第12話 得体のしれない咆哮
「ハヤト! 大丈夫!?」
「あぁ」
でも正直、体中が痛んで仕方ない。
おまけに、全身から力が抜けてしまうのは、
とまぁ、少し
「おいおい、その腕、どうなってるんだよ」
まぁ、当然の
「分からん。
変わったことと言えば、表面を黒色の
あと、よく見たら
ぱっと見では、
でも、取り外したりは出来なさそうだ。完全に
と、そんな俺の腕をマリッサが
「……」
「何か知ってるのか?」
「知る訳ないでしょ? 逆に、
「まぁ、そうだよな。俺もまさか、さっきの
「違うよ。コラル・クラブが危険だったのは認めるけど。それ以上に、普通の人間が
「それはどういうことだい?
「……」
首を
と、その瞬間、
「今度はなんだ!?」
「建物が、いや、地面が
嫌な予感を覚えた俺は、
「天井が
大きく揺れる建物の天井に、少しずつ
ここに
「話は後だ! 今は急いでここから逃げよう!」
「アタシが道を作る! 皆ついて来て!」
先陣を切って走り出したメイ。
そんな彼女の後を追うようにして、俺達は建物の外に向かった。
途中、背後から
そうして、なんとか正面入り口から飛び出した俺が、一息つこうと
「ギャオォォォォォォオオォォ」
少なくとも、俺は一度もその声を聞いたことが無い。
そんな
「あれ! 何か飛んでる!!」
「あれはまさか、ドラゴンか!?」
「ドラゴン……」
ドラゴンに思う所があるらしいメイが、こぶしを握り
そんな彼女に声を掛けようとした俺は、突然肩に飛び乗って来た
「メイ、今は落ち着いて、逃げることだけ考えろ」
「し、
彼の言葉で気を取り直したらしいメイ。
取り敢えずは
車が動けば、荷物も含めてみんなで逃げれるな。
そう思ったのも束の間、再び足元が大きく揺れ始めた。
「また揺れ始めたよ!」
「皆、壁から離れて1箇所に集まれ! 無理に立とうとするな! しゃがみ込むんだ!」
そうして、
これは、皆で車に乗って
「マリッサ! ガルーダで皆を運べないのか!?」
ようやく揺れが収まったと同時に、俺は彼女に問いかける。
「この人数は無理だよ! 私とあと1人くらいなら乗せてくれると思うけど」
「だったらメイと
「ハヤト!? いや、アタシ達だけ逃げるなんて」
「落ち着けメイ。俺は俺で、逃げる足を見つけたってだけだ! この先のことも考えれば、ここで入手しておきたい。だから、マリッサ! 頼んだぞ!」
「ちょっと! あぁ! もうっ!!」
背後から聞こえて来たマリッサの声を無視して、俺は車に駆け寄った。
地震が発生した時、車に乗ってた場合は
「鍵、鍵、鍵、あってくれよ!! 1台で良いから! あってくれ!」
目に見える範囲でも10台くらい放置されてる。
そんな車の運転席を探った俺は、
「あった! さすが日本人、
日本のどこでもよく見かける、軽自動車だ。
「どこの誰だか知らないけど、助かった! 少しだけ、車を借してもらうからな」
エンジンもかかるしガソリンも半分くらいは残ってる。問題なさそうだ。
そうして、俺が車を発進させた直後、空の様子が一変し始めた。
「なんだ!? 浮いてた水が、
俺の背後に
対するドラゴンが対抗しないわけ無いよな。
全方位から襲い掛かる水流を
そんなブレスの1発が、俺の
「道が、
ただでさえ地震で至る所に
このままじゃ、道路と一緒に
と、そんな俺の状況を察してか、
「ナイスだガルーダ!!」
バックミラーの中の道路が音を立てて
風に乗った車ごと、まだ
ドラゴンも
ここはもう大地の上だから、地面が
やっぱり
「ふぅ……なんとか逃げ出せたか。それにしても、あのドラゴンは何だったんだ?」
車から降りて、思い切り背伸びをした俺は、頭上からガルーダが降下してくることに気が付く。
「ハヤト~!」
「おう、メイ。それに皆も。全員無事そうだな」
ガルーダから降りるなり、勢いよく飛び掛かって来たメイを全身で受け止めた俺は、彼女の頭を
と、
「あぁ、ったく、ヒヤヒヤさせるなよ」
「ははは。俺も運転中は本気で
「これで貸し1つだね」
「いや、さっきコラル・クラブを倒せたのは俺のおかげだろ? ってことは貸し借りなしだと俺は思うが」
「トドメを刺したのはメイだったよね?」
「それじゃあ、俺もマリッサも、メイに1つ借りがあるってことだな」
「え? アタシ?」
メイは急に視線が集まったことにドギマギしている様子。
そんな彼女の様子に何か思う所でもあったのか、マリッサは小さくため息を吐いた後、肩を
「まぁ、そういうことになるのかな?」
「えへへ……でも、アタシだって皆に助けられてばっかりだよ」
「お互いさまってやつだな。うん。良いことじゃねぇか。オイラ、なんかちょっと
「お前はどの目線でモノを言ってんだよ」
なにはともあれ、全員無事で逃げ出せたのは幸運だったな。
でも、これで全部終わりってわけでもないか。
今回、また分からないことも増えたわけだし。
俺の右腕の事とか、地震のこと、それと、ドラゴンのことも。
今の俺達には、話し合いをする時間が必要な気がするな。
「よし、それじゃあ車も手に入ったことだし、一旦スーパーまで戻ろう。でも、油断は禁物だぞ。もしかしたら、さっきのドラゴンが追いかけてくるかもしれないからな」
「うん!」
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