第57話 祝賀会

「まさかこうもアッサリ纏まるとは思いませんでした。」と喜びながら内心ヒヤヒヤしていた事を吐露するラルゴさん。


場馴れしてそうだから、もっと地震満々かと思っていたのに意外に弱気な発言。



「だって、エルフ達にはお金は入るけど、秘密の製造法を公開する程のメリットを示せないと心は動かないでしょ? これが上手くいったのはトージ様の料理の力があってこそかと。」と謙遜しつつ俺の料理を持ち上げるラルゴさん。


まあ、確かに俺の出すソイやソイペーストを使った料理の数々を食った後のエルダさんも、リーフさんも頑固そうなトリオンさんでさえ反応がヤバかった。


まあ、長寿だけに色々な料理をもさくしたんだろうけど、



マッシモに戻った俺達は一応祝杯を挙げる事となり・・・結局何時もの流れで俺が料理担当する感じになってしまったので、家でお留守番していた姉妹を助っ人に呼ぼうと思ったのだが呼ぶぶのも面倒と言うか、どうせ料理するなら慣れた場所って事で、俺の家で祝賀会を行う事にしたのであった。


これまでに作って無い新しいメニューって考えて、上手く行った勝利を祝う意味で『(オーク)カツ丼』をチョイスしてみた。

そう、やっとみりん擬きもあるから、暫定ではあるけどそれっぽい味を作り出せる様になったんだよね。

それに、先日やっと、あのカツ丼や親子丼を作る時の薄い柄杓の様な鍋?フライパンじゃないから鍋だよな・・・を特注したんだよ。


鍛冶屋のオッサンに言葉で説明してもなかなか形状を理解して貰えず、其処が最大の難点だったんだよね。

蓋もセットで作って貰ったけど、鉄製でかなり重いのが難点だ。

一応、今後の展開も考えて、10セット作ったけどさ、出来ればもっと軽い金属で作りたかったよ・・・。




え? 普通、カツは勝負前日に食う物だって? 良いんだよ!カツ丼鍋出来てから、何だかんだで忙しくてまだ使ってなかったから、この機会に!と。


一応、新品のカツ丼鍋?はシーズニングは済んで居て何時でも使用出来る状態にしてあるが、久々に作る上、慣れない重たいカツ丼鍋でつくるので、緊張してしまう。


普段味噌汁や煮物で使うので、大量に出汁のストックは取って置いてある。


それにみりん擬きや酒を入れて、醤油と塩と砂糖で割り下のあじを調える。


玉葱をスライスし、お椀に卵を割って、


以前に作って置いてあった、オークカツを取り出し、一口サイズの2cmサイズで横に切って8等分にした。


玉葱のスライスに割り下を加え、中火ぐらいで煮込み火の通った頃合いでそこへオークカツをスッと投入し更に火を通し


解いた卵一個分をお椀から鍋へ綺麗に掛けて蓋を置いて、火を通す。

火を入れすぎると卵が固まってしまうので直ぐに火から降ろし、

蓋を取って、ご飯をよそったドンブリの上に菜箸と振動でフワリと着地させる、一応、刻んだ小ネギを振り掛けてドンブリに蓋をして、1人分が終了だ。


これを人数分繰り返し、作り置きのオーク汁と一緒に出したら完成である。

お盆の上にセットし、テーブルに運んで俺達4人はお箸で、お箸を使えないラルゴさんは全員が普通にお箸を使うのを見てあれ私だけ?って感じの戸惑いの表情を見せて居たがスプーンを手にして頂きますをした。


ドンブリの蓋を取ると、狙い通り卵は半熟で、良い感じの火の通り具合である。


俺は久々のカツ丼に感動しつつ、やっとここまで漕ぎ着けたと言う喜びをオークカツと共に噛み締めたのであった。


「美味しいです!」とソフィアちゃんが素早く反応し、全員が嬉しそうに食べて居る。中でもラルゴさんにはドストライクだった様で、オークカツ丼のお替わりを要求された。


「トージ様、食堂しませんか? これで天下取れますよ!」とラルゴさんが熱く語っていたが、俺はヤル気がない。


だって、これじゃあ、採算取れないし。ドンブリ1杯を幾らにしたら良いのかさえ検討も着かないし、そんなバタバタとした戦場の様な状態で追われる様に料理はしたくない。


と言う事で丁寧に辞退させて頂いた。


「ラルゴさん、この1杯に幾らのお金出します?とてもじゃないけど、採算ベースにするのは難しいと思いますよ。オークカツ揚げるのに大量の油使って居るし、一度使った油は参加するのである程度で廃棄ですから、それだけでもヤバイと思いますよ。

俺とかラルゴさんの家で個人的に食べる程度ならたまの贅沢で済むかと思うけど、店にしちゃうと難しいかな・・・。」と説明して納得して貰うのであった。


嬉しい筈の祝賀会だが、店にして毎日でも好きなだけ食べられない理由も理解して意気消沈のラルゴさんであった。


そもそも、俺のいまの料理はオークカツにしても、炊きたてのご飯にしても、俺の『時空間庫』有りきなら、作り置きのストックもあるし、無駄が少ないが、他はそうはいかない。


一応マジックバッグと同様に作る予定ではあるが時間経過の無い『保管庫』的な魔動具を作らないとダメだろう。



俺は、ストック分のオークカツ丼セットを作り置きでストックして置く事にしたのであった。


重さを気にしていたカツ丼鍋だが、蓋を乗せた時が一番重く、慎重を要する事が判明した。出来れば素材を軽量なミスリル的な物で作りたいが、それは流石に・・・ね?


この世界にアルミが存在すれば良いのだけど、残念ながらそんな物は存在し無いし、例え、原料がこの世界にあったとしても、おれには生成方法?が判らない。


確か、記憶ではボーキサイトが原料で電気を使ってアルミ合金?を作るって感じだった様な・・・。兎に角門外漢な事には間違い無い。


今回の一件で何気に100均で売ってたカツ丼鍋の偉大さを思い知ったのであった。



序でに100均もこちらに転移して欲しい物だ。



風呂から上がって、

真剣にオークカツ丼1杯の金額を算出してみたのだけど、ザックリとした単価で、金貨1枚くらいは余裕で掛かってそうな感じであった。


これに利益を乗っけると、倍の金貨2枚?とてもじゃないけど売れないな・・・。


一般にちょっと贅沢な食事程度で売り出すなら、高くて1万ギリー(銀貨1枚)が良い所だろう。


この先、魔動具の発展次第では、無理じゃないかも知れない。頑張ってメリンダ師匠の所で勉強しなければな。



翌日、マッシモの神殿でカツ丼を捧げ女神マルーシャ様を餌付けしておいた。



え?直ぐに交渉しないのか?って いやいや、もっと餌付けしてからだよ。ちゃんと『日本の食の英知』の重要性を味わって貰ってからじゃないと・・・。

性格が悪い? だってねぇ~。先日の雰囲気ではそうでもしないと何か難しそうな気配が漂ってたし。

もっと俺の作る日本の食べ物に興味持って貰わないとね!!


お好み焼きとかも作りたいし。それにはソースが必要だからね!

豚玉じゃなくて、オーク玉になるのかな?

早くソースの製造方法を!!

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