最終話(後) シルフィン結婚する(下)
そして結婚式の準備も終わり、来週からは結婚式に向けての祝宴とお祭りの日々が始まる、という頃合いになった。
ドレスや宝飾品の準備はバッチリ(ほとんどの祝宴は帝宮で行われるので、それらは全部帝宮の控え室に置いてある)。私の方も念入りにエステされている(日焼け厳禁という事でここ一ヶ月は散歩も許されなかった)。やれやれ、ようやくここまで来たわね、という感じである。
その日、私は晩餐を終えてお部屋に戻り、翌日の社交の予定や届いた書類の確認などをしていたのだけど、ドアがノックされてレイメヤーが対応に出て行った。
戻ってきたレイメヤーが少し不可思議という顔で言った。
「殿下がお会いしたいと仰っていますが……」
はい? ヴィクリートが? さっき晩餐の席で会ったじゃないの。
その時は特に何も無い、普通の会話をしたと思うけども。それはお義父様お義母様の前ではあまりイチャイチャは出来ないけども。
あら、そういえば最近、結婚式の準備で忙しくてあんまりイチャイチャしていないわね。ヴィクリートもそう思って来てくれたのかしら?
私は私室付属のサロンを整えるようにミレニーに頼んで、少し身支度を整えてヴィクリートの待つ廊下へといそいそと向かった。
ヴィクリートの格好は青のシャツと紺のズボン。もう夏も終わる頃だけど、帝都はまだまだ暑いからね。私も半袖で薄手の桃色のドレスだ。
「お待たせ。ヴィクリート」
「ああ」
ヴィクリートは優しく微笑んだ。私がサロンに行こうとすると彼が止めた。
「外に行こう。夜ならば日焼けの心配はあるまい?」
ああ、そうね。と私は思ったのだが、レイメヤーが首を横に振った。
「なりません。日差しは無くとも虫がおります。虫刺されの痕でも付いたら大変です」
しかしヴィクリートはポケットから小さな石みたいな物を取り出した。
「虫除けの魔道具だ。私と一緒にいれば虫には刺されぬ。案ずるな」
流石は用意周到なヴィクリートだ。レイメヤーはため息を吐いて仕方無さそうに外出に同意した。
真っ暗な庭園に出る。流石に夜風はもう涼しい。やっぱり秋ね。すかさずレイメヤーがストールを羽織らせてくれた。レイメヤーは結婚式に向けて、私を完璧な花嫁にしてくれようと必死なのだ。その気持ちが嬉しいので、私はなるべくレイメヤーの言う事を聞くようにしている。
ヴィクリートが左手を伸ばしてきたので、右手で握り返す。すると、ヴィクリートは右手で宙に印を描いた。ポッと魔法の灯りが灯る。
「少しシルフィンと話したい。離れて付いてくるように」
ヴィクリートは従者達にそう命ずると、私の手を引いてゆっくりと夜の庭園を歩き出した。レイメヤー達は言いつけ通りに少し離れた、声の届かぬくらいの所を付いてくる。
ヴィクリートは弁が立つ方ではないし、仲の良い相手には口数が減るタイプだ。だから彼と散歩する時は無言の時間が長い。私ももう慣れたし、彼と並んで歩いていれば退屈など感じない。心地良い沈黙に包まれながら、魔術の明かりでボンヤリと浮かぶ花々の色を愛でる。
だけど、今日のヴィクリートは少し変ね。手を握る強さがいつもより僅かに強いからね。何か話が、しかも言い難い事があるんだろうね。
……言い難いか。そうね。例えば婚約破棄とかなら言い難いわね。無理だけど。でも、それに類する事。愛が冷めた、別の女性が好きになった、とかならやっぱり言い難いだろう。
まぁ、無いけどね。無い無い。ヴィクリートに限ってそれは無い。
じゃあ、なんだろうね。結婚式のお規模が大き過ぎる事が不満? でも、あれはもうどうにもならないし。それともやっぱり着飾りたく無いとか? それももう変更不可よね。うーん。
そんな事を考えていると、不意に、ヴィクリートが立ち止まった。あら? 私も立ち止まって彼を見上げる。
