第三十四篇 テーマ「自粛明け」 ジャンル「恋愛」

 彼と出会ったのは、自粛前の年末のパーティーだった。

 混んでいて話す時間がなかったけれど、目が合うたびに緊張した。

 その後もたまに会っては話をしていたけれど、まだ二人で過ごす日はなかった。


 やっと自粛が解除され、彼から誘われた。


「お酒でも飲みませんか?」


 お酒なら私でも少しは話しやすくなるかも、と思い、了承した。


 一緒にカクテルバーに行き、ふたりでおしゃべりしていたら、突然彼が真剣な表情になった。


「実は、あなたが好きなんです」


 私はびっくりして、口が開かなくなった。

 そんな後ろめたいものを言われたのは初めてだった。


「でも、もし迷惑だったら、二度と言いません。友達としてもいいです」


 彼の言葉に、私はじわじわと胸が熱くなっていくのを感じた。

 彼も私に気持ちを抱いてくれていたのだ。


「私も、あなたが好きです。でも、それ以上に嬉しいのは、あなたが友達のままでいてくれることです」


 私はそう言って、彼に手を差し伸べた。


 窓から差し込む月明かりが、私たちをやさしく照らしていた。

 自粛期間が終わり、改めて彼と向き合えたことが、私にとっての自粛明けの最高の贈り物だった。

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