第20話 賀監督の初舞台(後編)

曹愛青ソウアオイは慌てふためいた。


なぜならば、教室の暗い廊下には無限の闇のように見えたからだ。


俺も慌てふためいた。


それは、いつも憧れていた女神が、この瞬間に俺の腕を掴んでいたからだ。


たとえ殴り殺されても、自分が書いたものはこんなにも刺激的なものになるとは、想像もしていなかった!


ただ残念なのは、このプロットには予算がなく、台本にある多くの仕掛けが実現できないことでした。


まあ、これは重要ではありません。


重要なのは、目標が達成されたことだ。


二人が教室に来ると、俺の携帯電話のライトを照らし、そこに誰もいないことを確認し、後ろにいった曹愛青ソウアオイに、「もう入っていいよ、怖がらないで」。


彼女はうなずき、おびえた小さなウサギのように一歩一歩俺の後ろで次いで来た。


「ちょっと…電話をかけてみるね、どこにあるか確かめるからさ…」


俺が緊張を緩和するため、そして神視点を隠すために、わざと彼女の電話番号をダイヤルしました。


すると、私達の席に光のビームが点灯し、電話が鳴りました。


少女は胸を撫でた後、安心したように息を吐き、早足して携帯を取りました。


「絶対に、誰かのイタズラに違いない、そうでなければ私の席に置かないでしょう!」


曹愛青ソウアオイは怒りながら、携帯のパスワードのロックを解除し、情報を確認しました。


やばい、そういう手が忘れた!


彼の内心では焦った!


初めて書いた台本は未熟だったからなぁ、でも幸い、まだ奥の手が残っていた。


すると、「同じクラスで誰と揉め事とかあったの?」と俺からさり気なく聞いた。


曹愛青ソウアオイは首を横に振った。


ところで、突然教室の外から何者が走る音がした。足音が遠くから近くに来て、そして再度遠くへと消えたように!


「……曹愛青ソウアオイ……好き……」


わざと喉を細めしながらの声が遠くから聞こえた。彼女が再び彼の傍に駆け寄り、服の隅を掴み、体を微かに震わせた!


俺も完全にビビってしまった!


台本では、薛勇シュエツヨシが教室の外から走ってくるように頼んだ。なぜならば、自分だけ電話が通じるのは怪しいからだ。


そこで仮想の犯人を置いて、自分の疑惑を晴れにすることが必要だった。


だが、こいつは勝手にセリフを追加した?


「つまらない…子供っぽい…」


「……」


曹愛青ソウアオイはゆっくりとしゃがみ込み、両膝を抱えて顔を覆い、泣き声で何かを言い、静かにすすり泣きした。


さっきの光景に本当に怯えていたようだ!


どうしよう?


こいう状況は俺どうすれば良いか?


温涼ウェンスズミからまた教えてもらっていない。


俺はしばらくの間、どう慰めたらいいのかわからず、その場で固まってしまった。


まさか、こんな状況になるとは思ってもいなかった!


曹愛青ソウアオイの弱くて無力な姿を見て、彼の心が刺されたようになった。


なんとかしないと!


こんなとき、どうやって慰めればいいのか?


数多くのアイデアが脳内をよぎり、手を伸ばして頭を撫でる?


俺は手を半分伸ばしていたがやはり引っ込めた。


いいや、曹さんとなじみもないし、こんな親しいことをするとセクハラと思われるかもしれないし、万が一、彼女から手をどけられたら、気まずいし!


でも何も言わずにここに放置して泣くのは良くないでしょう?



俺は悩みながら色々考えて、突然彼女が恐怖から素早く解放できるアイデアを思いつきました!


すると、彼もしゃがみ込み携帯を取り、音量を最大にしてから音楽をオンにしました!


「月の上を見上げ、いくつの夢が自由に飛んで…」


フェニックスレジェンドの曲「OntheMoon+FreeFlyingDJReggaeVersion」が俺の携帯から高音で情熱的に歌われ、暗い教室が一瞬で喜びに包まれました!


究極の反転、風景がガラッと変わった!