凛々しいヴィクリート。グレーの瞳は出会った時から変わらず優しい。でも暗がりなので彼の表情はよく分からない。
「……私で良いのか?」
はい? 私には彼が何を言い出したのかが全然分からなかった。
「何が?」
「結婚する相手が、私で良いのか?」
はー? 私は目を丸くしてしまう。一体何を言い出したのか。
「自信が無くなった。君は聖女としてどんどん凄くなる。社交でも政治でも、もう帝国には無くてはならぬ存在になっている。君を皇妃にという声も依然多い」
むむむ。私はだんだん自分の眉が逆立ってくるのを感じながら彼の言葉を聞く。
「私はどう考えても皇帝の器では無いが、君は皇妃になるべき人だとしか思えぬ。であれば、君はやはりメルバリードの妃になり、皇妃になるべきではないか」
私は内心の怒りで魔力が漏れ出すのを感じながら左手を握りしめていた。右手に力を入れたらヴィクリートの手を握り潰しちゃったかも知れない。
「スイシス様はメルバリードの愛妾となり、私が君の愛人になり、表の夫婦と裏の夫婦を使い分ければ良いのではないか。その方が君の才能が活かせるし、それに……」
ついに私の我慢は限界を超えた。
「もういい!」
私は叫ぶなりヴィクリートの左手をぐいっと引いた。怒りで魔力が勝手に身体強化をしてしまったらしく、大柄なヴィクリートがそれだけでよろけた。
「な、何を」
続けて私はこちらを向いたヴィクリートのお腹に頭突きをした、えいやっと。鳩尾に入ったらしくヴィクリートが「うっ!」とうめく。私はその隙に彼に思い切り体当たりして、彼を花壇の中に押し倒した。
「うわ!」
軍人で格闘術の心得もあるヴィクリートがこうも容易に転ばされるわけないから、酔っ払ってでもいたのかもしれない。そういえばいつもよりも饒舌だったものね。
そんな事はどうでもいい。私はヴィクリートの上に馬乗りになり、その襟首を引っ掴んでグググっと顔を近付けた。
「バカなこと言わないで!」
そして私は彼の唇にグイッと口付けをした。出会った時に門前で何度もしたんだもの。今更恥ずかしくないし。
あの時はカサカサだった唇は、柔らかくてやっぱり少しお酒の匂いがした。私はぎゅっと押し付けてから唇を離すと、驚きに目を見張るヴィクリートを間近から睨み付けた。
「貴方がそんな事を言うのなら、考えがあります!」
私は叫んだ。
「聖女が皇妃にならなきゃいけないのなら、いっそ、私が皇帝になります!」
「は?」
ヴィクリートが愕然とする。何が起きたかと駆けつけた従者達も目を丸くしている。しかし私は構わず堂々と宣言した。
「私が皇帝になったら、配偶者が必要です! その皇配をヴィクリートとします! これで良いのでしょう?」
ヴィクリートの言った事を愛妾愛人無く実現出来る素晴らしい計画だ。そう。聖女は事実上の初代皇帝だったのだ。なら皇妃でなく皇帝になるのが自然ではないか。
そうすれば私はなんでも出来るし、私が配偶者を選ぶ立場になる。そう。もしもそれしか方法がないのであれば……。
「まて! シルフィン!」
「待ちません!」
私は目から涙が溢れてきてしまうのを感じながら、ヴィクリートに、愛しの婚約者に向けて叫んだ。
「何もかも貴方の妻になるためだったのに! もし、貴方と結婚出来ないなら、私はなんのためにここまでやってきたのよ!」
ヴィクリートの襟首を掴んだ私の手が震えている。その手にボタボタと涙が落ちた。
悲しくて悔しくて、そしてどうしようもなく愛おしくて。
「結婚する! どんな手段を使っても、絶対に貴方と結婚します! そのためなら皇帝にだってなります! 私は諦めません!」
強気な言葉とは裏腹に、泣けて泣けて仕方が無い。こんなに頑張ったのに、どうして分かってくれないのか。ヴィクリートのバカ! 鈍感! 朴念仁!
