第41話 バディ
「どうした、タケシ? 昨日から元気が、ないじゃいか? 」
ジムのリビングルームでソファーに、くたびれた様子で、寄りかかっているタケシが、いつものように元気が無く、上の空な様子でいる。
―――――何か…あったんだろうか?
隣に座り、肩に手をやり「悩みなら聞くぜ、何かあったんだろ? 」と聞くとタケシは、「スカーフェイス、お前、他人に人生を弄ばれたらどう思うよ? ハァ~、何かよ、何にもやる気がしねぇ、マネージャーの仕事、当分、休んでいいかな? 」
思ってたより、憔悴した様子でとても事情を聞けるような感じじゃなかった。
「ああ、そんな様子じゃ仕事にも差し支えるだろう、休んでいけよ」
ソファーに寄りかかった姿勢から、寝そべる姿勢なり「ありがとう、ちょっと疲れたんだ」と話した。
寝るのに、邪魔だったんで立ち上がった。
床に座り、テレビを点けるとニュースが流れていた。
『我がズィクタトリアは、デーモスクラトス国境近くで、軍による軍事演習を行うこてを決定しました、それに対しデーモスクラトス政府は”軍事的挑発“だと強く抗議し、我がズィクタトリア、バーノン政権、では、ただの演習に“過剰反応”だと、デーモスクラトス政府の抗議を聞かない方針のようです、次のニュースは…』
穏やかじゃない世の中だな…俺が小さい時から、こんな小競り合いをしてたっけ…いい加減に…俺がそんな事を考えていると、ニュースでは、彼女の名前が報じられていた。
『何と、あの話題の歌手、フォゲット・ミーノットさんが、デーモスクラトスの大手事務所に移籍することが分かりました、今いるミカエル事務所からイェグディエル事務所に移籍すると…現場のマークさん! フォゲットさんにインタビュー出来ますか!? 』
何だよ…移籍なにも本人の勝手じゃねーか、周りが騒ぎたてるようなことじゃねーだろ! 俺はテレビを見ながら、マスメディアの騒ぎにイライラしていた。
『マークです! 今、出てきました、フォゲットさん、今の心境と移籍先は、デーモスクラトスですが、何か一言ありませんか!』
あるわけねぇだろ、バーカと思いつつ、テレビ越しだが、彼女の美しさに見惚れている自分がいた、あのアムールが俺の彼女だなんて、誰も思わないだろう。
それは、さて置き報道陣を前に彼女は、毅然と言い放った。
『話すことですか? 特に変化なんてないし、私は歌を届ける事に国や国籍も関係ないと思います、私は私です、貴方方も報道でお疲れでしょう、失礼します』
それでも食い下がる報道陣共は、アムールが車に乗り、出庫するまで続いた、いやー、有名人も大変だな。
俺も…ユースティティアとの繋がりが暴露されるんだろうか…アザレアによれば、そういった報道局、マスメディアに圧力をかけてるそうだが…
―――――まっ!俺からすれば暴露されようが、最終的に組織を解体すれば、いいもんで復讐が果たす時まで、止まってなんかいられないよ。
テレビを消し、リビングルームを出るとブレンダンと鉢合わせになった。
何だか…慌ただしいな。
「スカーフェイス、お前に客人が来てる」
「俺に? 」
もしかして、アムールが…んなわけないか。
「誰だい、その人は? 」
顔に眉間のシワを寄せながら、ブレンダンは言った。
「ユースティティアの者だ、代紋付けてるから、間違いない、お前に用事があるそうだ」
ユースティティアがか、何の用事だ、もしかして、アザレアに何かあったのか!? それとも、ロジャーが何かを仕掛けて来たのか! 様々な予想を頭に思い、ジムの外に車が停めてあった、そして人も車の側で立っている。
―――――見覚えのある顔だ、あれは…
「マイク・ジョーンズか」
「お久しぶりです、ガーベラ・バルベラ様」
「実は、お話があって…急遽参った次第です」
何か、切羽詰まった様子で、俺に会いに来た感じかな。
「お話は車の中で…空港までご足労願いたい」
「何だよ、急だな!」
「お願い致します」
渋々、後部座席に一緒に乗り、運転手が車を出すと、マイクは「アザレア様の事です、何者から、銃撃され意識があるようですが、重症です」
その話を聞いて、俺の心配事が当たり、そして俺の脳裏に過るのはロジャー・セラノだ!
あの男が裏から、差し金を引いて妹を…
俺の様子に察したのか、マイクは言う。
「貴方の想像通り、ロジャーの差し金でしょう、しかし、下手人が逮捕されても、鉄砲玉にされてるだけです、ロジャーには痛くも痒くないでしょう」
じゃあ、どうする? と聞くと「何も出来ないのです、このままじゃ…しかし、ながら、ある人物と今、待ち合わせしています、空港からデーモスクラトスまで行ってもらいます」
話が見えん、ある人物とは、そいつと会って何をするんだ。
――――30分後
「見えました、空港です、ガーベラ様、行けば分かります、貴方が知っている人物がそこで待っています、ロビーに行って下さい、私達は、ここまでです、どうかご無事に」
※※※
ご無事ねぇ、穏やかじゃないな、それはともかく、空港のロビーたって、広いぞ、あの中に知っている人物がいるのか…そう思った矢先に、後ろから肩を掴まれる。
何だと思い、振り返ると!
「ダニエル・J・コーベット! 何でアンタが!? 」
私服姿の…ワイシャツにジーンズ姿のあの鋭い目つきの男が立っていた。
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