第9話 新たな気持ち

 「ううん、しかもそれだけじゃダメなんです。

  お父様やお兄様だけじゃないんです。




  そう、新しく家族になったお母さまや兄妹にも、私の事をもっと知ってもらうために、これからは出来るだけお話をするように気を付けていきたいと思います。」


 薫が嬉しそうに、今思い付いた事を姫子に話していた。






 「そうですか。お父様が再婚されて、ご家族の人数も増えていたようですね。




 そうですよ。そうやってどんどんお話をして、ご家族の皆さんに自分の魅力をもっと知ってもらうようにしたいですよね。


 会話を多くすれば、それだけ家族の皆さんが薫さんの言う『本当の薫さん』を知るきっかけになると思いますよ。」




 「ええ、そうします。


 とは言っても、伝えたとしても私はそんなに魅力的な人間ではありませんが、それでも、もっと私の事を知ってもらいたいです。




 姫子さん、新しいお母さまは、とても元気でお優しい方なんですよ。

 お父様の事を何より大切にして下さっているのはもちろんですし、私達兄妹の事もご自分の子供(兄妹)と同じように大切にして下さっていると思います。



 実は私、再婚について最初は不安でいっぱいだったんです。

 ですが今では、お父様があの時再婚をしてくれて良かったなぁと思っているんです。






 でも、大人になってから一緒に生活を始めたので、お母さまにやはり思っていることを素直に何でも話す事は、まだまだ難しいです。


 父や兄とは普通に話せるような事でも、お母さまには話すのをまだ少しためらってしまうんです。




 でもね、姫子さん。お母さんはその人柄のおかげもあって、それでも随分お話がしやすい方なんです。


 私が今頑張らなきゃと考えているのは子供同士の関係なんです。


 年齢が近いうえに、兄妹構成が同じせいなのかしらね?最近でもまだ全然距離が縮まらないんですよ。


 いまだにお互いの兄妹同士で話してしまう事がとても多いです。


 でも、それじゃあやっぱりいけませんよね。そういう所も直していけるといいですよね。






 今日のお散歩で、姫子さんと出会えて良かったです。


 私、姫子さんとお話が出来たおかげで、家族に対する新しい気持ちが芽生えた気がします。」


 薫が嬉しそうに話していた。






 「それは、良かったです。姫子おばあちゃんの話も、少しは役に立ったようですね。




 再婚されたのは、数年前と仰っていましたね。

 まだまだこれからですよ。慌てずに、少しずつ仲良くなっていけるといいですね。


 薫さんが努力をしていたら、きっと出来ると思いますよ。」


 姫子も笑顔で答えた。






 お互いに自分の事や好きな花の話などをしながら、楽しいひとときを過ごした二人は、姫子が宿泊している別荘の前まで来て、名残惜しそうに挨拶をして別れた。






 今日の姫子と薫が散歩中に遭遇した楽しい出来事が、この後薫に起こる事件に、姫子も巻き込んでいくことになろうとは、この時の姫子には思いもよらなかった。




 そして、その事件簿が今まで類を見ないものになっていくことにも…。


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