第9話 親友


人々の行き交う横浜の交差点には、嘆きや憂い、妬みや怒りが渦巻き、快楽や欲望に秘めたる想いが溢れていた…。


交差点の信号機…。


邪悪な笑みを浮かべる女が、信号機の上に腰掛けて、人間どもの想いを聞いていた…。



ハルカと一緒だと楽しいけど、彼ともふたりで遊びたいなぁ…。



リサったら、また、彼氏を作ってさ…あたしがいるのにさ…また、邪魔しよう…早く別れて欲しいよ…。



信号機の上の彼女が笑った…。


獲物を見つけて邪悪な笑みを浮かべた…。


彼女は吐息をふたつ吐いた…。 


吐いた吐息は、赤く小さなアザミの花に姿を変えた…。


茎と葉には小さく鋭いトゲを持ち、二輪の花はそれぞれにゆらゆらフラフラ舞い降りて、ハルカとリサに近づくと、トゲを刺したら身体にスーッと消えてった…。


信号機に座る彼女も、それと同時に消えていた…。

 


リサとハルカは高校時代からの親友で、何でも話せる関係をずっと続けていた…。


しかし、リサに最初の彼氏が出来た頃より、ハルカはリサに執着心を強く抱き、リサを束縛したがった…。



「ねぇリサ…今夜は一緒に食事に行こうよ」


「ハルカごめん…今日は約束あるんだ」


「ふーん…彼と会うの?じゃぁ私も一緒に…」


「ごめんねー今日はふたりで出掛けるよ」



夜になり、彼氏がリサを嫌う様に、ハルカはSNSに書き込みをした…。 



○○町のリサに注意!!誰にでもやらせる女につき、病気持ち!



連絡求む!! 18〜70歳の男性注目!○○町の大学生、リサは生でやらせる公衆便所女だ!!



噂は広がり、彼氏もリサから離れて行った…。


それからも、少しでも男と話すリサを見ると、ハルカはSNSに書き込んだ…。



「ねぇ、ハルカ、最近ネットに酷いこと書かれてるんだ…」


「私も見たよ…酷いね…」


「誰が書いたのかな?悔しいよ!誰かに恨まれてるのかな?殺してやりたいよ!!」


「元彼?誰だろうね?でも、何があっても私はリサの味方だからね」


ハルカはとぼけ、嘘をついた…。

 


その時、リサの頭に囁やきが聞こえた…。



馬鹿だね…あの書き込みは、ハルカの裏アカだよ…ハルカが全部書いたんだよ…。


「え?」



ハルカの頭にも囁やく声が…。


お前は馬鹿か?あんな書き込みしたって、リサがお前だけの者になるもんか…リサが欲しけりゃお前がリサを殺して自分の部屋に置いておけ…お前が子供の頃に飼っていた犬のようにね…。


「剥製?」

 

そうだ、そうすりゃいつまでも、お前から離れることは無い…。


「そっか…そうだよね…」


まずはハルカが狂った…。


瞳を鈍く光らせて、ハルカが狂気に取り込まれて行く…。




「え?ハルカが?」


ハルカは仲良い振りしてお前を妬んだ…。


自分は男が出来ないのに、お前ばかり男とやって、未だ処女のハルカは妬んだ…。


「そんなの酷い…」


でもな…ハルカの気持ちもわかってやれよ…妬む以上にお前が好きなんだよ…他の男に抱かせるくらいなら、ハルカはお前を抱きたいんだよ…。


「でも、あれを書かれて、書いたやつを殺したくなった…そんなハルカを私は許せる?」


だから、今度はお前が騙せ…一度だけハルカに抱かせて夢をみさせてやりな…。


その後、二度と書き込めない様に、ハルカを殺してやればいい…。


ハルカが死ねば、お前は嫌な書き込みから逃れられる…。


SNSの噂なんか、すぐに忘れられるはずだから…。



リサも狂気の扉を開けた…。

 

リサもハルカに殺意を持った…。




「ねぇハルカ…もう男は懲り懲り…大好きなハルカに抱かれたいな」


ハルカはほくそ笑む…。


「ならさ…今日うちに泊まりなよ」


「うん、用意したらハルカんち行くね」



リサの用意は刃渡り12センチのペティナイフ…。


硬い鋼で切れ味抜群…。



ハルカの用意は青紙の出刃包丁…。


刃こぼれしない出刃包丁…。



リサがハルカの部屋へ来る…。


互いの得物も隠さずに、狂ったふたりは裸で抱き合う…。


陰部を弄り、乳をねぶる…。


舌を絡ませ喘いでる…。


互いの女陰に足指を差し込み合い、ふたり同時に何度も達した…。


「もっと…もっと楽しみたい…」


リサはハルカの乳首を含み、歯を立てハルカの乳首を噛みちぎる…。


ハルカは狂った笑いを浮かべている…。


痛みも快楽で歓びに変わる…。


「気持ちいい…気持ちいいよ…リサにもやってあげる…」


ハルカはリサの乳首を噛んで一気に乳首を噛み切った…。


「あぁ…いい!いい!」


ふたりに痛みは飛び切りの快感となり、互いが交互に傷付けあった…。


乳首の取れた乳房にペティナイフを差し込んだ…。


柔らかな臀部の肉を出刃包丁で削ぎ取った…。


「もっと…もっとやって…」


吹き出す互いの血を舐め合って、互いに一番敏感な陰核へ刃先を当てると、またもや同時に絶頂に達した…。



リサ…これ以上傷が着くと、綺麗な可哀想だからお腹を開いて中身を出してあげる…。


ハルカはみぞおちから陰部へ向かって、出刃包丁で切り開く…。




ハルカ…いっぱい楽しんだね…もう、いいね…。


リサはハルカの首筋に深く深く、ペティナイフを差し込んだ…。


互いの血飛沫が混ざり合い、それでもふたりは狂った笑いを浮かべながら、ふたり同時に絶命をした…。



あはは…きゃははは…。


まじ、馬鹿な女どもだな…。


快楽の中で殺し合いやがった…。


ここまで狂うとは…面白かったー!


あはは…あはは…。



彼女は高らかに笑い声を残して、また、あの信号機へ戻った…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る