第9話 本好きの美少女

僕は今、待っていた。目の前にいる宮咲さんと話すために。


「......あの...キリ良い......ところ...まで、読んだ」


「あ! じゃあ紹介していい?」

「...うん」


「こちら、灰羽奏汰くん。そして灰羽さんの担当看護師の北条静華さん」


「......宮咲...るな...」


「よろしくねー! るなちゃん」

「うん......」


「あ...灰羽奏汰です」


僕は初めて宮咲さんの顔を見る。

そして僕は驚いた。こんなにも綺麗な容姿をしているなんて。


スラッとしている身体に、白い肌。サラサラで綺麗な少し金色の混ざった白髪に、整った顔立ち。まるで精巧に作られたお人形さんのよう。


「あ......! ...それ...ミシェルシリーズ......」


あ、本持ったままだった...これがミシェルシリーズなんだ。宮咲さんがずっと見ちゃうのも分かる。面白いもん。


「そうだね」

「本......好き?」


「好きだよ。このミシェルシリーズは今知ったけどね」


「......じゃあ...ここにある面白い本......教える...よ?......あと......そのミシェルシリーズの本......途中のやつ...だよ」



ここで少し違和感に気づく看護師2人。


「あれ? るなちゃんって普段こんなに喋りますか?」

「いーや。普段は私以外全然喋らないよ」

「じゃあなんで奏汰くんだけ...」

「それはねぇ......」


「──なるほど。るなちゃんは奏汰くんの優しさに既に気づいちゃってるわけね」

「そういう事よ」



「──それで......この本が...灰羽さんが持ってた......本の第一巻......これから...読んでみて」


「分かった、ありがとう! あと奏汰でいいよ」

「じゃあ......私も......るな.........で...いいよ...」


るなちゃんは少し恥ずかしくなっちゃったのか持っていた本で自分の顔を隠した。

本の端からはみ出ていた顔は少し赤かった。


「そうそう、るなちゃん。その灰羽さんに言いたい事があるんだって?」


「え......あ......神崎...さ......」

「え、そうなんですか?」


言いたい事ってなんだろう? さっき初めて会ったんだけどな。


「そっ...それは......」


「神崎さん! それって...」

「そう。ずっと気にしてたみたい」

「あらー謙虚ね♪ こんな青春したかったわ」


頬に手を当てながら言う静華さん。悲しそうな言葉を後に添えて......



「あっ......その......心配してくれて......ありが...と...」


「......心配?」


何かしたっけ......何も思い当たる事が無いんだけど。


「朝ご飯......アレルギー......で...心配してくれた」


「間違えて普通のパンだったっていう事は知ってるよ? 僕のと入れ替わっちゃったんだよね」


「うん......」


「うんまあ、要するにね灰羽さん」

「あ、はい」


「朝ご飯が灰羽さんのと入れ替わってて、るなちゃんはそれに気づいて無事替えてもらってたんだけど、部屋に戻る時に聞こえちゃったんだよね」


「え? 何がです?」

「るなちゃんを心配する奏汰くんの声が」

「あっ......」


(そんな事よりアレルギーの子は!?)



「思い出した?」

「はい」

「それでるなちゃんはお礼を言いたかったの」

「そうだったんですか......」


「...だから......ありがと」


奏汰は少し笑みを浮かべた。そして...。


「どういたしまして」


奏汰がそう言うと、るなちゃんは笑顔になった。


その姿はまるで天使のよう。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


あとがきです。


どうも、まどうふです。


るなちゃんは精神病にかかって入院中ですが、人と話すのが大の苦手で、言葉が詰まってしまう。というのと、家に居た時に、急に精神状態が不安定になる時があるので、扱いきれず、長期間療養という形で心のケアを行っている。という感じです。


何故扱いきれなかったと言うと、るなちゃんは日本とフィンランドのハーフで両親は海外赴任中。根っからのおばあちゃんっ子なるなちゃんは、母の実家。つまりおばあちゃん家に留まることになった。

そしておばあちゃんは精神状態が不安定なるなちゃんを扱いきれず病院へ。精神病を患っていた事が発覚し、そのまま入院へ。

って感じです。金色の混ざった白髪はハーフなので。



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