第9話 転生した少年の覚悟―戦国時代での新たな使命と決意

「ちーちー、ちーち」


 ん? なんだ?


 とてとてとてとて。2歳児が近寄ってきた。甥の幸若丸だ。2歳くらいって、かわいいと思わない大人がいるんだろうか? (中身だけ)


「ちーち、ちーち、だあこ、だあこ」


 ん? だっこしてほしいのか?


 よーしよーし、だっこくらいなんぼでもしてあげるよ。そして脇の下から手を回して、左手をお尻にそえてだっこする。


 12歳で筋肉痛になるんだろうか? 


 いや、中学の部活のときになったな。地獄の練習。そうやってしばらくだっこしていると、なんだか無性に悲しくなってきた。


 それと同時に怒りがこみ上げてくる。17歳で、いや、去年死んだから16歳か。16歳で未亡人って、なんだよそれ。


 そして1歳で父親がいなくなる。

 

 それが理解できるのは数年後なんだろうけど、可哀想すぎるだろ! もちろん現代でも病気や怪我で同じケースは起きるだろうけど、殺されてって……。

 

 しかも日常茶飯事で起きている。


 こんな目にはもう誰にもあってほしくない。少なくとも俺の周りでは絶対に! 俺が変えてやる!


 あれ? いやいや違う違う。モットーは「無双しなくても生き延びたい」でしょ? ……でも、力をつけなきゃ、やらなきゃやられる。


 それがこの世界の常識なんだ。とりあえずざっくりと周辺状況は把握できた。


 半島の南と湾をはさんで、東側はいまのところ友好勢力。その向こう側は敵。そして針尾島を経て北と北東は敵。

 

 まあ、飯盛城の松浦宗家、相神浦あいこうのうら松浦氏は母親の実家だから、佐世保中部は友好勢力。その南北が敵ってところかな。


 身を守るためには、抑止力のための武力だ! (ん、どっかで聞いた事あるぞ)そのためには富国強兵は必須優先事項だな。

 

 大村氏が南蛮船を呼ぶ前に横瀬に誘致して、焼き討ちを防ぎつつ抵抗勢力を調略・攻略していく。


 なるべくなら外交で、戦わずに友好勢力の範囲を広げていきたい。

 

 今で言う国連みたいな感じになればいいけど、前世のある特定の国みたいな戦国大名ばっかりだからなあ。きれい事では済まされないよね。

 

 前世も過去進行型でそうだったし。


 さて、南蛮船誘致だけど、ポルトガル人は何を根拠に港を選んでいたんだろう? 貿易とキリスト教がセットで、布教の許可は大前提。

 

 それより貿易品目や、他よりメリットのある品目を、殖産興業として扱う必要があるな……。


 いずれにしても、個人でやるには規模が大きすぎる。父上に相談だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る