第15話 巡視(オリバーside)
暫く黙って歩いていると、アレックスが口を開いた。
「団長」
「ん? 何だ?」
「今回、バイルンゼル帝国は焦っている様に思いませんか?」
「何故そう思う?」
俺は辺りを警戒しつつ、アレックスの言葉に耳を傾ける。
「魔獣です。今回、ただ魔獣を放っただけじゃない。普段なら狂化しない魔獣を操ってまで攻めて来た。それが気になるんです」
「確かに、いつもの攻め入り方とは違うとは思うが、何百年も我が国を狙っている国だからな。今回は本気で堕とそうとしている可能性が高いな」
俺がそう答えると、アレックスは「はい」と返事をしつつ先を続けた。
「そして、魔女の存在です。今まで魔女の存在は無かった。なのに今回は魔女の力を借りてまで攻め入ろうとしています……」
そこまで言うと、アレックスは立ち止まって前を見据える。その顔は、先程の何かを考えているものではなく、険しい戦闘時の表情だ。
「どうした」
「団長……。自分に防御魔法掛けて下さい。身体強化も」
「え?」と声が漏れた瞬間、アレックスが剣を抜き構える。俺は急いで防御と身体強化の魔法を自分に纏い、剣を構えた。
「何の気配もしないが……」
目を凝らし、背後を確認する。
「……この前の感覚に似てる気配がするんです。それも……複数……」
複数……という事は、姿消しの術か……気配も消すとは、魔女とは一体……。
「……来る!」
すぐさまアレックスが俺と自分を守る結界を張ると同時に、赤黒く妖しい光の矢が結界に幾つも当たって消えた。
バイルンゼル帝国には魔力を持った者は少ない。それでも全く無いわけで無いので、魔力を持つ者は騎士や兵士になると聞くが、今までこんな攻撃は無かった。これが魔女が指導しての事だとすれば、今回の戦いは今まで通りには行かない。
そう感じた俺は、アレックスを見遣る。対人間となる事に、躊躇していないか。
すると、意外な事にアレックスは普段と違う雰囲気を醸し出していた。自分の中で何か転換した様だと思った俺は、アレックスに言った。
「アレックス、俺が炙り出す。援護しろ」
「はいっ!」
俺は地面に手を当て、高速詠唱をし範囲攻撃魔法を放つ。半径二十メートル以内を想定し発動。その中に居れば敵の足元を崩して炙り出す事ができる。
「居た!」
すかさずアレックスが光魔法で辺り一帯を照らし出した方向へ向かい敵を目視すると、すぐさま俺は土壁で囲み閉じ込めようとした。
が、しかし。
何が起きたのか、俺の術が発動しなかった。
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