第34話 スライムの強さはよく分からない

「【魔法鞄マジックバック】ってなんですか?」


 そうか…金城さんは探索者を始めたばかり。魔法鞄マジックバックを知らなくても無理はない。


「【魔法鞄マジックバック】っていうのは鞄型の魔道具だよ。バックの中が異空間に繋がっていて見た目からは考えられない量を収納する事が出来る。」


 これさえあれば採取クエストでも稼げるし、モンスターの素材も持ち帰り放題の優れた代物だ。


「それってどこに売ってあるんですか?」


「う〜ん教えておいて何だけど、俺たちに買える様な物じゃないよ。」


 魔法鞄はとても高額で俺たちのような稼ぎの少ない探索者には縁がない。

 俺はアイコンタクトで説明をより詳しい隆二投げた。


「はぁ…相場で2億だ。」


「2億って…そこまで稼げる人って少ないんじゃないですか?そんなに高いなら持ってる人なんていないんじゃ…」


「それがそうでもねえんだよ。特に2階層以降の探索者はほぼ持ってるからな。」


 意味がわからないといった顔をしている。

 それもその筈、2億という数字はサラリーマンの生涯年収だ。どんなに便利でもそこまで金を払える人物はごく僅かだろう。


「ははは、言っとくけど買ってないからな。【魔法鞄マジックバック】はダンジョンドロップのアイテムなんだよ。売れば金になるがその便利さゆえに自身で使う探索者の方が多い。一度物を入れてしまうと所有者が確定されてしまい、手放すと灰になる。新品以外売れないから市場に中々出回らず、相場がエグいくらい高くなってるんだ。」


 2階層以降の探索者が持ってるってことは【魔法鞄マジックバック】が出現するのは2階層以降だという事が判明している。

 1階層にいた時は縁のない話だったが、2階層に行ける今、魔法鞄マジックバックの入手を探すのもいいかもしれない。


「貴重なお話をありがとうございます。」


 金城さんがお礼を言っている中、預かっていた依頼書を眺める。


 さてとどのクエストを受けよう。採取はないとして……


「金城さんはどれがいい?」


「えっと…出来ればレッドスライムがいいです。他のはちょっと怖そうなので……」


 あ〜金城さんならそういうよな。確かに他に魔獣よりかは安全そうだけど……スライムって意外と強いんだよな。特に俺はスライムに有効打持ってないし……


 粘膜の体を持っているスライムに大して直接攻撃は通用しない。魔力を持たない草介にとってスライムは天敵なのである。


「俺、スライム相手だと何も出来ないけど大丈夫?」


 出来ることといえば【範囲麻痺パラライズエリア】くらいか。毒なんて与えたら毒のスライムが出来上がりそうだし…


「す…すみません!私、自分のことばっかりで草介さんのこと何も考えてなくて……」


「別に…気にしないでいいよ。」


 気にしなくていいと言われても、彼女の性格上気にしてしまう。二人の間に何だか気まずい雰囲気が流れる。


「はぁ…しゃあねえなぁ。クエストは1人につき1つ受ける事ができる。お前らで1つずつ受ければいいだろ。」


 それは妙案だ。危険度は上がるがどうせスライム戦で俺は役立たない。だったら2つクエストを受けようが関係ない。


「金城さんはそれでもいい?」


「はい。大丈夫です。」


 彼女の許可も得られた事だし…俺が選びクエストは……これだ!!


 俺はサラマンドラ10体の討伐依頼書を隆二へ渡す。




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