なりすまし

@9zth7DcB

第1話

心の病気はあこがれるようなものではありませんと医師は言った。私は診断名に納得がいかなかった。

「適応障害」

あんまりじゃないかと思った。突きつけられた現実に氷水をぶっかけられた気分。何のために2万円弱支払って、遠いところから発達障害専門病院までやってきたのか。「発達障害」という診断名が欲しかったから。

ADHDでもADSでもどちらでもよかった。なんならカナーでもよかった。しかし診断名は「適応障害」で、それで障害者手帳を申請することになった。なんてこったい。

休職手続きのための書類は書いてもらえることになったし、手帳も出たし、それで満足するべきだった。でも、納得できなかった。

病院の受付で、ソーシャルワーカーから手続きについての説明を受けた後で、私は「適応障害という病名は変えられないものでしょうか?」と訊いた。彼は一瞬戸惑ったような表情を見せた。

私は「ずっと自分のことを、発達障害だと思っていたんです。だから適応障害と言われても別の病院へ行けばまた変わるんじゃないかって…」

どうでしょうかね…ソーシャルワーカーは言った。発達障害は重度障害ですからね、自分もこのクリニックで多くの患者さんにお会いしましたけど。

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