第19話 賀監督の初舞台(前編)

二人が喫茶店を出るやいなや、俺は薛勇シュエツヨシからWeChatメッセージを受け取りました。


「天然くん、何かわかった?」


「安心して!張之凡チョウシノブが好きは前世のことだからと温涼ウェンスズミから教えてくれた」


「前世?どういう意味?」


俺が顎に触れながら、どう答えたらいいのか悩んだ。


行ったり来たりしたチャットのアラート声も温涼ウェンスズミの耳に届いた。


「WeChatメッセージを送ってないのに、誰から?」


彼女は今二人のツーショットをいじっているが、アラート音を聞いて思わず頭を上げて尋ねた。


「毎回ねずみを見つめる猫のように、俺を見ないでくれる?ちょっと怖いだけと…というか、俺が他の友達がいないわけ?」


少年が言い訳をすると、温涼ウェンスズミは足を止め、「友達?名前を教えてごらん」とゆっくり聞いた。


「…俺が追加したLSPグループに誰かが画像を投稿した、本当に見たい?」(※1)


「……」


温涼ウェンスズミは怖いもの知らずぶりをしているが、徐々に赤くなっていた彼女の耳は裏切った。


「オタクキモイ…」


一言を残して、少女はうんざりしたように早足で前に進んだ。すると、彼は引き続き薛勇シュエツヨシにメッセージを送った。


「過去形の意味よ……ハハハ、ともかくあの二人は大丈夫だ!」


「よかった!というか、彼女お昼怒った理由を聞いた?張之凡チョウシノブと一緒に座ってからずっと落ち込んでいるのを見た」


やばい、何か忘れたかなぁと思いきや、これだった!


今では、安易に聞けないしなぁ!


俺はしばらく考えてごまかした。


「これは竜の逆鱗と一緒だから、今のところは触れないね。」


「わかった……よくやった!何か俺に助けが必要なら遠慮なく言って」と彼はそのメッセージを見て、先から温涼ウェンスズミに友達がいないと言われ、内心で隠れた考えがゾワゾワしくなり、彼に助けてもらう必要だ…


「それなら、誰かの連絡先を聞いてほしいだけと?」


「いいよ、誰?」


曹愛青ソウアオイ……」


「くそっ……お前でやっぱスゲーやつだなぁ!いきなりこハードル高い!」


「まだ見ているの?」


前から温涼ウェンスズミが羞恥の感情を超えた怒り声があった。


彼女は賀天然ガテンネンがすぐに追いつくと思っていたのに、振り返ると、このオタクが楽しそうにチャットしていた!


ほんの数枚のエロ画像なのに、そこまで真剣に見る必要があるの?


少女は腹立たしく、彼って本当に目がおかしいと思った!


...


...


午後から俺のカバンにある携帯が断続的に振動していった。


俺は直接、曹愛青ソウアオイの連絡先を聞く勇気がなく、実際のところ、薛勇シュエツヨシにサポート役になる前なら、このような大胆な考えすらなかった。


俺のようなタイプは、大体こういうことを心のどこかに沈むほうが良かった。


ところで、薛勇シュエツヨシが頭を下げて助けを求めることから、刺激をもらったに違いない。


自ら突破口を試さないのか?しかも、勇気というのは他人から影響を受けやすいものだった。


温涼ウェンスズミに助けを求めることもできますが、でも彼女が不機嫌だし、女の子ともっと話したほうが良いと彼女から言われたし、今回はチェンジ後の初めての実践としてやってみよう。


でも、自らする実行する必要がなく、俺は薛勇シュエツヨシのために、温涼ウェンスズミの情報を見つけるのを手伝い、その代わりに薛勇シュエツヨシは自分のために、曹愛青ソウアオイの連絡先をもらう。


錬金術のように、同価値の交換。


悪いことではありません。


「周りは曹愛青ソウアオイの連絡先を知らないだ。学校が終わったら直接聞いてみようか?」


「はぁ!?それで彼女からもらえると思う?」


「確かに…やはり、曹愛青ソウアオイが学校で控えめすぎて、連絡が取りにくい感じだね」


だめだ!


曹愛青ソウアオイのようなタイプは、友達と友達からというルールでは、難易度は5つ星に違いない。


しかも、その結果失敗しかない。


「『SavetheCat』って聞いたことある?」


「猫を救え?一体何だ?」


俺は「チッ」と発声し、わかりやすい言葉に変えました。


「…というか、ちょっとしたロマン、ちょっとしたドラマ、ちょっとしたハプニングが必要かもしれない…」


「ああ、わかった。『勇者に美女を救い』ということですよね?いいですよ、俺が得意だから、仲間を呼んで協力するよ!」


「……下品なこと言うなよ、ちょっと待って、台本書いて送るから」


「????」


「台本!あのさ、ちょっとプロし過ぎない?!」


「プロットに従っていい、待てて」


講壇上の先生が注意を払っていない間、俺は静かに携帯を片付け、ペンと紙を取り出して集中力を高めた。


映画であろうか、アニメであろうか、男女が出会いのすべてのプロットを頭の中で想像し、ペンで一つずつ現れました。


ペン先は素早く進められ、温涼ウェンスズミは彼が将来脚本家になると言った。まさに、今は少年が初めて自分から攻めていくことを綿密に計画している。


...


