8
会計を済ませた俺。何も悪いことはしていないのに、まるで犯罪者の気分で白石の元へ戻った。コンビニを出てもう1度白石を見ると、うん。やっぱり白石だった。
「……えっと、同じクラスの佐藤です」
「知ってるよ」
白石は帽子の中から俺をじっと見上げた。その外見はどこからどう見ても女の子にしか見えなかった。サラサラの髪に、長いまつ毛に、大きな目に、小さな口。思わず見惚れてしまうような美少女っぷりだった。
「あ、はあ、えっと」
「佐藤、今から時間ある?」
「いや、俺今バイトの昼休憩で、えっと、5時に終わるんだけど、えっと」
「……じゃあそこのカラオケの個室にいるから、バイト終わったら来て」
「……はい」
「じゃあ、バイトがんばって」
俺は謎に白石(女の子バージョン)に見送られて本屋へと戻った。
昼飯の味も、午後の仕事の内容も、よく覚えていない。頭の中ではずっと、クラスでの白石の姿と、さっき見た白石の姿がぐるぐると回っていた。
とにかく早く5時にならないかと時計ばかり見ていたら、奥寺さんが話しかけてきた。
「佐藤君、今日はデートなんでしょ」
「あはは、ち、違いますよ」
「へーえ」
奥寺さんが「若いねえ」とにやにやしながら俺の背中を小突く。俺はその感触だけで1週間は生きていけそうな気がした。
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