第58話 マッシモの街の変化
それからラルゴさんと俺は激しく活動した。
マッシモの街から程良く離れた場所(匂いがマッシモの街に影響しない位置)を選んでそこに醸造所街を作る事にした。
尚、将来の事も考えてかなり余裕を持ったサイズにしてある。
形をどうするか悩んだが、結局他の都市やマッシモと同じ円形の形状とした。
醸造所の建物も将来的に増やすだろうけど、それ以外に日本酒や米酢、みりん、ウスターソース、ケチャップ、片栗粉等作る物は多いのだ。
それに従業員用の宿舎等も完備する予定なので、マッシモの街に比べたら多少小ぶりだが、村と言うよりも大きく、そこそこの規模である。
しかも、大事に醸造所を守る為に俺が気合いを入れて作った城壁は、お世辞抜きでマッシモの城壁より立派で丈夫である。
地面に杭を打って、道路部分や従業員の宿舎や食堂等のエリア等を決めて行き、一通りの杭にロープを結んで実際に目に見える状態に形にした。
まあここで、俺の魔法だけでパパッと建物が作れれば話が早いのだけどそこまで俺は万能ではない。出来るのは城壁を作ったり、道えお作ったり、特定の家の壁や柱を作ったり擦る程度。
家の場合、石壁って、底冷えしそうだし、住み心地は疑問が残る。俺の小屋がログハウス風なのはそう言う理由もあっての事だったのだが、全く冬の厳しさを感じる事すらなかったのでどうした物か?
そうなのだ。 俺が『魔の森』に2年住んで居た間、当初相当にビビっていた冬らしい冬は全く来なくて、半裸に近いボロボロの服で生きて来られたのだ。
以前、アリーシアさんに聞いてみたのだが、俺の住んでいた『魔の森』以外は季節によってそこそこに気温の変化はあるらしい。
ただ全般的にここローデル王国は温暖な気候で、年中過ごし易いらしい。
だから元日本人のおれからすると、大した事が無い程度の事なのかも知れない。
ちなみに、この世界に来てから、雪を見た事はないので、恐らく降らない国なんだと思う。
下手に極寒の地に転生?降臨?しなくて、本当に良かったよ。
ラルゴさんが近隣の街や都市にも手を回して大工や職人達を集めて居るので、彼らが来るまでに俺は只管魔力を込めたストーンウォールで城壁を築いて行く。
何も無い荒野を開拓して作った場所なので、せめて安心して暮らして行ける環境にしなければならない。
ちなみに、この場所を選んだ理由は、湧き水。俺が魔力波を使ったスキャンで、地下水脈探しをして居て、何か変な土や岩とかの地盤と違う反応を見つけ、地下に向かって終直に掘った結果15mぐらいで綺麗な水が湧き出て来たのだ。
今思えば、この世界に来た当時にこの能力が欲しかった・・・。
まあそんな感じで水場が出来た事で、ここが中心となって、この醸造所タウンの設計を行ったのである。
外壁が一応形になった後は、出張して来てくれた職人や大工達の簡易宿舎をチャチャっと壁と屋根だけ10棟ほど作った。あと、大浴場は別独立した建物に作って銭湯風にした。
あと、彼方此方にされちゃうと困るので、公衆便所を一定間隔に設置し、『立ちション禁止』を厳命する事になっている。
あと生活排水等の下水を頑張って作ってみた。
敷地内の地下に下水の地下トンネルを掘って最終敵には地下から城壁の下を潜って敷地外へと流れ出る様に勾配を考慮してある。
本来なら浄化システムとか必要なんだろうけど、そこら辺はプロに任せる予定である。
なんなら、『魔の森』からスライムを捕まえて来る事も可能である。
多分従来の魔動具的な物より「ランニングコスト安いと思うんだけどな。
まあ、そこら辺は要ご相談かな?