エグエグと泣いている私の頭を、ヴィクリートはそっと、抱き寄せようとして、私が素直に抱かれなかったので、苦笑しながらグググっと力を入れて抱き潰した。
反抗的な私を力任せに抱き締める。花壇の花の中で、私は顔をヴィクリートの胸の中に埋めた(強制的に)。
「分かった。もう泣くなシルフィン。すまなかった」
ヴィクリートの声はスッキリしていた。どうも驚きで酔いが飛んだんじゃないかしらね。そりゃ、婚約者が皇帝になるなんて言い出したら驚くでしょうよ。
「弱気は禁物だな。手綱を緩めたら、君はどこまで暴走するか分からない。メルバリードなどには御しきれぬ。やはり私でなければな」
そうですよ。貴方以外の誰に私の夫が務まる物ですか。と、返事をしたかったけども、私の顔はヴィクリートの胸に埋まっていたから無理だった。
「結婚しよう。シルフィン。そしていつまでも共にいよう」
何を今更。そう思いながらも、私はまた涙が溢れてしまって、それはさっきとは違う嬉し涙で、私はヴィクリートの背中に手を回し、力一杯抱き締めた。もう魔力は出ていないから、普通の力に戻っていたから、彼を抱き潰す事は無かったけどね。それでも彼の手が少し緩んで、私は声を出す事が出来た。
「……いつまでも。一緒に」
それはとっても幸せな想像だったわね。
夜の庭園で花に埋もれて抱き合って笑う二人。なんとなくロマンチックっぽいけど、花壇の泥で実は二人とも結構泥だらけだったんだからね? 暗くて見えなくて助かったわ。
◇◇◇
こうして私とヴィクリートは無事に結婚式を迎えた。
十日間のなんというか大騒ぎな祝宴続きをこなしてね。お祝いしていただく立場なんだから文句は言っちゃいけないんだけど、やっぱり前後十日ずつは長過ぎだと思うの。私もヴィクリートも結構疲れ果てていたわよ。
「大丈夫だ。結婚式をすれば幸せで疲れも吹き飛ぶから」
と皇太子殿下はおっしゃっていたわね。ちなみに妃殿下は「私は全部が終わったら寝込みましたよ」と仰っていた。さもありなん。
結婚式本番は早朝から公爵邸でウェディングドレスに着替えてお化粧だ。真っ白なドレスは輸入品の絹と職人の傑作であるレースで出来ていて、それに数十個のダイヤモンドと真珠が飾られている。
総額幾らになるかなんて検討も付かない。勿論これの費用も国家予算だ。帝国臣民の皆様の税金で出来ている。
……というのは少し嘘だ。国家予算は本当だが、私達の結婚費用のために貴族の 皆様が多額の寄付をして下さったので、それで結婚式の費用は賄われているのである。
完璧に仕上がった私を見て、レイメヤーは目に涙を浮かべていた。
「良かったですね。シルフィン様」
彼女は私が公爵邸に入ってからずっと面倒を見てきてくれたので、あの芋くさ令嬢が遂にちゃんと公爵家の花嫁になったのだと感慨深いのだろう。私だって自分の今があるのは彼女のお陰であると思っているから、彼女の祝福には感無量だ。
私はレイメヤーを軽く抱いてお礼を言う。
「ありがとう。レイメヤー。何もかも貴女のお陰。次は貴女とアーセイムの番ですからね」
レイメヤーは泣き笑いで困っていた。彼女は本当は結婚する気は無かったそうなのだけど、彼女は私の主任侍女になった時点で伯爵夫人であり、伯爵家の次男であるアーセイムは婿にぴったりだった。
私もヴィクリートも、お義母様も強く勧めた事もあり、彼女は退職してアーセイムを婿に伯爵家を構える事になったのだ。レイメヤーが居なくなるのは寂しいけど、彼女が好いた相手と一緒になって幸せになるのならそれが何よりだ。
後任の主任侍女にはミレニーがなる。それを聞いてミレニーは仰天したのだけど、私が強く希望したのでは仕方が無いと引き受けてくれた。
「婚期が遠のいた~」
と嘆いていたけどね。彼女は魔力は無いけど、人を使うのが上手くて要領も良いから上手くやるでしょう。ミレニーがこれからも側に居てくれれば私も安心だ。
ドレスを着たらヴィクリートより先に真っ白な馬車に乗り、大神殿に向かう。同じ家から時間差で出発するのである。この時点で既に結婚式は始まっているのだ。公爵邸の門を出ると、既に大勢の見物人が貴族街の通りを囲んでいる。この方々は位の低い貴族のや貴族の子女で、大神殿に入りきれない方々だ。
「おめでとうございます!」
と口々に叫びながら花弁を振りまいてくれる。私は窓から外を見ながらお礼の意味を込めて手を振った。
大神殿に到着すると入り口を入ってすぐのところでヴィクリートを待つ。ヴィクリートは程無く到着し、神殿の入り口の白い階段をゆっくりと登ってきた。
ダークブルーのビシッとしたコートとズボン。タイは薄い金色だ。ううう、ヴィクリートは美男子だし、この所祝宴でも毎日着飾ったイケメンな彼を沢山堪能していたのだけど、この本番の衣装は極めつけに素敵だわ!
