第141話 飛行艇修理
数多くある魔導具屋を端から順に覗いていくと、何軒か覗いたところでリラーナとイーザンの姿を見付けた。
扉を開けなかへと入ると、それに気付いたリラーナたちはこちらに振り向いた。
「ルーサ、ディノ、遅かったわね、なにしてたの?」
リラーナの傍まで近寄り謝る。
「ごめん、飛行艇の事故があって……」
「え!? 飛行艇!?」
「う、うん」
グイッと前のめりに聞かれ苦笑する。
「先程なにやら騒がしかったのはそれか……」
イーザンがディノに向かって聞いた。ディノは頷き先程までの顛末を話した。
「そんなことがあったなんて全然知らなかった! 私も見に行きたかったぁ!」
リラーナが物凄く悔しそうな顔でそう叫ぶ姿が予想通りというかなんというかで笑ってしまった。イーザンは特に表情は変わらないわね。
「イーザンは知ってたの?」
「いや、知りはしなかったが、なにやら聞きなれない物音と、外の騒がしさでなにかあったのだろうとは思っていた」
「さすがイーザンね」
「言ってよ!!」
私はひたすらイーザンに感心しているばかりだったが、リラーナは気付いていたなら教えて欲しかったと悔しがる。
「声を掛けたが気付かなかっただろう」
「え、声掛けてくれたの!?」
「あぁ」
「くぅぅ」
気付かなかったのなら仕方ないわよね。リラーナはイーザンを責めることも出来ずになんだか物凄い顔になっていた。それに笑いそうになってしまい必死に我慢。
「まだ砂浜のところにあるかしら? 私も見たい!」
「んー、すぐには動かせないだろうし、まだあるんじゃないか?」
そう言ってリラーナとイーザンと共に再び砂浜へと戻ったが、すでに飛行艇はそこにはなかった。
「え? ないじゃない! なんで!?」
そこに不時着したのだろうという痕跡だけはあるが、すでに跡形もなく飛行艇の姿はなかった。ディノも首を傾げている。
「おぉ? あんなデカいもの、そんな簡単に動かせるとは思えないんだがな。どこ行った?」
ディノはきょろっと周りを見回し、近くにいた街の人間らしき人に声を掛けた。
「なあ、ここに不時着していた飛行艇はどうなったんだ?」
「ん? あぁ、あの飛行艇なら獣人たちが移動させていったよ」
話を詳しく聞くと、どうやら数人の獣人たちが集まり、手際よくなにかを設置すると飛行艇はまるで重さを感じないかのごとく、軽々と移動していったそうだ。
「え、あんなデカいものを軽々と? なんか魔導具でも使ったのか?」
「さあねぇ。おそらくそうなんだろうが、獣人たちの屈強過ぎる身体付きを見ていたら力業で運んでいるようにも見えるからなんともな」
そう言いながら教えてくれたその人はアハハと笑った。
た、確かにあんなに屈強な獣人たちなら自力でも運べそうよね……。
「どこへ持って行ったんだ?」
「港だよ。港には今ちょうどガルヴィオの船があるからな。そこで修理をしてくれることになったようだ」
「へぇ」
教えてくれたその人にお礼を言い、港まで向かうことになった。
朝市のあとに見に行ったときよりも多くの獣人が船から降りていた。そしてガルヴィオの船の横には先程の飛行艇が。飛行艇に多くの獣人が群がり、なにやら話し込んでいる。
修理について話し合っているのだろうか、しきりに飛行艇の故障個所を指差し言葉を交わしているようだ。
「うーん、今近付くと睨まれそうだな。また明日見に来るか」
「そうだね……」
リラーナは「えぇ」と不満そうだが、今近付くと本当に怒られそう……。リラーナもそれは理解しているのか、渋々ながらも諦めていた。
翌日改めて港へと向かってみると、飛行艇はそのまま置かれたままだったが、昨日よりは周りにいる獣人の人数が少ない。
これなら大丈夫そうか、と飛行艇の傍まで寄ると、昨日見たよりもさらに大きさがよく分かる。
この世界ではこんな大きな乗り物を見たことがない。翼がまるで屋根のように感じる。飛行艇の本体部分には昨日出来たのであろう大きな傷があった。なにかで斬り裂かれたような傷が本体奥深くまで抉っている。
リラーナは興味津々で近付きあちこちじっくり眺めている。
「おい、お前らあまり近付くな」
ぎくりと振り向くとそこには昨日見掛けた銀色の髪の獣人がいた。その獣人は圧倒的に大きく見上げるほどの背に、屈強な身体付き。精悍な顔付きだが、しかし優し気で金色の綺麗な瞳をしていた。
その後ろ下の辺りで銀色のふさふさがチラチラ見えるのが気になる……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます