エピローグ

私は仕事を片付けた後、バーに帰った。


「ただいま帰りました」


「おう。帰ったか……うおっ!?」


辻村は私を見たとたん驚いたように声を上げた。


それもそうだろう。


今の私は敵を切って降り注いだ返り血で真っ赤に染まっていたのだから。


「お前……また派手にやったな」


「……すみません」


「まあ、任務を無事にこなせたならそれでいい」


「そう言ってもらえると助かります。……あの新人の人はどうしたんですか?」


「あいつはもう帰らせたよ。……そんなことより、シャワーを使っていいから汚れを落としてこい」


「はい」


私は再び隠し階段を使って下へ降り、そこにあるシャワー室を使った。


シャワーの水は体にこびりついた血を洗い流し、汚れを落としていった。


そうして血を完全に落とした後体を拭き、元の制服に着替える。


階段を上り、バーに戻った。


「それでは、また」


私はそう言って、バーを出ようとした時、辻村は言った。


「なあ。お前さんは後悔してないか?」


「……どういうことですか?」


首だけ動かし、辻村をみる。


辻村は言った。


「仲介役の俺が言うのもなんだが、まだ子どものお前さんがこんな血なまぐさい仕事をしていて大丈夫なのかと思ってな」


辻村の言葉に、私はフッ、と笑った。


「身寄りのない私にここ以外で生きていけると思いますか?」


そもそも私は美由紀を養わなければならないんだ。


血なまぐさいが稼ぎのいいこの仕事を辞める理由はない。


「まあ、そうだよな。悪いな、変なこと聞いて」


「いえ。お気遣いありがとうございます。……それでは、また」


私はそう言い残し、バーを出た。



▲▽▲


「美由紀。帰ったよ」


家に帰り、そう言ったが、美由紀から返事は帰ってこなかった。


「……?」


不思議に思い、美由紀の部屋に入る。


「ああ、なんだ。もう寝てたのか」


冷静に考えればそうだ。


今の時間、普通の人はもう寝ている。


顔を近づけると、美由紀は幸せそうに寝ていた。


そんな彼女に微笑んだ。


「ん……」


と、そこで美由紀は瞼を震わせ、目を開けた。


しまった。起こしてしまった。


「あれ?アズサさん、帰ってたんですね」


「ああ、うん。今さっきね。……ごめんね。起こしちゃって」


謝る私に、美由紀はフフフ、と小さく笑った。


「構いませんよ。……あ。夕ご飯、テーブルの上に置いてますから。食べ終わったら洗うんで、また起こしてください」


「いいや、いいよ。皿洗いくらい私がするから。ゆっくり寝てて」


「えへへ。分かりました。……それじゃあ、おやすみなさい」


「うん。おやすみ」


美由紀は再び眠りにつく。


穏やかに寝息を立てる彼女の頭を、私は優しくなでた。


そうして、私は再び決意する。


彼女を養い育てるため、自分は誰であろうと殺すのだと。


――――――――――――――――――――


あとがき


ここまでお読み下さり、ありがとうございました。

今作はこれにて終了です。

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殺し屋少女、迎えた養女を養うために今宵も人を殺します 中村優作 @otqsk

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