☆判決の時①
レファスとギラファスの話し合いも最終局面を迎え、後は判決が下されるのを待つばかりだ。
だけど、もしギラファスが拘束……なんて事態になってしまうと、ボクとしてはとても困ってしまう。
なにしろ、アルを助けられるのは、消滅者治療の第一人者であるギラファスしかいないんだから。
だけど、今のボクにできることと言えば、どんな判決が下されるのかとハラハラしながら事の成り行きを見守ることだけだ。
それも、レファスに抱きかかえられた姿勢のままで……って、いや、もう、そろそろ下ろしてくれないかな……?
(何はともあれアルの治療のためにも、どうか保護観察程度になりますようにっ!)
ボクは心の中で、そう祈りながら、この後も 2人の邪魔をしないよう静かに見守ることにした。
ギラファスの言い分を聞いて物思いに沈み込んでいたレファスが、ついに顔を上げた。
天を見上げ、気持ちを切り替えるかのように『ふうぅぅっ』と大きく息を吐くと、正面に立つギラファスに視線を移し、スッと表情を引き締めた。
そして——
「……ギラファス……」
——と、厳かなる声で呼びかけた。
たったそれだけで、神聖で、畏怖の念を抱かせるような空気がこの場を支配した。
(!!……いよいよ、判決を下すみたいだ……)
ボクはその様子を固唾を飲んで見守った。
普段の優しげな雰囲気とは打って変わって、お仕事モードになったレファスは一味違う。
さすがは『現・天界トップ』で『元・王様』だ。
「今、ここで判決を下すことは可能だが、お前にはあえて天界にて裁判を受けてもらう。これがどういう意味か……お前には分かるな?」
「…………ご配慮、感謝する」
レファスは天界で裁判を行う旨を告げながら、最後に意味深な言い方をした。
それに対して、ギラファスは感謝の言葉を述べている。
(うん? どういうこと? よく分からないけど……でも、ギラファスがお礼を言っているってことは、悪いことにはならないんだよね?)
よく分からないながらも、どうやら安心できそうな雰囲気にボクがホッと胸を撫で下ろした時だった。
「では、これよりお前の身柄を天界政府が拘束する」
言い終わると同時に、レファスがサッと片手を上げて何かのサインを送った。
途端に、崖の上で待機していたフィオナ&精鋭使徒部隊がバッと駆け降りて来ると、あっという間にギラファスを取り囲んだ。
精鋭使徒部隊員の一人がギラファスに向かって神力キャンセラーを照射し、それを受けたギラファスは不快そうに眉間に皺を寄せながら足元をふらつかせる……
その隙に、フィオナと数人の部隊員がギラファスに駆け寄り、サッとその手首に手錠をかけてしまった。
「えっ……?」
思わず声を漏らしてしまったが、後に続く言葉が出てこない。
なにしろ、瞬きするほどの時間に起きたこの捕り物劇……ボクはこの展開に付いていけず、現状の把握に時間がかかってしまっていた。
(えっ、何これ……何が起きたの?…… ギラファスは……逮捕……されちゃったの?)
じわじわと状況を理解するに従って、『
「はっ、離してください! ギラファスが連れてかれちゃうっ!」
……ボクはいつの間にか、レファスの腕から抜け出そうと必死になって
だけど、レファスは、ボクが、こうなってしまうということが分かっていたかのように、暴れるボクのことをギュッと強く抱きかかえ直した。
「大丈夫、大丈夫だ! ガーレリア、ギラファスのことはパパに任せなさい。悪いようにはしないから」
レファスがボクを落ち着かせようと、ボクの背中をポンポンと軽く叩きながら、
だけど、そう言われても『
「だ、だって連れてかれたらっ……!」
そう言って、ボクはレファスの腕の中でジタバタと暴れた。
そんなボクを安心させようと、レファスが、さらに言葉を重ねてくる。
「大丈夫、大丈夫だから。ガーレリアが『
何度も大丈夫だと言われ、ボクは、ようやく落ち着きを取り戻すことができた。
レファスは、ボクが『
ボクの事情をそこまで理解してくれているレファスが、それでも『大丈夫』って言うんだから、本当に大丈夫なんだと思えた。
ボクは、レファスの胸元に
(何だろう…… 上手く説明できないんだけど、この人のことは、無条件で信じられるような、そんな安心感を感じる)
穏やかな気持ちに包まれながら、ぼんやりと、そんなことを考えていたのだが、ふと、レファスが最後に言った『だからこそ、ギラファスは天界で裁判をした方がいい』とのセリフが気になった。
だからこそ? 天界で裁判? それって……
「……? どういうこと?」
ボクを、抱きかかえ続けているレファスを、パッと見上げると、答えを求めて、その顔をジッと見つめながら、コテンと首を傾げて問いかけた。
「グフゥッ! な、なんてことだ…… 僕は、この子を一生、嫁に出すことができない気がするっ……!」
「??……ど、どういうこと……?」
レファスが、一瞬、苦しそうな息を吐いたかと思うと、感極まったように声を振るわせながら、ブツブツと訳の分からないことを言い出した。
な、なんか、求めていたのとは違う答えが返ってきたんだけど……?
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