桜の木にハルの家族の背丈も刻まれていて、それにより過去との決別を果たすという描写がお見事です。ハル・ナツ以外の背丈を刻むという発想はありませんでした。
そのまますれ違いになるのかと思いきや、特急の乗降時間という限られた時間で再会を果たし、短い会話を交わしてお守りと、思い出の詰まったおにぎりをもらうというお話にほっこりしました。
ハルのおかげで強くなれたナツの活躍を願ってやみません。
作者からの返信
お読みいただき有難うございました。
ナツにとってのハルは、母親や姉のような自身の庇護者だったということなので、桜に刻まれたハルとハルの子供の背比べの傷を見ることでナツがそれに改めて気づき、過去に一区切りを付けるという話にさせていただきました。
気付いただけで終わってもいいかと思いましたが、現在のハルとその子にナツを会わせることで、次代に繋げる意味を持たせるようにしたいと考え、ああいったエピローグとなりました。岐阜駅に特急ひだが停車する2分間での短い邂逅の方が長々思い出話をするよりも良かったのではないかと思っています。その点を誉めていただけたのも嬉しく感じました。
水涸木犀様、繰り返しとなりますが、お読みいただき有難うございました。
こんばんは。企画から参りました薮坂です。作品読ませていただきました。
前編を読んで抱いた感想は、ノスタルジックで初めて読むのに懐かしさを感じる話だなぁというものでした。地名が出ているのもリアリティがあって、遠い昔に訪れた飛騨地方を思い起こさせてくれました。
またこのお話にマッチした落ち着いた筆致で、端々にナツの優しさのようなものが溢れていて、とても読みやすい。そんな印象を受けました。
ヒューストンって、ナツは宇宙飛行士だったんですね。しかも火星のテラフォーミングにいく飛行士だなんて、優秀なんですね。落ち着いた胸の内はやはりいつも冷静さを求められる宇宙飛行士ならではなのでしょうか。思わず応援したくなるキャラクタです。
ハルのキャラクタもとてもカッコよくて豪快で、ナツとの対比が素晴らしいと思います。最終的にハルとナツは再会できて、さらには旦那さんと息子まで会うことができて、やっぱりこのお話は「優しい」んだなぁと爽やかな読後感に包まれました。
落ち着いた筆致に溢れる優しい物語、お見事でした!
作者からの返信
ゆあん様の元々のプロットからは大きく逸脱しない、成長した男の子が幼少期の思い出を確かめながら桜まで辿り着き、儚く消えた思い出を噛みしめるお話にしようと思い書き出しました。
前編、中編辺りまではそうした書き方をしているため、懐かしさを感じて頂けたのは嬉しいです。
後編も途中までは現在のハルには会えずに、過去のハルとの思い出を昇華させたナツが、これから向かう火星のテラフォーミングの決意を強くする、という終わり方にしようと思っていましたが、回想で登場させたハルのキャラクターが作者の私にとって魅力的だったので、今のハルに会った上で次代に繋げる含みを持たせた結末にしようと変更した結果、こうしたお話になりました。
全編通して「優しい物語」と言って戴けたのは嬉しいことです。最近書いた他の作品はあまり正面からこうした「人の思いや善意」を取り上げていなかったものですから。
優しい物語と感じていただけた理由の一つに主人公ナツの一人称視点での語り口もあるかと思いますが、私の中でナツの年齢は38歳くらいと設定していました。ある程度社会的地位のある38歳男性の一人称が「僕」というのは幼過ぎるのではないかと思い「私」で書いて見ましたが、前編や中編が現地調査しているような硬い印象になったため「僕」で書き直しました。
「私」から「僕」に変えたことで幼少期の回想との繋がりもよくなったと思いましたし、全体的に柔らかい印象になったかなと自画自賛しております。
ただ、「僕」に変えたことで、ナツが火星に行く宇宙飛行士という部分の説得力が感じづらくなり、唐突に感じた方もおられるのではないか、とは思っています。
薮坂様、企画参加作品の中でも長い部類に入る本作を最後まで読んでくださった上、丁寧な感想と★もいただき、有難うございました。