◇◇◇◇
2週間が過ぎる頃には続々と職人や大工が集まって来た。
俺の作った簡易宿舎に手を入れて生活出来る様に改造し始めている。
後は俺はお手伝い程度で、醸造所の建物の建築時にエルフの里からの監督役と繋ぐ役目ぐらいだ。
さて、醸造所の建築とは別で、綺麗に平らな海苔を作る為の其処が竹製の巻き簀になっている四角い箱沢山発注してあったのだが、最初の50個が完成したとの事で、受け取り更に継続して製作して貰っているのである。
姉妹とアリーシアさんを従えて、ゴザレオの自宅へと久々に移動した。
俺達は、姉妹が元居た『廃棄街』の顔役のラダムさんに面会し、箱と岩海苔を見せて説明した。
彼らが『廃棄街』で燻って居る原因は仕事である。仕事があって、収入さえあれば、マシな生活だって出来るのだ。
と言う事で、ラダムさんに俺が出資して、海苔の製造業をやって貰う事にしたのだ。本来なら、何余所者が勝手に!!と怒られそうな物だが、前回の煮干しの一件があるので、ゴザレオでの俺の信用度と影響力は大きい様で問題にはならなかった。
商人ギルドにラダムさん達を登録させて、『オオサワ商会』からの正式な依頼と言う扱いにしたのだった。
やって良かったのかは知らないが、本拠地のマッシモから遠く離れたここゴザレオなら、醸造所の宿舎を建てて培った物を出し惜しむ必要が無いだろうと思い彼らの為の宿舎を勝手に作らせてもらった。
更にここでも銭湯を作って、余り動けない老人達に運営させる事にしたのであった。
当面は出来上がった海苔を毎月受け取る感じになるが、こうなると、早めにマジックバッグを完成させないといけないと気ばかり焦ってしまう。
何か彼方此方に手を出し過ぎたかもしれないな・・・。
でも、ちゃんと師匠から頂いた本は殆ど読破して、そろそろ師匠の教えを請える下地は出来たと思う。
本を読めば読む程、魔動具作りは俺向きの技術であった。
魔方陣を刻んでインクを流し込むのだが、その緻密な作業に無属性魔法のリューターが使える俺には非常に簡単に刻印が出来るのである。
魔方陣に刻む文字は基本的にルーン文字と言われる特殊な文字を用いているが、このルーン文字は面白く、1字で特殊な意味を持つ文字であった、そう漢字の様に・・・。
そもそも、細かいエリアに刻む為に簡素化する為に開発された文字と言う事であった。
で、俺の望む効果のマジックバッグを作るには『女神の英知』の情報によると、使う素材と刻印のインクが重要との記載があったのだ。
バッグ本体の素材にはシャドー・スネークかビック・イーターの胃袋を使うらしい。
シャドー・スネークは何となく想像出来るがビック・イーターは全く判らん。だから、何時でも製作に取りかかれる様にシャドー・スネークとビック・イーターの情報収集は心がける様にしているのである。
あとね、『女神の英知』の情報によると、別に魔方陣に掻き込むのはルーン文字限定では無いらしい。ちゃんと意味のある文字なら魔方陣が成立すると言う風に書いてあったのだ。
もう察しの良い人なら判るだろうけど、ダンジョンのドロップアイテムであるマジックバッグはルーン文字は使われて無いらしい。神言語と呼ばれる神界の文字らしいよ。
ちなみに、刻む際に魔力を込めて魔方陣刻む訳だけど、ちゃんと一文字一文字意味と効果をりかいしつつ刻む必要があるらしいので、単に図柄だけを真似れば良い物ではないのだそうだ。
まあ、その『女神の英知』にはマジックバッグに刻む魔方陣の記載がちゃんとあって、その神言語も単体を調べると意味がヒットするので、素材とインクさえ手に出来れば多分出来る筈なのである。
イキナリ高価な素材でマジックバッグ作りは無茶過ぎるが、徐々に慣れて来たら作りたい物も多いので、色々と夢が広がるのである。
換気扇と貯蔵庫は是非とも早めに作りたい。
え?貯蔵庫もマジックバッグも同じ物になるんじゃないか?って? うーーん、それは確かに否定し辛い所ではある。
貯蔵庫はもっと他の物(素材)で冷蔵庫やロッカー的な形で作りたい所なんだけどな・・・。
醸造所タウンの方だが日々俺の出番が減っているので、そろそろメリンダ師匠の元へ通っても大丈夫そうな感じだ。
いやぁ~、ここまで来るのに長かった事・・・。
まあ、これも、半分以上王家の責任だよな・・・。 おっと忘れかけてた怒りが・・・。
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