赤茶色の髪はオールバックに撫で付けられ、精悍な顔には少し化粧がされている。唇に軽く紅をさしてもある感じだ。
そして私を見て微笑む。きゃー! きゃー! 素敵! 私の旦那様素敵!
と心では大騒ぎしながら、私はヴィクリートに手を預ける。そして二人は並んで列柱の間を通り、大神殿へと入場した。
一段高くなった通路を進むと、低くなった所を埋め尽くしてもの凄い数の人達が居た。上位貴族及び外国からの来賓の皆様である。最前列には皇帝陛下を筆頭に皇族の方々がいらっしゃる。その一千人くらいの方々が一斉に拍手をして下さった。神殿の天井に音が反響して、ウワーンと神殿全体が唸る。耳を押さえたくなるがそういうわけにもいかない。微笑みを維持したまま私とヴィクリートは大きな女神像の前に出る。
女神像は台座に乗っていて、しかも実際の人間の五倍以上の大きさがあるので、見上げてもお顔は判然としない。人間の二倍くらいの高さの台座には凱旋式の時に登った聖なる座がある。
今回は流石に聖なる座には昇らない(皇太子殿下の結婚式の時には上らなかったので、差が付かないようにしなければならない)。その下のステージみたいなところに大神官と巫女が三人。そしてお義父様とお義母様がいらっしゃった。
本来、これに加えて私の父母も居るべきだが、亡くなっているものは仕方が無い。お父様もお母様も、私が次期公妃になるなんて知ったらきっとビックリするわね。
私達を見て、お義父様もお義母様も嬉しそうに微笑みながら仰った。
「おめでとう。遂にこの日がやってきたな。まさかこんな盛大な式になるとはな」
「おめでとうシルフィン。今日という日が無事に迎えられて本当に良かったわ」
お二人の心からの祝福に、私はちょっと涙が溢れそうになってしまったけど、お化粧のために我慢する。流石にこの演台の上で化粧を直すわけには行かない。
ちなみにお二人は私にばかり声を掛けてヴィクリートは放置だった。その辺は流石に実の親である。
私とヴィクリートはお義父様とお義母様から麦の穂を一束ずつ受け取った。これも本来は私は実の母親から受けるべきだが、お義母様に代行してもらった。そしてそれを大地の女神像にお供えする。そのまま両手を胸に当てて跪くと、私達の前に大神官が出て、大地の女神様への祈りを促す。
「大地の女神は人々に仰った『結婚して子を増やし地を広げるように』と。今ここに新たな夫婦が誕生して大地の女神との盟約を果たさんとしている。愛し合う男女よ。夫婦となり大地の女神との盟約を果たすと誓うか」
大地の女神様が本当にそう仰ったのなら、多分、ドンドン魔力を地に注いで領地を広げるように、という意味だろうね。と私は思いながら、私はヴィクリートと共に宣誓を行った。
「はい。誓います」
「子を産み、育て、大地を耕し、護り、長く長く二人手を携えて生きる事を誓えるか」
「はい。誓います」
ここは多分大地の女神様のお言葉関係無い、後世の付けたしだなぁ、なんて事は言わない。大地の女神様は多分、人間の結婚なんて興味ない。結婚は女神様じゃなくて人間の領分なのだ。
「大地の女神様は二人の願いをお聞き届け下さった」
重要なのは、女神様が聞き届けてくれるかどうかでなく、ここで二人で永遠の愛を誓うことにあるのだ。
私とヴィクリートは立ち上がって、二人で向かい合った。ヴィクリートがいつも通りの柔らかな笑顔で、しかし瞳に熱情を込めて見下ろしている。
私達を三人の巫女が囲み、一人は聖水で、一人は香炉の煙で、一人は花びらを掛けて私達を祝福してくれた。それが終わるといよいよあれだ。
