第2話 始まり

30分くらい歩いただろうか。もう少しで合流地点に到達するだろう。罠や伏兵は確認できずあまりにも空っぽの空虚な森だった敵国の境界線近い場所なのでそれなりの警備だと思ってはいたがそうではなかったらしい。そう思っていると、前方に開けた場所が見えてきた。ゆっくりと木に近寄り、その広場を見渡す。人らしき物陰はなく本当に合流地点なのか不思議に思うほどだった。

「ユイ、合流地点と思わしき場所が見えたが、味方らしき人影も物資らしきものもな無い」

ありのままの状況を報告すると、データベースらしきものから照合し詳細な情報をこちらにくれた

「そうですね。合流地点は合っていますが、思いのほか部隊が全体的に散らばっている模様です。それぞれ近い場所で小隊を組んで動いているみたいです。私たちは風下で少し流されてしまったみたいなので、先行隊として先に集まったものだけで進行しているようです。残りの者は第二部隊として集結した後に行軍せよとの事です。時間的におよそ30分ほどかかりそうですね。」

「30分待つのか... 確か持って降りてバックパックに偵察用の備品もあったよな。手薄な警備のうちに移動して拠点を踏むというのもありだな。」「そうですね、時間もありそうですし隠密で偵察しつつ拠点を設営するのも良いでしょう。」

何となくプランが決まり、目視で仲間を確認しつつ、移動の準備をする。森の中自体に敵は居なかったので、このまま任務を遂行することは可能だろうが、いざ戦闘に突入してしまった場合は援護は期待できないため、最悪の覚悟をしなくてはいけないだろう。

「そうか、わかった。そしたら観測できそうな場所と管制基地の座標を送ってくれ」


「了解しました。座標は配布したデバイスに送っておきました。ロケーションの方は上空から見た感じだと、この先にある丘から偵察出来そうです」


「了解した」

ひとまずはデバイスで座標を確認し、丘の上へと向かう。おそらくほかの部隊は斥候隊として地形の確認と偵察で先に進んでいるのだろう。単独な以上むやみやたらに進む訳にも行かない。それを分かってか、ユイも部隊へ合流するような事は促さなかった。丘に到着し、双眼鏡で敵の基地とこちらの斥候隊を探す。

「斥候隊はだいぶ基地に近づいたのか」

仲間の小隊は基地の目と鼻の先まで迫っていた。しかしほかの部隊が見つからない。双眼鏡で外壁を拡大すると、大きめの機銃と監視塔に近い櫓が佇んでいる。機銃には敵の監視兵がちらほらと見えている。

「こっちからは外壁の上に敵兵が数名見えるが、斥候の部隊はこれに気づいているのか」

丘の上から見えている状況を味方に共有するためにユイにできる限りの情報を呼びかける。

「念の為こちらからも呼びかけてみます...

斥候隊の方へは共有しておきました。迂回して動くとのことなので、私たちは引き続き監視体勢を取りましょう。」

「そうだな。念の為草か何かでカモフラージュだけして、ここに簡易で駐屯することにしよう」

 味方の斥候の行動を追いつつ、敵国の監視をする。その後、20分ほど経過したのちに、味方による櫓の制圧と占領を確認した。集まり始めていた第二陣も準備を整え、予定より早く行軍を開始しようとしていた。第一陣は櫓に数名を残して、奥の基地へとまた隠密に行軍を開始していた。我々もそろそろ前線へと赴こう。そう思い設営した拠点の物を片付づけ始めた。第二陣の舞台が櫓に着く頃にはバックパックに備品を収納しきり、また元の装備の状態へと戻っていた。

「さて、こちらもそろそろ後を追う。味方の行軍した経路を辿っていくから、その経路を教えてくれ。」

こちらの行動の旨を伝えると、それを意図したかの様に情報がデバイスに送信される。

「こちらが経路です。そのままの道を辿れば全く同じ様に移動できるはずです。」

2度ほど味方が通った道とは言え、念の為の警戒はしつつ行こう。

「わかった。何か接近する物体があれば教えてくれ」

 通信を返すと深い森の中へと体が呑まれていった。

-------03:00 (ヒトサンマルマル)


