすると、ギギギって言う感じに根っこの足を地面から引き抜いて動き出して木の枝を鞭の様に撓らせビュンパチン♪と唸りを立てて俺に攻撃を仕掛けて来た。
それをバックステップやサイドステップで躱して居ると、他のトレントが「俺の槍を受けてみよ!」とばかりに根っこを使った槍を地面から生やして俺の足下から伸ばして来る。それを避けようとしていると、鞭による攻撃がスパンと横を掠めてくる。
素材の事を考えないのであれば、火魔法で燃やすのが一番楽なんだが、折角の高級素材が勿体無いので、火を使わずに奴らの体内の魔石か体力を削る方向で行こうと思っているのだが、6匹のトレントを相手に悠長な事もいってられず、
一番素材に傷が付かないだろ、ライトニング・アローを1匹につき3本用意して一斉に発射した。
やはり雷魔法の攻撃は有効だったようでギュオーー♪と言う悲鳴を上げながらジタバタと癇癪を起こして居る様な攻撃をして来たが、今更そんな稚拙な攻撃が当たる訳もなく、再度ライトニング・アローを用意して動かなくなるまでネチっこく何度も連発で浴びせてやったのだった。
幸いにして燃える事は無かったが、完全に生命活動を止めて横たわった頃には、プスプスと白い湯気が木の表面から立ち上っていたのであった。
初っ端から、かなりの大物を頂きご満悦である。
どうやらこの階層はトレントがメインの階層の様だ。
トレント素材は実に良い素材で、高額で取引されるだけでなく、色々な魔道具用の素材に流用される。
食えはしないけど魔道具を作る俺としたら、非常に有意義な魔物である。
第41階層にはトレント素材を求めに度々来る事になりそうである。
いやぁ~、疲れた疲れた・・・。
さて、肝心の建造物だが、石で作られた神社の様な建物で、階段で上げると通路があって、その先に第42階層への階段があったのであった。
時計を見ると、既に午後4時を過ぎて居たので、少々ハードな1日だった事もあり約束通りに切り上げて帰宅するのであった。
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