第93話 豆腐&シラタキ工場を作ろう

身内内でのしゃぶしゃぶの評価が思った以上に高かった事に勢い付いた俺は、単独では弱い可能性のある豆腐とシラタキの量産に入る為の準備をヒッソリと始める事にした。


シラタキを作ると言う事は、おでんに欠かせないコンニャクも作ると言う事だ。

そうだな!おでんと言う線もあったな!!


俺とした事が、スッカリ重要なおでんの存在を忘れてしまっていたとは・・・冬の寒さとコンビニ無いのが原因だな。


厚揚げも美味いんだよなぁ~。


俺はコンビニでおでんを買う際は、大体、巾着、大根、コンニャク、そして厚揚げが何時もの定番だった。


もう、ソイもあるし、みりんもある。そして料理酒もあるから、おでんもバッチリ作れるのだ。


冬までにおでん用の仕切りのある鍋も作らないとな。


おっと、横道に逸れたが、おでんじゃなくて豆腐とシラタキの製造工場だよな。


実際の所、他でも磨り潰す工程が必要な物が多いので、既に石臼の代わりになる魔道具は作ってあるし、それだけでは無く自作用で必要な小物も含めた機材はほぼある程度の数を取り揃えているので、上物を建ててしまえば、内部に関してはほぼ出来た様な物なのだ。

シラタキやコンニャクに関しても然り。流石俺と言ったところだろ?


まあ、工場の規模によっては補充しないと駄目だけど、当面逸れ程売れるとは思えないので、スタートはボチボチで良いだろう。


シラタキとかは、『肉じゃが』をアンテナショップの新メニューに加えて、豆腐は冷や奴と麻婆豆腐かな? いや、いきなり麻婆豆腐は刺激強過ぎるかな?


結構ヒーハーって来るもんね。辛いのに慣れてないとキツイかな?

折角特注で作った中華鍋、殆ど活躍してないし、おろそろ出番作ってやらないとな。


まあ、そんな訳で、アリーシアさんと件の工場を建てる土地をマッシモの街の中に求めに商人ギルドに赴いたのだが、

普通の庶民街では無いので論外ではあるが、面白い土地が売りに出ていた。


俺にとってはいわく付き土地である。例に何チャラ子爵の廃墟の土地である。


事件の結末と内容が内容だけに、演技悪過ぎるみたいで、見栄大好きな貴族連中は幾ら広くて安いと言っても手を出さないそうな。


確かに縁起が悪いよね。


「トージ様この土地広いですね。あの物件ですけど・・」と言葉を濁すアリーシアさん。


「だな。訳あり物件と言うか、事故物件だよな。そもそも貴族街に土地買っても従業員募集し難いじゃん。しかもあそこって、貴族街の割と真ん中辺りじゃなかった?」と俺が指摘すると「そうですね。」と納得していた。


そもそもだが、今のマッシモは超人気の街なので、ある意味王都並に余ってる纏まった土地が無いのだ。まあ90%ぐらいは俺の所為だけどね。


何故例のソイの醸造所のエリアで作らないのか?って思うかも知れないが、大した距離では無いけど、マッシモの街から距離あるんだよね。


何か豆腐屋って言うと街角にあるのが当然って思うのは基日本人の俺の余計なこだわりだろうか?


まあそうだな・・・マジックバッグも普及したし、マッシモ内で作る必要無いか・・・。


と俺も考え方を変えて、豆腐&シラタキを店頭販売する店舗を求める事に方針変更したのであった。


欲を出さなければ、そこそこの店舗は手に入る。今回は、売る物が限定しているし、狭い店舗で十分なのだ。


結局醸造所のエリアに新しく豆腐&シラタキの製造工場を建てる事にして、新店舗の購入だけを済ませてこの日は帰宅したのであった。


しかし、不思議なのはあの2人信者達が今日も静かだった事である。


逆に静か過ぎて不安になってしまうが、お陰でやるべき事がスムーズに運んだので良しとしよう。



■■■


豆腐&シラタキの製造工場の建設完了まで約1~2ヶ月ぐらいとの事だったが、ボーッと待ってるのも厭なので、醸造所のエリアの空き倉庫を暫定で使って豆腐&シラタキの製造訓練を兼ねて作業員達に教える事にした。


コンニャクや豆腐の味を知らないで作るよりも、美味しさや歯ごたえなどを体感して貰った方が気合いが入るだろうと、最初に試食会をやったのだが、これが非常に良かった様で作業員の士気が上がったみたい。


製造が本格的に始まると、毎日大量の雪花菜おからが出るので、持ち帰って良いよと言って、炊いた雪花菜を味見して貰ったけど、微妙な表情だった・・・。


俺、結構雪花菜好きなんだけどなぁ~。 確かにそれ自体に素晴らしく美味しい味わいや旨味がある訳じゃないけど、身体に良いって話だったと思うのだけど。



全部廃棄や、家畜の餌とかじゃ勿体無いし、雪花菜でクッキーでも作って売るか!?



豆腐部門で作るのは、木綿豆腐、絹豆腐、厚揚げ、焼き豆腐、そして忘れちゃいけない油揚げ。こんな所かな。


出来上がった油揚げをお湯で洗って油を落としてソイとみりんと料理酒と塩と砂糖で甘辛く煮て、きつねうどんを作ってやると、「上げた豆腐がこんなに美味しい料理になるなんて!」とみんな驚いてくれた。


どうやら、きつねうどんもこの世界に受け入れられそうである。

今度、暇を見て、いなり寿司作ろう!!


