第32話 たぶんお祭りは財布の紐が一番緩くなる②

「ゼンちゃん!ゼンちゃん!」


 ⦅おら、もうダメかもしんねぇ⦆


 さっきの精霊魔法を無効化できたかと思っていたが、鑑定眼の結果内部から腐食が始まっていた。


 腐食のせいでゼンちゃんのHPは半分以上削られ、今なお減り続けている。


「これ最後のハイポーションなんとか耐えて」


 一時的にHPが回復するがまた減り始める。腐食そのものを止めない限り回復が意味をなさない。


 今が仲間の為にチートを使う時なのだろう。ガイドブックにあった一文を思い出しゼンちゃんにナナスキルを使う覚悟を決める。


 ”アイテム作製 Cat0” 

 ”アイテムを作る事ができる。”


 まずは万能薬。全ての状態異常を回復させ、更に全ての状態異常耐性を獲得できるミシクル級のアイテムだ。

 制作しすぐにゼンちゃんに振りかける。


「どう?楽になった?」


 ⦅なんでかわっかんねぇけんど、たぶんでーじょーぶだ⦆


 あとは完全回復薬を作りだし振りかける。

 内部も体力もこれで元通りだ


 ⦅ひゃーあぶなかったーーーおら死ぬかと思ったぞ。まさか助かるなんて、おめぇやっぱりすげーな⦆


「このことは秘密にして欲しいの」


 ⦅そんくれーいいけんどよ。しっかし、あのじょーちゃんもやべーなぁ!⦆


「確かに精霊魔法をあの若さで操るんだから」


 ⦅おめぇも十分わけーけどな!⦆


 本来ならあんな魔法を使っていたら目を付けられてしまう。それなのに躊躇もなく使っていたのでただの子供ではないのは確かだった。


(見た目に騙されたけど、次あったら鑑定眼で調べよう)


 ゼンちゃんが元に戻ってから暫くして、ケーナの逃げ足についてこれなかった3人組ブハッサとボックスとベロアがようやく追いつく。


「ようやく、見つけましたぞ。ずいぶん足が速いですな」


「この間まで軍人だったのにだらしないな、まったく」


「そう申されましても、あとの2人もこの通りで……」


 ボックス、ベロアはまだ若いと言うのに息切れし過ぎて喋れない様子だった。


 そもそも、なぜこんな事をしているかと言うと復興にかかる資金を稼ぐためである。

 町全体は無理なのは分かるのだが、せめて焼かれてしまった孤児院を復興したいと思っていた。



 それはコピーエーナの記憶にある町に溢れかえる孤児達を少しでも助けたいそんな思いからだ。おまけにブハッサ達も関係者なので罪滅ぼしの意味もある。


 最初に薬草からポーションを作ることでの金策を思いついたが、その薬草を取り過ぎると二度と取れなくなる可能性があるとゼンちゃんから忠告を受けた。


 そのためポーションをコピーによる量産へと切り替えたのだが、ギルドの買い取れる量に上限があったようでポーションの在庫を抱える始末となった。


 金貨のコピーも考えたのだが、通貨の複製をしてしまうと金貨の価値を変えてしまう恐れがあったので封印している。


 それで始めたのがこちらの”銀玉割り”

 殴られ屋にヒントを得てゼンちゃんに協力してもらい始めて見たのだが、初っ端からいかにも猛者っぽい男が挑戦してしまって割れないことを証明してしまったので後に続く人がでなくなってしまったのだ。


 最後に挑戦した女の子は予想外の魔法を使い滅ぼそうとするし……。


 それで手持ちには302枚の金貨。


「この倍は欲しいよね」


「それでしたらケーナ様、オオイ・マキニド共和国に行かれるのはどうでしょうか?」


 ブハッサからの提案だった。


「なんで?」


「国の中心部、ナワニの町はギャンブルの町としても有名でして一夜で1枚の金貨を10000倍にすることもできると言われています」


「そんなにはいらないよ」


「だとしても、2倍程度ならここでちまちま稼ぐより速いかも知れません」


「んーギャンブルはな……」


「それで助かる子供達もたくさんいるかと思われます」


 ボックスやベロアの意見も聞いてみると、少しづつ賭ければ問題ないと言っていたので⦅いっちょやってみっか!⦆と言うことになった。


 お祭りは明日迄続くので、出発は明後日と言うことになった。

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