あれから半年の間に…… ④
「と、ところで、ボクが眠っている間にギラファスの裁判って終わったんだよね? あの後ってどうなったの?」
高ぶっていたレファスの気が少し落ち着いたところを見計らって、ボクはずっと気になっていたギラファスの裁判の結果を聞いてみることにした。
天界を揺るがせた張本人の逮捕に公判ということで、きっと天界中の注目を集めたに違いないギラファスの裁判。
ボクの『シミュレーション』では問題なかったけど、予想外の出来事が起きた可能性もあるから、やっぱりきちんと聞いておきたかったんだよね。
レファスは『あぁ、忘れてた……』って感じにちょっと眉を動かしてから、直ぐにいつもの笑みを浮かべると、ギラファスの判決内容を教えてくれた。
「ギラファスは情状酌量の余地を認められて、懲役5年、執行猶予10年の判決が出ているよ。…………ああー、そうそう! そのことでガーレリアに話があったんだ!」
レファスが急に大きな声を出して、手のひらの上をポンッと拳で叩いた。
ギラファスに執行猶予がついたと聞いてホッとしたけど、その後に付け加えられた “何だかわざとらしい” レファスの言葉。
その仕草も、上擦った声も、まるで取って付けたようで……
なんだろう、凄くイヤな予感がするんだけど……
そんなボクの心情とは裏腹に、レファスは急にその笑みを深めると……
「来週から、ガーレリアのお披露目のための式典が開かれるからね! 天界中を半年かけて回ることになるから、そのつもりでいるんだよ?」
……と、唐突に語った。
「なあっ……!? (な、何でぇ——!?)」
あまりにも驚きすぎて、ボクは声にならない声を上げた。
ギラファスのことを聞いただけなのに、どういうわけか『ボクのお披露目』に話が移行している。
(お披露目の式典を催すってことは下界で聞いてたけど、て、天界中を!? それも、はっ、半年もかけて!?)
ボクが口をぱくつかせながら目を白黒させていると、レファスがその理由としてギラファスの裁判が関係していることを語った。
その話によると、どうやらギラファスが裁判で『ボク』の存在を『奇跡の象徴』であるかのように語ってしまったらしいのだ。
人々の注目を集める中、証言台の前で事件のあらましを語り終えたギラファスが、『ボク』の存在と、自身が『王者の洗礼』で『ボクの信者』になったことを声高に宣言したんだって。
自身が『王者の洗礼』を受けた時の
そのせいで、天界中の人々の関心が『ギラファス』から『ボク』の方へと向いてしまったそう。
そして、ギラファスによって作り上げられた『
……って、いやいや! ちょっと待って!? ナニソレ!?
「いやぁ、そうしたら今朝、ガーレリアが目覚めた!って聞いてね。それで嬉しくなって……つい『天界中を
レファスは、まるで『通販サイトを見てたら、つい注文しちゃった♪』っていうような軽いノリで、とんでもないことをサラリと言った。
いや『発表しちゃった!』って……テヘッ!って感じに言われても……
でも元々、式典は
っていうか、レファスが何よりも嬉しそうだ。
……うん、まあいいか……
ボクは、幸せそうに式典について語るレファスを見て、これ以上は深く考えないことにした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
それから半年の間、アーティストの全国ツアーさながらに執り行われた『お披露目の式典』。
その『お披露目』の名の下に、ボクは天界各地で
バルコニーから民衆に向かって優雅に手を振る、なんて柄にもないことをやらされて……本当に大変だった……
しかも、ただでさえ大変な式典の最中に、レファスが『王家の再興』を宣言してしまったから、更に国民が盛り上がってしまって……
あっ! もちろん政治体制は今まで通りだから、大きく社会情勢が変わったりはしないらしいんだけどね!
まあ、とにかく、レファスは王家を再興してしまった。
何を思って王家を再興したのかは分からないけど『王家の再興』を宣言する前に、頻繁にギラファスと話し合っていたみたいだから、そのことが影響しているんじゃないかな?とは思っている。
でも、そういうわけで、ボクは『天界政府の新人天使』から『天界の王女』へと一瞬にしてジョブチェンジしてしまい……ますます多忙な日々を送ることになってしまった。
という訳で、この半年間、息つく暇もないほどに忙しかった。
……だからあの日以来、ボクはずっと下界に行けないままで、ついに今日という日を迎えてしまったんだ……
◇◆◇◆◇
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