曹愛青ソウアオイの体も震えが止まり、すすり泣く声も聞こえなくなった。


しばらくして涙を拭い、顔を上げた。


彼女の口の端には笑みがあり、目には涙があり、窓の外の月明かりが彼女の顔を照らし、まるで柔らかい光の層で覆われているかのようで、少女は雨の中にある梨の花ビラのように哀れで愛しい。


「……ありがとう……賀さん……」


恥ずかしがり屋で可愛らしい女の子は、思わず小さな鼻からしゃぶりました。


俺は目をそらすことができなかったが、手元にある音楽のおかけで気を散らすことをすぐさま蘇った。


音楽を止めて、「くっ……泣いて笑って、黄色い犬がオシッコした、曹さん」と冗談を言った。


曹愛青ソウアオイの顔が赤らめ、歯を食いしばり、思わず彼の肩を数回も力強く叩いた。


このことわざは非常に効果があるようだ。


曹愛青ソウアオイは立ち上がり、デスクからティッシュペーパーの箱を取り出し、振り向いて目を拭い、再び彼と向き合ったとき、感情は安定していたが、目は少し赤くなっていた。


「行こうか?」と俺は言った。


「うん……」


二人はキャンパスを出て、俺の家はここから遠くなく、徒歩で約20分くらいだ。


でも、今日は敢えて反対の道を通り、曹愛青ソウアオイと一緒に学校の近くのバス停まで行きました。


彼女は頭を下げ、何も言わなかった。


俺も頭を下げて、何も言わなかった。


このように、少年は黙々と彼女をバス停まで送った。


「あの…賀さん…どのバスに乗っているの?」


「ああ…俺は…352だ」


俺はバス停の看板をちらっと見て、さりげなく言った。


すると、遠くないところにナンバー352のバスがゆっくりと近づいてきた!


ただ、バス停の前いる男女がバスのドアが開いて、閉じてそして去っていくのを見つめるだけでした。


「……」


「賀さん…」


「大丈夫、俺は……116だ、352はちょっと遠回り、116は直達だから」


「それじゃ、私と同じバスに乗っているのね~でも、今まで会ったことないわ!」


曹愛青ソウアオイは嬉しそうに言った。


「実は……君を無事にバスに乗るのを見届けようと思って、先、ちょっとおびえているから」


遅かれ早かれ嘘がバレじゃうからと、俺は覚悟し照れながら頭を掻いた。


俺はわざと彼女のリアクションを見なかったが、でも彼女の目が自分を見ているのを感じた。


「賀さんって……いい人ですね……」


「……」


「マジ!」


不意を突かれたように突然いい人カードをもらった。


俺の心境は波乱万丈のように動いている最中で「WeChatを交換できる?」と聞かれた!?


「…あぁ…はい、俺の電話番号はWeChatです。おそらく先の着信履歴にあると思う」


人生の浮き沈みはあまりにも速く、曹愛青ソウアオイの連絡先を入手したが、女神からWeChatを交換することを申し出たという事実は、俺の気持ちを一瞬で高揚させました。


「これからは、曹ちゃんまたは愛青(アオイ)ちゃんと呼んでもいいよ」


曹愛青ソウアオイが低い声で照れくさく言った。


「そ...それなら…俺のことを天然くんって呼んで…友達も…そう呼んでいる…」


友達とは温涼ウェンスズミのことを指しているが、彼女はいつも呼び捨てだけと。


たた一人しかいないからだ。


「うん……」


曹愛青ソウアオイは蚊のような声で頷き、しばらくすると116番のバスが順調に停車場に到着した。


「じゃあ、私が先にいくからまた明日、天然くん!」


曹愛青ソウアオイはバスに乗り込み、振り向いて手を振った。


「また明日…あ…あ…」


俺は駅前に立って、口の中では曹愛青ソウアオイの名前を言おうとしたが、結構、彼は呼べなかった。


「ふふっ~」


曹愛青ソウアオイが口を覆って微笑しながら、ドアが閉まりバスが動いた。それに伴って、バスから排気ガスだけだったが、少年は大きく息を吸って、大きく吐き出した!


突然振り返り、足が一度に二か三歩ほどの距離で疾走し、高くジャンプしながら叫ぶまで、ますます速く走り出した。


「yeahhhhhhhhh!」


「どう?賀監督、最後に追加したセリフの効果は?」


薛勇シュエツヨシからのメッセージが届いた。


すると、俺は叫んでボイスで送った。


「スゲ〜!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る