第22話 一方その頃王都では……①(sideユリウス)

-side ユリウス-




「さてと、オーウェンがいなくなって、1ヶ月程が経つ。追放の証拠を集めも、行き詰まりだったけど、それも今日で終わると思うと、ちょっとスッキリするね」



 オーウェンの件で、僕の対応は後手に回っていた。王族であるにも関わらず、ソフィアに側近を買収され。生徒会を乗っ取られたという失態。早々にオーウェンの名誉を回復させないと、後々取り返しのつかない事になる。

 危機感を感じ、オーウェンを追放した後、彼の名誉を挽回するために、血眼になって証拠を集めたが、どれも決定打に欠ける。行き詰まりを感じていた時にあのお方から連絡が来たんだ。もしかしたら、あのお方なら、現状を打破するきっかけになるんじゃないか?--っと、思ったから相談したところ、快く引き受けてくれるようになった。



 今日はその人を学園に案内する日だ。

 相手は転移魔法でこちらにやってくる。

 世界で3人しかいない大賢者と呼ばれた、権威のある世界的な魔法使いだ。機嫌を悪くさせて、他国に流出でもさせたら、それこそ国家の一大事。親しくさせて頂いているとはいえ、失礼の内容にしないと。

 そう思いながら、身だしなみをチェックし、校門の前まで行く。すると、お目当ての人物は既にいた。早速、内心焦る。



「お待たせして、申し訳ございません」

「ああ、いい、いい。こっちが、早く来すぎただけだからねえ。時間を潰すにも、中途半端でね。待つのも嫌いじゃないから魔法の研究でもしながら、時間を潰してたのさ」

「ああ、そういう事でしたか……。もしかして、待ち合わせ時間を間違えたのではないかと、ほっとしました」

「ははっ!あんたが時間を間違えるというのは想像がつかないねえ。それはないから安心しな」

「よかったです。それにしても、お久しぶりですね。さん」



 神速の大賢者。エリーゼ。それが今回の件でとてもお世話になっている方の二つ名だ。

 かつて、国家にエンシェントドラゴンが現れた際に、互角に渡り合ったとされる国の英雄。王室の歴史書にも記載されていて、史実ではあるとされている。

 だけど、正直信じられないよね。意味がわからないもん。



「ああ。久しぶりだね。ユリウス殿下。元気してるかい?」

「ええ。おかげさまで。多少の心労は、ありますが」

「それに関してはうちの馬鹿弟子が本当にすまなかった」

「い、いえいえ……、学園長のせいではないですよ。学校の環境はとても良いですし、お忙しい方でしょうから、生徒間のやり取りなど、知らないでしょう」



 王立レオンハルト学園。国内で最高の卒業実績を持つ学園の学園長は、エリーゼさんの弟子とされている。



「それでも、あれだけ優秀な人材をあたしのところへ行く事を操作できたとはいえ、王都から追放してしまったんだ」

「ああ、やはり、エリーゼさんから見ても彼は優秀でしたか」

「そうさね。正直、追放なんて、回りくどい方法をしなくても、あやつ程の実力を持っているのならば、もっとどうにか出来たんじゃないのかい?」

「やろうと思えば、出来ました……。ただ、この機会に、彼に足りないものを補って貰おうと思ったので」

「頼れる仲間……か」

「やはり、分かりますか」

「そりゃ、あたしも伊達に長い事生きてないからね」

「あはは……!野暮でしたね。おっと、こんなところで、立ち話もなんですから、早速ご案内いたします」



 僕たちは、目的地に行く前に、オーウェンの最近の様子を話す。



「最初リオンシュタットに来た時はどうしようかと思ったよ。死んだ目をしていたからね」

「貴族社会は彼にとって窮屈すぎましたからね……。最初って事は今はマシになっているんですか?」

「ああ。少々荒療治を。お陰で今は冒険者たちに揉まれて、いい感じに仕上がりつつあるよ。ブランなんて、あいつを弟子として、育てるなんつって、張り切っちゃって!」

「ブランというと……、武神、ブラン様の事ですか!?」

「ああ。そうさね」



 武神ブラン。Sランクの言わずと知れた超大物な冒険者。王家の血を引いている公爵家の3男でありながら、5歳の頃から負けなし。

 強い奴と戦いたいからと言う理由で、家出をし、冒険者になった変わり者。

 幸い、実家とは仲が良かったみたいで、その後、あまりの活躍に実家から呼び出しを無事にくらい、国王陛下にも呼び出しをくらい、貴族として伯爵位を賜っている破天荒なお方。武神はその際につけられた二つ名。

 本人的には、冒険者として生活したいからと言う理由で、本人の望んだ魔境の一部を領地として貰い、早々に王都から出て行った。



「どえらいお方に気に入られたのですね」

「はっはっは!まあ、それだけのポテンシャルはあるさね」

「そうですね。僕も、彼の実力は大いに評価しています」



 親友が大物に、褒められるの聞いていると嬉しいね!鼻が高いよ。そんな事を話している間にお目当てのところが見えてきた。



「到着しました。ここが学園長室です」



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