10th mission 秘密、言っちゃった。

 ──まさか、こんな所にあったとは……。禁断の石プロイビート・ストーン














 俺はすぐにアリナの首にかけられていた石を無理やり取った。そして、ネックレスになっているそれを自分のズボンのポケットへ突っ込むようにして入れた。


 その後、何事もなかったかのように再び両手でハンドルを握って運転を再開。真っ直ぐ道を走り続ける。




 すると、そんな俺の突然の態度の豹変に驚いて口を開けてボーッとした様子で隣に座る俺の事を見ていたアリナが、我を取り戻して言ってきた。



「……どっどうしたの? 突然……。え? それってそんなに大切なものだった?」


 彼女は、まだ信じられないと言った様子で驚きを隠せないままの固まった感じで恐る恐ると言った感じに話しかけてくる。



 俺は、そんな彼女の動揺している姿を見てドキッとした。……ここでパパから言われた言葉を思い出す。










 ──“他の人には言うな。”……あの人は確かにそう言っていた。まずい。怪しまれる前に誤魔化さないと。




 俺はそう思って慌てて態度を変えてアリナに告げた。



「あぁ、いや実はさ……。その……えーっと、死んだ両親の形見でさ。だから、あんまりその触れて欲しくなかったというか……」




 ──俺としては完璧な嘘だ。こう言えば、この女も流石にこれ以上突っかかってはこれまい。人間というのは、自分の友達が突然、親や親族について話してくると何となく距離を置きたくなるものだ。うん。きっと今回もうまく行ったはずだ。



 そう思って自分にガッツポーズをして讃えていると、隣からアリナの少し悲しい声が聞こえてくる。



「……ふーん。そうなの。それは辛いわね……。ご両親は、いつ頃亡くなったの?」



 彼女の問いかけに俺は頭の中で答えを作りながら答えた。



「……えーっと、20年前かな〜? 確か」



 ──当然嘘である。父さんと母さんは今でも現実世界で元気にやっているはずだ。ごめんなさい。こんな嘘ついて……。



 俺が喋りながら天に向かって謝っていると、隣に座るアリナが鼻声で涙も入り混じった感じの声で言ってきた。




「そうなのねぇ〜! それはそれは大変だったわね……」


 俺は、彼女がわんわん泣く姿を見て不思議に思った。


 ──案外、情に脆い良いやつなのかも?





 しかし、そう思いかけた時、アリナが涙をピタッと止めて俺に尋ねてきた。



「……所で、じゃあどうしてそんな大事な親の形見を肌身離さずではなく、さっきのあの意味分かんない狭くて暗い場所に置いといてたの?」


 ──ドキッと俺の心臓が強く跳ねたのが分かった。やっ、やばい……。その事を完全に忘れてた。




 俺が、ドギマギしているとアリナの顔がさっきよりも近くなる。ジーっと見つめてきながら彼女は言ってきた。



「……ねぇ、どうして?」



 彼女は、ジーっと俺の目を見つめてきながらどんどん詰め寄って来る。その余りに恐ろしい詰め寄り方に俺は、いつの間にか車を止めて、彼女の方を向いていた。





「……えーっと、その…………」




 一生懸命頭の中で言い訳を考えたりもしたが俺の脳内には、特に何かが浮かんできたりはしなかった。






 ――やっやばいっ!? 良い言葉が出てこない……。




 こういう時に就活に失敗してしまったほどの俺のコミュ障っぷりが発動しちまう。……やっ、やばい。







 そして、そうやって色々言い訳を考えていると更にアリナは、俺の耳元に潜り込むようにして顔を近づて来て、そして囁くように言った。







「……お・し・え・て?」







 ――次の瞬間、俺の口が勝手に動いてしまったのだった……。












 あぁ……エルビラさん。俺、任務開始数十分でルールを破ってしまいました……。





















 ――To be continued.

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