ハルのキャラクターが豪快さと優しさがあっていいですね。きっとおっかなくも良いお母さんなのでしょう笑。
丁寧に描いてあって、主人公といっしょに故郷を歩いているような感覚になりました。弱々しく見えた少年が夢を叶え(しかも宇宙飛行士とは!)、誰かの夢の対象になっていくのは素晴らしいですね。全体が優しく、とても雰囲気の良い作品だなと思いました。
作者からの返信
お読みいただき感想も有難うございます。
ハルは、小学校の時の繊細さと大らかさと豪快さを大人になっても持ち続けている女性だと思います。
元々大人になったハルと主人公ナツを会わせるつもりは書き出した当初は無く、懐かしい場所が変わり、幼なじみのハルにも結局会えず、だからこそ幼なじみの名と同じ「春」を行先の場所(火星)に作る決意を主人公ナツが固める、という作品にしようと思っていました。
ですが、幼少期のハルとナツの交流を描いているうちに私が大人になったハルに会いたくなったので、後編を書いている途中で構想を少し変えてエピローグを付け足しました。
書いて見ると、水臭い幼なじみに「水臭いだろー!」と叫びながら岐阜駅のホームを走るアグレッシブな面が目立ちましたけどね。
それでも、書いて良かったと思います。
竹神チエ様、丁寧に読んでいただき、ありがとうございました。
コメント失礼いたします。
あらすじはもちろん分かっているはずなのに、主人公が何者なのか、ハルとの関係は最終的にどうなるのか……と、ぐいぐいと興味を引かれ、気がつくと物語に入り込んでいました。
失われた懐かしい場所、ハルの結婚、と、前向きながらも喪失感の入り混じった気分を味わっていたところに、エピローグの彼女の「水臭いだろ」というセリフが、物語の印象を鮮やかに塗り替えてくれる。構成の妙だと思います。最高の読後感でした。
ハルの息子さんの名前も、とても上手、良いなあと思いました。
素敵なお話をありがとうございました!
作者からの返信
お読みいただいた上、丁寧な感想もありがとうございます。
主人公が火星に旅立ち定住して火星の気候を変えるミッションに従事する男、というのは最初から決めていたのですが、当初はエピローグはなく、目的地も明記せず、懐かしい場所が変わり、幼なじみのハルにも結局会えず、だからこそ幼なじみの名と同じ「春」を行先の場所に作る決意を固める、という作品にしようと思っていました。
ですから前編、中編では懐かしい場所を巡る中で、これから赴く場所を示唆する記述を多めに入れようとして長くなりました。
提示されたプロット自体は後編だけで書いたようなものですが、ここで過去のハルとのやりとりを描写している中で、私自身も現在のハルに会いたくなりまして、それでエピローグを書きました。
この作品のハルは、自分に会わずに火星に行こうとするナツに対して絶対に第一声は「水臭いだろー!」という大声を出す女性だろうと。岐阜駅にひだ20号が停車するのは僅か2分間ですが、そのわずかな時間の中で最大限できそうな遣り取りを描けたのは良かったです。
そしてハルに勇気づけられたナツが、実りのアキに繋げる、という部分もエピローグと共に思いついた部分でしたが、なんとかそれっぽく表現出来たようで、嬉しいです。
霞(@tera1012)様、お読みいただきありがとうございました。
編集済
コメント失礼します。
とても引き込まれました。故郷を歩く懐かしさ、寂しさ。そうしたものを引き出す描写がとても巧みだと感じました。昔は大きいと思っていたものが大人になってみると普通だったとか、取り壊された後の空き地が妙に小さいとか、「あるある!」と頷きながら読みました。
ハルのお母さんの前ではどこか子供らしく見えた主人公が、子供の前ではしっかり「尊敬できる大人」になっていて、これにはジンとしてしまいました。
一点、かなり細かい指摘になるのですが、物語開始すぐの文章「これまで僕は数年アメリカのヒューストンに居たけれど、〜だったけど〜」と、「けど」が重なっているのが気になってしまいました。物語の導入部だっただけに没入の速度に影響してしまい、もったいなく感じました。ご参考までに。
