第6話✒マニランマ決戦

「よくここまで来たな。我こそがマニランマ三世だ」

中年男がたちあがった。推定50代半、中肉中背でスーツ姿。

めっちゃ普通のおっさんじゃん。一番反応に困るやつじゃん。

「だが、ここから先はそう甘くないぞ。いけ、マニケラトプス!!」

マニランマが言うと、恐竜もどきは立ち上がり口から黒い液を吐き出した。ザキは逃げ回るばかりでなかなか攻撃をすることが出来ない。

「これがあのミッドナイトブラック……直接くらったらひとたまりもないですね。どうしたらいいんでしょうk……」

言いかけたところでザキに液が直撃しザキはその場に倒れた。衝撃で俺の体は地面に放り出される。ザキを見ると全身が墨をかぶったように真っ黒になっている。

「ぬははは。もうそいつは真夜中の黒に囚われ、その闇から抜け出すことはできまい」

えーザキ、やれるの早いよー。えー、どうすんのー。イク様ーヘルプー!

「ふっふっふっふっ」

床に倒れた黒いザキが突然小刻みに震えだした。ザキ、笑ってるの?心が闇に包まれておかしくなっちゃった?

「ふふふふこれすごくないですかー?」

ザキの声と共にザキを覆っていた黒色がカバーにようにはがされていき、中からザキがでてきた。

(えっ。どういうこと?)

「これすごいんですよ!!図書館で本あるじゃないですか?それに大体かかってるんやつなんですけどー。中に線が入っているので好きなところでカットしていただいて。スッゴイきれいにこういう風になるんです」

ザキは顔に貼ってあったフィルムをつけたりはがしたりして見せてくる。

(え、なんの話?ザキずっとそのフィルム全身に貼ってたの?)

「本にかけるとカバーかかってないんじゃないかって思うくらい薄くって」

(あーうん、確かに気付かなかったわ、フィルムかかってたの)

「ですよねー。ふふふふふ」

ザキは笑いがとまらないようだった。


「悪戦苦闘しているようですね」

突然女王があらわれた。

「イク様!はい。敵の倒し方がわかりません」

ザキが答える。

「ではヒントとして敵の弱点を教えましょう。マニケラトプスは光、マニランマは優しさです」

なんで倒してほしいってそっちが依頼してきてんのにヒントとか上からなのよ。答えいいなさいよ。

「分かりました。でもこの部屋に光るものなんて……そうだ!ガラスペンさん。あなた実は蓄光なんです」

えー、なんでだろう。なんか分かんないけど、それすっごい疑わしい。なんかぞわぞわする。

「でも肝心の光がないと蓄光することもできないですね。あ、分かりました。女王様が出てきた時の光を集めればいいんです。女王様お願いします」


女王が何度も現れたり消えたりを繰り返す。

(これなんの時間よ……)


20分後

「さぁ、とどめです!」

ザキは俺の体をマニケラトプスに振りかざした。


シーン


(ほらぁ光らないじゃーん そんな気がしてたのよー。どうすんのよこの空気)

「分かりました。希望の光を集めればいいんです」

ザキは俺を床に置くと手を組んで祈りのポーズをとる。

(どういうこと?世界観コロコロかわってついていけないんですけど)


20分後


再びザキが俺をマニケラトプスに振りかざした。

その瞬間、俺の体から強い光解き放たれる。

(えー、うそーほんとに出ちゃったよー)

マニケラトプスは“ぷぎゃぁああああ”というなんとも言い難い叫び声を放ち米粒ほどに縮んでしまった。

「むむむ。万事休すですね」

マニランマは速足で同じ場所を行ったり来たりしている。

明らかに動揺しちゃってんじゃん。

「大丈夫ですよ。マニランマ三世さん。失恋してさみしかったのですよね、辛かったのですよね」

ザキが急にマニランマに話しかける。


ザキが温かい言葉をかけること小一時間。


「ぅう……。すまなかった。俺、彼女にふられちゃって、一人になっちゃって。それでさみしくて……」

眼鏡の奥に大粒の涙があふれている。

「今からでも、この世界を元に戻せるだろうか」

マニランマが水色インクの入った瓶を差し出して来た。

「これが七色目のインク“そら”ですね。初めて見ました。どこまでも続いていくような澄み切った空色。美しいです。きっと大丈夫ですよ」

ザキはインクを受け取ると、今まで集めた残りのインクと混ぜ合わせた。

「ではいきますよ、ガラスペンさん」

(え、なに、分かんない。俺どうすればいいの)

ザキが俺を天に向かって突き上げる。俺を核にしてどんどん明るい光が回りに広がっていく。今までモノクロだった建物に鮮やかな色があふれる。

「こんなに綺麗な建物だったのね」

ザキはうっとりとした表情で辺りを見渡す。

「私アンティーク小物も大好きなんですよー。ほら、これとか良くないですか?めちゃくちゃあじがありますよね」

壁にかかっていた時計を外そうとする。

(待って、待って、今めっちゃ大事なシーン)

「あー、そうですね」

「よくやったわ、ヒロコ。これで世界は元通りよ」

イクがあらわれた。

(よし、よくわかんないけど、ようやくこれで人間の姿に戻れるのか。ザキ、巻物だして)

ザキは50年前に渡された巻物をリュックの中から取り出す。ひらけると中には鳥のような生物のイラストが描かれていた。

「フクロウ……?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る