005話 2078年の電脳状況

記録デバイスを首のインターフェースに挿入した後、自分の電脳について疑問が浮かんだ。


「セリュリア、電脳ってどんなことができるの??」


「電脳は、人間の脳を電子化し拡張する技術です。記憶容量の拡大、情報処理速度の向上、感覚の拡張、そして人間の機能や知識をアップグレードすることができます。」


「やっぱりそんな未来が来てたんだね。ナチュアの人は電脳化してないと思うけど、テクナの人は全員電脳化しているの?」


「いえ、必ずしも電脳化しているわけではありません。」

「まず、電脳へのアップグレードにはコストがかかるため、すべての方が手に入れられるわけではありません。」

「また、電脳がもたらす利益とリスクを考慮し、リスクを避けたいと考える方もいます。」


「リスクとは、具体的に?」


「電脳化により、脳と電子デバイスが直接接続されるため、機器の故障や不具合によって脳機能が障害を受ける”電脳障害”」

「インターネットや仮想世界への依存が深まり、現実との区別が曖昧になり、心身のバランスが崩れる”サイバー依存症”」

「電脳化技術の使用に伴い、電磁波への過敏症が増加し、頭痛、倦怠感、不眠などの症状を引き起こす”電磁波過敏症”」

「電脳化によって情報過多や過剰なコミュニケーションが発生し、耐性が低い人は、精神的な疲労やストレスが高まり、うつ症状などの心身の問題が引き起こされる”デジタルストレス”」

「これらを含め、ほかにもさまざまなデメリット、社会問題があることは否めません。」


「社会問題?確かに身体的に耐性がない人はデメリットもあると思うがそれ以外にもあるの?」


「ジンさんが来た2025年と比較して発生した社会問題を説明しますね。」

「いまのところは電脳に制御がかかっているので、実例はありませんが、電脳が身体およびその方の意識にアクセスできる範囲が拡張すると、人間らしさや感情、倫理観が失われる可能性があるといわれています。人間の心身を超えた能力を持つことで、他者への共感や道徳観が低下するリスクも懸念されています。」

「そして、電脳化によりナチュアのホワイトカラーの人々は需要がなくなり、失業するナチュアが増加しました。」

「加えて、電脳化技術へのアクセスへはある程度資産がないといけないので、社会的不平等がさらに拡大しました。」

「これを受け、安い電脳を導入した方はセキュリティが不十分であり、ハッキングによって、個人情報が漏洩した事件もあります。」

「これらの”電脳倫理論争”や”経済的格差”により、ナチュアとテクナの間に深い溝ができております。」


確かに、言われたら納得するような問題ばかりだが技術革新を推し進める必要もあるから、なかなか深刻なことだ。

「これを最大限に使えるようになりたいが、何か拡張する必要はあるの?」


「拡張することもできますが、まずは電脳でできることに慣れる方が良いかと思います。」

「まずは、電脳からインターネットにつなげることから始めましょう。」

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