第43話 密会

「ジャンさん、一旦、言ってほしい所があるんだ」


「なんです? 」


「ほら、妹がアザレアが銃撃されたって…病院に行って状態を…」


「それには、及びません、それはフェイクですから!」


「はぁ!? フェイクだと!」


銃撃されたのは本当だが、今回の密会の為に、あえて嘘の情報を流したそうだ。

コーベットは知ってたらしく、憤慨する俺をあしらいながら事の経緯を話した。

アザレアが乗った車を実権を握りたいロジャー派の構成員が銃撃した。


―――だが、その構成員に紛れ、アザレア派の構成員が、アザレアを銃撃出来たのか、確認し、無事なのを見て、その場を嘘の報告でやり過ごした…そうだ。


「そんな上手くいくとはね」


「奴等は、プロの軍人じゃない、杜撰な所があるものさ、何はともあれ、彼女は”無事“…今回の密会にも参加して貰うのさ」


「マイク・ジョーンズも嘘くらい見抜けよ、余計な心配したじゃないか…」


それに、コーベットはフッと薄ら笑いをし、「奴にその情報を流したのは俺だ、奴には気の毒だったかな? 」


「お前かよ…敵を騙すには味方からとも言うが、混乱させすぎだ!」


「拳を交えた仲じゃないか、それとも…この一件が終わったら、もう一戦交わすか? 」


「上等…だが、それもこれも、終わってからだ」


「スカーフェイス殿、コーベット殿、もう少しで着きます、お話もいいですが、狭苦しい車内ですが、ご休憩を取られて下さい、きっとこのあとは、忙しくなると思うので! 」


ジャンさんが、運転する車はミソネタ区に着き、ロバート・アルゲリッチ議員がいる議員事務所に車は疾走していた。


※※※


議員事務所は、2階だて質素な作りの建物だった。

2階に皆が待っているというので、階段を登り、インターホンを押すと、男の声で「どなたでしょうか」と言われたので、そこをジャンさんが「ロバート議員、皆様をお連れしました」と言うと、ドアのロックが外れる音がした。


そして、中に入ると、「お兄様!」とアザレアが出迎えてくれた。


「本当に無事だったんだな、どこか怪我はしていないか? 」


アザレアは銀髪の髪をかきあげ、「皆が必死に盾になって守ってくれたの、幸い、死者は出ませんでしたわ」

そうか…とホッと一息つくと、奥から「あの~」と声をかけてくる人が…あれが…。


「初めまして、デーモクラトスで野党議員をやらせてもらっている、ロバート・アルゲリッチと申します」


ぱっと見、身長は俺より低くく、175センチぐらいで、スーツの上からでも分かる引き締まった肉体、印象は爽やかな好青年だった。


「どうぞ、奥へ、なにぶん、何もない所ですが、皆様、椅子へ着席お願いします」


奥へ行くと、既に着席してる人が2人いた。

テーブルを挟んで、手前から右から順に俺、アザレア、コーベット、向かいあって、左からロバート議員、知らない人1、知らない人2の順番で座った。


「どうぞ、粗茶ですが…」


ジャンさんは、お茶汲み担当で、席には座らなかった。

向かい合って、知らない人物が2人いるということで、自己紹介をしていく。


「俺はスカーフェイス、ボクサーをやっています、訳あってユースティティアの派閥の代表も兼ねています」


「私はアザレア・ガルベアです! 兄とは別の派閥の代表をやっていまーす」


そう言いながら、俺の腕に抱きついてくる。

皆が見てる手前、恥ずかしいな。


「ダニエル・J・コーベットだ、フレイタス署で警察官をやっている、兼業でボクサーもな」


淡々と話す、コーベットには、何か使命感じみたものを感じる。


「次は私だね、先程も言いましたが、ロバート・アルゲリッチです、議員をやらせてもらっています」


軽快に口調からも爽やかが溢れんばかりに、自己紹介するロバート議員、この人が今回のキーマンになるかも知れない。


「アレクサンダー・ガッティ、ジャーナリストを生業としてます、よろしく」


ジャーナリストか…口髭がワイルドで、ガタイもいい…ハンチング帽を被っている、それにしてもユースティティア相手によく出来るな…肝が据わってる。

そして、最後に紹介するのは…


「マイケル・ヨルダン、検察を務めてます、皆様、よろしくお願いします」


鷹のように鋭い目が眼鏡越しで分かる、細身だが、それを感じさせない圧力を感じる……検察か、今回、必要な存在だ、ロバート議員より、重要な存在になるかも知れない。

さて、話をするんだが、何処から話すんだ? こっちは素人だし、上手く話せるだろうか…

そんな俺の考えを見据えてたのか、ロバート議員から口を開いてくる。


「今回、皆様に集まってもらったのは、反社会的勢力であるユースティティアを解体まで追い込むまで、皆様のご協力をお願いしに集まってもらいました、つきましては、ユースティティアに関する情報を…スカーフェイスさんから」


「えーと、確認の為、俺は穏健派と呼ばれる派閥に代表ですね…構成員は10万人程、敵対してる派閥で、最も数が多い、ロジャー・セラノ率いる、ロジャー派は150万といます…アザレア派は50万人です」


構成員の数は、以前、マイク・ジョーンズから教えてもらった、まさか、こんな形で役に立つとは、思いもしなかった。


「現在、デーモスクラトスで猛威を奮ってれのが、ロジャー派で薬物売買、人身売買、あと、集めた金で企業投資、宗教法人による信者からの金の巻き上げ等やっています」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る