...


街の夜は徐々に暗くなり、港町市高校の教室ビルは明るく照らされています。


夜自習は高校生が嫌いで、港町市では市立中学校の規則は午後6時半から午後9時まで、薛勇シュエツヨシのような成績を救いがない生徒を除いて、ほとんど全員が参加している。


俺は頭上にある白熱灯を見つめ、黒板の真上にある円盤時計を見ると、現在の時刻は8時29分、秒針は徐々に12時の位置へと――


「パッタッ」


先程、明かりがついだ教室が突然真っ暗に!


「うわ~」


静かな教室は一瞬にして興奮した咆哮を上げ、現代文明では停電が稀であり、しかも停電は学校だけで、窓の外の街並みはまだ明るい。


生徒たちは次々と携帯を取り出し、曹愛青ソウアオイも同じように、明かりを照らした。


ところで、賀天然ガテンネンは、他の男子生徒のように叫び声をあげたり騒いだりもなく、動揺せず淡々とした表情だった。


担任先生が少し叱ると、騒がしい教室は徐々に静かになり、ドアの外で他のクラスの先生と話してから講壇に戻った。


「誰かが学校の電源ヒューズを切ったようだ、これは非常に悪い行為だ。今、すべての高3生徒が体育館に集まってください!」


教室に悲鳴でいっぱいとなった。


これは30分しかなくでも、学校は早退させるつもりがないということだ。つまり、体育館には非常用電源があったから、そこで勉強させるつもりのようだ。


港町市高校の高三学年では16組もあり、彼らが洪水の流れのように階段を下りました。俺は早足で体育館に先に到着し、曹愛青ソウアオイと一緒に行くことを選ばなかった。


しかし、生徒達が教室を出たら、落ち着いて勉強する気配もなかった。もうすぐ学校が終了の時間となり、次第にみんなが暇つぶしのように、おしゃべりをし始めた。


それを見ていった俺は体育館の隅に座って退屈しそうで待っていた。まもなく9時、ついに携帯が振動した。


それは葉佳林ハカリンからのメッセージでした!


「どこにいるの?先生は署名するから、早く帰る人は欠席扱いされるよ!」


「うちらバスケットボールのリングのそばにいるから、早くこちらに来て。」


予想通り。


俺は起き上がり、指定された場所までゆっくりと歩いた。


クラスの生徒たちはすでに半分近く離れており、取り残された生徒も署名を求めて列を作っていた。


みんなからそう遠くないところに、曹愛青ソウアオイは不安でいっぱいだった。


賀天然ガテンネンはわざと列の最後尾に立って、ようやくサインが終わるとゆっくりと前に出て、曹愛青ソウアオイの側に来ました。


「どうしたの?」


曹愛青ソウアオイは彼を見て、「ここに来た時、誰かにぶつけられて、携帯が飛んでしまった。拾おうとしたら見つからなかった」と気まずそうに言いました。


「二つの方法がある、戻って見つけるか、先生に報告するかなぁ?」


「先ほど友達に手伝ってもらって、探し回ったけど見つからなかった。先生は電気が回復まで待つか或いは明日の昼間を待った方がいいと言っていた」


「もうすぐ学校が終わってしまうから、友達に悪いから先に行かせた」


「電話をしたンの?」


「やってみたけど、繋がっていない」


曹愛青ソウアオイは悔しそうな顔をした。


「じゃあ、もう一度電話してみよう、心配しないで、一緒に探すから電話番号は?」


賀天然ガテンネンは携帯を取り出し、彼女はあまり期待していなかったが、彼の落ち着いた様子を見て、心のパニックは徐々に落ち着きました。


「185…」


その番号がダイヤルされ、電話の向こうからビープ音が聞こえました。


「通じた」


俺がハンズフリーボタンを押すと、接続後の通話時間が電話インターフェースに表示されました。


曹愛青ソウアオイの目は輝き、だが、接続された電話の相手が黙り込んだ。


「もしもし?」と聞いたが、返事はなかった…


二人の間に広がる静寂、突然、電話からかすれた意味不明なトーンが聞こえてきました。


「教…教…教室…教室…」と用心深く聞いてやっと相手が何を言っているのかわかりました。


停電までさせて、ただ、女子の連絡先と交換のため!


こんなのは、重度の中二病の賀天然ガテンネンだけやれることだ。


―――

(※1)LSPグループとはオタクが集まってちょっとセクシーな写真やエロトークするグループチャットのこと


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