でも、皇太子殿下のを見た時には「こんな大勢の前で恥ずかしい!」と思ったんだけど、実際あの時以上に大勢の方々に囲まれているにも関わらず、私は全然恥ずかしいとは思わなかったのよね。確かにそういえば妃殿下も「そんな事考えている余裕はありませんでした」と言ってたんだけど、この時の私はもっと違う衝動に駆られた。
もう早くヴィクリートにキスしたい。飛びついてぶちゅーっとしたい。ヴィクリートの目を見ていると、そういう衝動に駆られて仕方が無かった。とっとと結婚式終わらせて、ヴィクリートとベッドに飛び込んで子作りして、私は彼の子を何人も産むのだ……。
私はハッとした。流石にこれはおかしい。ちょっと流石にはしたない。私は思わずヴィクリートよりも更に上。大地の女神様の大きな像を見上げる。高すぎてよく見えないそのお顔を。
すると、その大地の女神像のお顔がにんまりと笑ったのだ。こ、こら~!
あの悪戯女神様。あそこで見てたのね! 流石は女神様の大神殿。この衝動もあの方の悪戯だろう。
「どうしたのだ?」
自分から視線が外れた事をヴィクリートが訝る。私は視線を彼に戻した。
「何でも無いわ」
「そうか」
そう言うとヴィクリートは私を抱き寄せ。私の頭を押さえると、私の唇に熱烈なキスをしてきた。ちょ、ちょっと、明らかに儀式的なキスでは無い。なんというか熱烈な、その、危険すら感じるような奴だ。むちゅーっと吸われ、少し舌まで入ってくる。あ、これ、女神様の悪戯がヴィクリートにまで及んでるんだわ。
来賓の皆様は大盛り上がりしているけど、ちょっとまって! このままだと本気でここで押し倒されかねない。私はヴィクリートの背中を叩いたんだけど彼は正気に戻らない。何度も何度もキスを重ねてくる。困った。嬉しいけど困った。このままでは大惨事だ。私は大地の女神様に必死で祈った。
『なんとかして! 結婚式が終わったらちゃんと子供作って、沢山作って、女神様の土地を増やすために頑張りますから! 今はだめー!』
女神様の大笑いする声が聞こえたかと思うと、ふっとヴィクリートのキス攻撃が止んだ。ヴィクリートは顔を離すと、ちょっとビックリしたような顔をしていた。どうやら正気に戻ったようだ。
「……すまぬ。やり過ぎた。あんまり嬉しくてつい……」
ふう。油断した。大地の女神様は確かに私達に産み増え栄え地に満ちる事をお求めだ。特に大魔力を持つ私達には沢山子供を作って、女神様の領域を他に広げて欲しいのだろう。それにしてもなかなか強引な女神様だ。気を付けないと。
まぁ、私だって、その、その気はあるから大丈夫ですよ女神様。結婚したら彼の子を沢山産む気はね。私はヴィクリートに寄り添い、囁いた。
「……帰ってから、ゆっくりとね」
顔を赤らめるヴィクリートを、私はその様子が面白くてちょっと笑ったんだけど、これで完全にやる気になった彼に、この夜私は結構大変な目に遭わされる事になったのだった。
それは兎も角、私とヴィクリートはもう一度、今度は儀式的なキスをして、もう一度ヤンヤの大喝采となった皆様に二人で手を上げて応えた。
こうして私とヴィクリートは無事に夫婦になり、私はシルフィン・アイセッテ・レクセレンテとなったのだった。
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「私をそんな二つ名で呼ばないで下さい! じゃじゃ馬姫の天下取り 」(SQEXノベル)イラストは碧風羽様。「貧乏騎士に嫁入りしたはずが!? 」(PASH!ブックス)イラストはののまろ様です。好評発売中です! 買ってねー(o゜▽゜)
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