素晴らしい物語をありがとうございました。
作者からの返信
ふづき詩織様、ご指摘ありがとうございます。
なるほど、読んでいて自分でもくどいと感じることがあったのですが、理由がわかりました。
一人称で書く時は、どうにも私自身の普段の喋り言葉の癖が出てしまうので、ご指摘の点はご指摘いただかないと気づきませんでした。
早速修正させていただきました。ありがとうございます。
そして素晴らしい感想をありがとうございました。
小さい頃、一時だけ過ごした町を数十年ぶりに訪ねている雰囲気を感じ取っていただけたのは嬉しいです。
全4部分のこの作品で、前編と中編とエピローグはこの自主企画のプロット的には必要が無い部分ですが、自分の記憶を確認しながら歩く雰囲気を感じてもらいたいというのと、数十年会っていない友人の家族という微妙な距離感の人と話す時の変な気まずさを書くというのが私のテーマの一つでしたので。
ふづき様ほどの文章表現力はありませんが、いただいたご指摘をありがたく受け止めつつ私なりに今後もいろいろと書いて行きたいと思っております。
ふづき詩織様、お読みいただきありがとうございました。
企画からきました。
現ドラですね。宇宙飛行士ということで咄嗟にSFかと思いましたが、岐阜とか名古屋とかひだ20号とかえらい具体的に名前が出てきたのでびっくりしました。
背くらべのシーンが丁寧だなと思いました。
作者からの返信
飛騨高山市の中心から離れた駅の近くを主人公が小学校時代を過ごした町としてイメージして書きました。
当初は主人公が火星に行くというのは明記しないで終わろうと思っていましたが、あのエピローグの形を思いついたので後編の最後にはっきり書きました。
背比べのところは、最初はもう少しふわっとしていたのですが、主人公がイジリの対象になりつつある状況というのは書いた方がハルと出会ったことがより鮮明になるかと考えてああしました。植木鉢のかけらで印をつけたいがために倉庫が近くにあるというロケーションにしています。
書いているうちにだいぶ長くなりましたが最後までお読みいただきありがとうございました。
企画から来ました。
情景描写や最後の粋な再会まで、物語が流れるように入ってきて圧倒され、心残りを…と思いきや再会し、水無神社のお守りとおにぎりに更なる夢のラストに、読後、とても温かい気持ちを頂きました。
素敵な物語をありがとうございます!
作者からの返信
鈴ノ木 鈴ノ子様、お読みいただきありがとうございます。
水無神社のお守り、水に恵まれ豊作になるご利益ということでしたので、「これだ!」と思って出しました。火星に春を作るには、絶対に多量の水が必要ですからね。御歳大神の神通力に期待です。
ゆあん様の提示した筋のとおりであれば、後編で枝垂れ桜を後にしたところで終で良かったのですが、どうも大人になったハルが、出さなきゃ許さん、と作者に語り掛けたようで、ああいったエピローグにしました。
本来作品テーマがナツの決意ということであれば、蛇足以外の何者でもありませんが、やっぱり次代に繋ぐという部分も示唆しておきたかったですし、カッコ良く心残りはないぜってナツが火星に行ってしまうのはちょっと違うな、と思いましてあんな締めとなりました。
しかし、この企画は同じ筋なのに本当に皆さん色々な話を展開されるので、凄いなと感心しています。
鈴の木様の作品も、大使館という特殊な場所で出会った男女の、時代に引き裂かれた悲恋、そして孫の代で成就するっていうロマンあふれるものでしたし、企画名に恥じない企画だな~と思いました。
うわぁ、ハルさんの行動力、凄い⤴⤴
ナツくんの乗る新幹線を予想して岐阜駅で待っていてくれたんですね。
しかも旦那さんと息子さんも一緒に!
こういうの嬉しいですよね。
ハルさんにとってナツくんは自慢の幼馴染なんですね。
息子さんが憧れるくらいですもの。
あのまま会えないままかとちょっと残念だったけど、ちゃんと会えて良かった!
