あとがき(でもあり、まえがき)

 ※あとがきですが、本文を書き始める前に書いています。内容プロットの重要な部分を抽出して書いているため、つまり物語の本体はここですよ!ということです。

 完成品次第では、このあとがきは処分するつもりでいましたが、当初の予定通り(過程は変わりましたけど)にお話が上手く運んだので、あとがきとして公開することにしました。

 ごちゃごちゃとしたプロットを見て迷走してきたら、『ここ』を見ればいい……、物語の心臓はここにある――ってわけですね。



 過去作の「このマッドサイエンティストめっ!!」のリメイクであり、「食人鬼オンライン」のリベンジであり、「世界が変わる、俺たちが変える」の要素を加えてみた新作長編、どうでしたか?


 作者の中では大きな課題であった未完作品が一つの完結を迎えたので、やっとスッキリすることができた、というのが感想です。

 当時考えていた予定とはかなり違いますけど、あの世界観で発展していきそうなことはある程度は書けたのではないかと思います。


 最近の長編では『ギミック』に凝っていたりしますが……、たとえば「向けた好意の強さが戦闘力になる」だったり、「色を交えたしりとり」であったり、「視界が奪われた中で、外から見ているパートナーの声だけを聞いて暗闇を進む」だったり、「悪意を持つと弱体化する」だったりなど。


 そして今回では「入れ替わり」と「分身」をメインに扱っています。


 入れ替わりと分身。

 主人公が見ている視点は一つに限ります。入れ替わった先の出来事を知っていても、元の自分の体(別の魂が入っている)の視点は分からないわけで。

 分身も同じく。


 別行動をしている分身が、今どこでなにをしているのか分からないわけです。知らないところにいて知らないことをしている分身(もしくは入れ替わった相手)が、もしも『偉業』を達成していて――、元に戻った時、その恩恵がなにもしていない自分に降りてきたとしたら? 受け入れて美味い蜜を吸うのか、それとも否定をして「自分ではない」と周りを説得するのか……。


 今回、主人公にはどちらもさせず、その恩恵に見合う功績を自分で作り上げる方へ答えを偏らせました。

 なにも成していない自分が、知らない間に達成していた偉業の恩恵を受けるわけにはいかないけど、否定するのもそれはそれで悪いことだ……――ならば。


 偉業に追いつく偉業を達成すればいい。


 大きなものを一つ、どかんと達成するのではなく、小さな感謝を膨大に積み上げることで、降りてきた恩恵の高さに合わせるように。


 結果、主人公は大好きな子どころか、二つの世界を(できる限りの範囲で)救ってしまいましたが、こうなってくると元からあった恩恵は越えてしまっていますね。


 ただ、主人公からすればやっと追いついたという感覚なので、さらに恩恵を貰ってしまえば過剰になってしまう、という考えです。


 なので成した分の恩恵を受け取り続ける限り、彼はなにかを成し遂げ続けて釣り合わせる人生を進むことになるでしょう……。


 まあ、こうして後ろから迫られなくとも、人間、生きていれば大小ともかく課題が毎日あるわけですからね――主人公の、「恩恵に追われている」のは、そう意識しているだけで、我々が毎日、自覚なく感じていることかもしれません。


 自分で課題を作り、達成する――きっとみな、無自覚にしていることだと思います。



 …了

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