やっぱ、生産工場作って正解だな!


そして、シラタキ部門では、コンニャクとシラタキを生産する。

シラタキを入れた肉じゃがで、その面白い食感に最初こそ戸惑っていた様だが、意外に好感触であった。

コンニャク料理は、肉と一緒に甘辛く煮込んだ簡単な煮物を作ってやった。


まあ、本当はおでんを作れば一番良いアピールポイントになるんだろうけど、下準備してなかったのでそれは次回の宿題と言う事で。


1週間程の訓練で全員ちゃんと手順通りに製造出来るまでになって、後はこの工場の責任者となったアランさんに一任しておいた。


アランさんは、手首から先を失っていて、俺が欠損部位を初めて回復魔法で治療して以来、俺に対し、恩義?(崇拝に近い何か)を感じていて何かと真面目に良く働いてくれている。


勿論、それに胡座を掻いて低賃金でこき使う様な阿漕な事はしてないのでご安心を!


どっちにしても、この工場の作業員の殆どは俺が王都の『廃棄街』から連れて来た移住者達なので、アランさん以外の連中もそもそも俺に対する忠義が厚い。


そんな彼らの気持ちを裏切らない様に気を付けていきたい。


さて、倉庫を使った仮設工場で、製造を始め2週間程が経過すると、そこそこの在庫がマジックバッグに溜まって来たので、豆腐屋の店舗をオープンさせる準備に入ったのだった。


で、重要なこの店舗の売り子や責任者だが、責任者をソリアさんとして、売り子には、クリス君達の先輩卒園者のケイトさん、サニーさん、ジョリーンさんの3名を紹介されて、お願いする事となった。


ああ、ソフィアちゃんは子供らと比較的に年齢近い事と良い頃合いと言う事で、アンテナショップの責任者と言う立場になって貰ったのだ。

姉妹をバラバラにするのは申し訳無い気もしたが、親離れでは無いけど、少し独自の判断で責任ある仕事になった方が成長するんじゃないかって思ったんだよね。


やっぱり、お姉ちゃんと一緒だと、自分で考えるより、どうしてもソリアさんの指示を仰ぐ事が多くなるし。

家に帰れば一緒の家だから大丈夫だよね?と。



で、この3名、何か卒園後良い働き口が見つからなかった様で、しょうが無く冒険者を3人でやっていたのだが、当然戦闘力はほぼ無いに等しい為に討伐系の依頼は受けられず、


薬草採取等の所謂儲けの薄い依頼しか熟せずに日々の暮らしで非常に苦労していた様だった。


最初に会った時、かなり窶れてしまっていて、体調の心配した程であった。


そんな状態だったので、最初から、採用前提で話し面接をしたのだった。


「他に孤児院の卒園者で、働き口に困ってる人居たら、一応面接して人物は判断するけど、別に孤児院出身だからって事でマイナス評価はしないから、

真面目にやる気のある人なら連れて来てね。」と言っておいたのだった。


早速、新しい従業員用の宿舎が大活躍である。


アリーシアさんが、「こんな事もあろうかと、部屋数多めに作っておいて大正解でしたね!」と自慢気に俺に微笑みかけていた。


「しかし、ここも、拡張したとは言っても、これ以上は厳しいですからね。

この先の事を考えると、あの何チャラ子爵の跡地、勿体無いですね! あのサイズあれば、この新しい宿舎何棟も建てられるのに・・・。」とまだ諦めて居なかったらしい、アリーシアさんが、ボヤいて居た。


「確かに無駄に広い敷地なんだけど、貴族街の真ん中だからなぁ~。厭なトラブルの予感しかしないし。そんな貴族街を俺らの様な一般庶民が普通に歩いてて変なの貴族共にみんなが絡まれると厭なんだけど? 」と俺が、ありそうな未来のトラブルを予測して言うと、

「うーーん、やっぱりそういう事起きますかね?」とアリーシアさんが、聞いてきた。


「いや、ほら、例の国王陛下から頂いたメダルさ、全貴族に通達済みって触れ込みでアレ子供達誘拐人質事件だったんだぜ?あれで大きな声で言うと国家反逆罪や侮辱罪?だかで処罰受けそうだけどさ、この国や王家に対する信頼感は皆無になったからなぁ~。」と俺が苦い顔で説明したのであった。

「そう言えば、あの一件以来、若干警戒してたんだけど、何もこっちサイドに(王家や国から)接触無いし、もう大丈夫って事かな?」とふと思い出して呟いたのであった。




さて、肉じゃがのレシピやいなり寿司のレシピ、それに厚揚げステーキ等簡単な物から、豆腐と肉を使った簡単な煮物等何種類かを商人ギルドに登録し、同時にアンテナショップでも新規メニューって事で出して貰ったのだった。


その戦略は大正解だった様で、瞬く間に豆腐もシラタキもマッシモの街の人々に認知され、冷や奴等はレシピ関係無い程に簡単なので、色々な飲食店で出される様になった。


これで、俺も好きなだけ、好きな時に自分で作らなくとも豆腐おシラタキもコンニャクも使える様になったな!!とほくそ笑むのであった。


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