短い時間だったけど、中身の濃い再会でしたね。
ナツくんが今からやろうとしていること、アキくんが引き継いでくれるといいですね。
前回の章で終わりかと思いましたが、この章に続いていて良かったです。
感動が二倍になりました。
桁とくん様、ありがとうございます✨✨
余談ですが、私の孫も宇宙飛行士になりたいと言っています!
男の子にとって憧れなんでしょうね。
作者からの返信
何か、私の書くヒロインって皆元気な感じになってしまうんですよね。ハルもそうなりましたね。強いお母さんになってるといいんですけど。
本当だったら、エピローグを書くのなら、数十年後の火星の生活モジュールで、ハルの息子か娘のアキにナツが巡り合うという方がそれっぽいと思ったんですけど、ハルが出せ出せとささやいたのです。
彼女は黙って行っこうとするナツに「水臭いぞー!」とどうしても叫びたかったのでしょう。そして、自分も幸せにやってるぞ、と伝えたかったのでしょう。
男の子は、やっぱり宇宙に憧れるものです。
お孫さん、お墓参りに来られた長男さんのお子さんの方でしょうか?
頑張れー、とエールを送ります。
ハルが思った以上にエネルギッシュですね。
それにしても宇宙飛行士とはすごい。ナツのそれまでの頑張りと、これからの使命の重さ、それを支えてくれる大切な思い出。色々と想像させられるお話でした。
指摘としてお一つだけ。
「アキくん、僕に憧れてるって、アキくんも宇宙飛行士になりたいのかい?」
このセリフが2回繰り返されているのが気になりました。1回目の問いにもしっかりと頷き返してますので、2回目は聞き方を変えたほうが自然かなと思います。よかったらご参考にされてください。
作者からの返信
lager様、ご指摘頂いた部分、早速1か所削除させていただきました。
セリフに対するリアクションで話を展開させていく部分でしたけど、まさか全く同じセリフを書いているとは思いませんでした。1か所は削除しても問題なかったので、削除しました。
確認しながら書いているつもりだったんですけど、やっちまうものです。ご指摘ありがとうございます。
今回、初めてゆあん様の「筆致は物語を超えるか」に参加させていただいたのですが、自分では多分この筋は思いつかなかったと思うので、久々の体験でした。
本来はナツが火星に行く宇宙飛行士ということは文中に明記しないで匂わせるだけにしておくつもりで書いていたのですけど、明記しないとオチがつかない感じになってしまったので書かせていただきました。
現実でも実現できるかどうかはわかりませんが、2030年にNASAが火星有人飛行を目標にしているようです。
宇宙は何だかんだでやっぱり男の子のハートを掴んで離さない、そんなところです。
lager様、お読みいただきありがとうございました。
企画から参りました。
ハルの豪傑な感じ、かなり好きです! 新しい家庭でもきっと強くて優しいお母さんなのだろうな、と思いました。
しかし狭き門の宇宙飛行士になったナツはすごい。そりゃあ、アキも憧れますよね。宇宙飛行士って、フィジカル面でも強くないとダメだけれど、それ以上に勉強ができることはめちゃくちゃ大事だと思うので、賢かったナツにはうってつけだったのかも。
なんだか未来に希望を抱けるような、素敵なお話をありがとうございます!
作者からの返信
感想ありがとうございます。
かなり実生活の方で激動になってしまい、カクヨムにアクセス殆どできなかったので、返信が遅れたことを申し訳なく思います。
人は成長のスピードが一人一人違っているので、宇宙飛行士になる人も、小学生の頃はフィジカル面で他の子よりも劣っていることもあるだろうと考えたのと、得てして女子の方が小さい頃の身体の成長は早いので、ナツを庇ってくれるハルはしっかりしている女の子だろうということで書かせていただきました。
企画終了時点で全ての作品を読んだ訳ではないですが、他の参加作品は文章の表現力も豊かで巧みな作品が多く、深いな~と感じていました。参加して良かったと思っています。
まんごーぷりん(旧:まご)様、お読みいただき有難うございました。