 金属の塀を叩き、中へのコンタクトを試みる。

「こちら降下した部隊の者だ、データの照合を頼みたい。」

 先にユイに頼み、櫓の味方へとデータを送ってもらっていた。万が一敵が来ても把握できる様にとデータベースでの照合へと切り替えていた。

「確認した。ようこそ同士よ。最前線へ。」

そう聞こえながら、鉄の扉は開いた。中には

2〜3人ほど駐屯している兵士がいた。交代交代で櫓で見張りをし、敵の持っていた無線機を逆探知して情報の分析と休憩を回していた。こちらの守備は硬い様で、気になるのは通過していった仲間の部隊たちだ。

「味方の部隊はどこまで潜入できたんだ」

「そうだな、大体基地の中までは入った様だが中枢まではもう少しかかるそうだ。電波の遮断や監視もあるからな、中々データが送られて来ないんだ。」

敵の電波妨害や、探知の機能があるため少し支障が出ているみたいだ。今の所、順調にいっていると見て良いのだろう。せっかくの機会だ。ここらで少し休息を取らさせてもらう。

「状況は把握した。戦いに参戦する前に少しだけ此処で休憩させてもらうよ。」

「そうすると良い。軽食でも食べてエネルギー補給したら入り口まで案内しよう。なんせ基地はご丁寧に地下に隠してあるからな。一苦労したぜハッチ探すの。」

この辺り一体は外壁やバリケードがある割には思ったより大きな建物はなかった。外から見るとそれほど重要そうな場所ではないが、国境ということもあって、そのため警備が多いと思われているが、自国の衛星が赤外線でこの地域を照射した時に地中に大きな建設物を確認した。まさかこんな端に拠点があるとは誰もが思わなかった。数名のスパイを潜り込ませると、敵国は秘密裏に機械とAIを利用した兵器と、大量のドローンの開発を進めていた。それを危険視した上層部は今回の潜入ミッションを立案したそうだ。

「それは助かる。少しだけ邪魔させてもらう」

カークスはゆっくりと腰を下ろし、エネルギーの補給をしながら、肩の荷を少し下ろした。



-----------WARNING


「高高度から接近する熱源あり、落下予測地点を推測するに敵基地の真上のようです。退避してください」

休息を取っているとデバイスに赤い文字と、通信が入る。敵国による攻撃なのかは不明だがここら一体を消し飛ばすつもりらしい。

「退避しろって、どこに逃げるんだ。ここから移動するのに時間は結構かかる。」

最悪だ。徒歩でしか移動できない今、この状況は絶望的と言わざるおえない。

「最短で来た道を戻りましょう。降下する物体が地面に衝突するまで30分ほどはあります。先程居た高台の辺りまでは移動できるでしょう。」

まだしっかりと全てを呑み込めてはいないが、危機なのは確かだった。今この場に残っている2人と小隊を組元いた場所まで退くことにした。

「結局戦線はこんな感じなのか。騒がしいな。」

「しょうがないさ、戦争なんだ。生きていることだけでも有難いもんさ。」

「それもそうだな。ひとまずこの後のことを考えよう。この様子じゃ味方の隊は助かるか微妙だ。正直撤退が1番いいと思う。」

戦線に居た歴が長い2人は瞬時に思考が切り替わっていた。咄嗟の判断能力と処理能力を目の当たりにし驚く。

「ひとまず自分が来た道を戻って高台方面に避難するのはどうですか。風下の方で少し反り返っている地形なので幾分はましかと。」

「なるほど、移動してみる価値はありそうだな。

ひとまず軽装に切り替え、必要最低限のものだけを持って離脱しよう。」

言われるがままナイフやサイレンサー付きの銃、ライト

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