240522-6
夕方。と言ってもまだまだ陽が沈み切るには早い午後4時過ぎ。水の宇宙船と呼ばれるスポットに訪れた俺たちはその名のとおり宇宙船のような形をしたガラスの大屋根の上をただゆっくりと散歩をしながらその幻想的な雰囲気に酔っていた。
「雰囲気的にカップル同士で歩くのが良いんだろうなって思ったっす。だから、楯くん、千花さん、藍ちゃんと三景くん那月ちゃんに先に行ってもらったまではわかるっす。何であたしのパートナーがさいちゃん何すか!?」
「し~っ、そんなに大きい声出したらダメだよ~ こんなんでもさいちゃんさんは人気アイドル……って誰が来ん何でもやね~ん」
「自分が一番声出しているじゃないっすか」
「まあまあ。袖振り合うも他生の縁、躓く石も縁の端くれ。共に踊れば繋がる縁。この世は楽……」
「彩香さん、それ以上はダメ。多分ダメ」
一周するまで割と乗り気でさいちゃんさんと手を繋いで歩いていたのに今更何を言い出すのだろうと黙って聞いてしまっていたからかツッコむのが遅れてしまった俺の代わりにちゃあんと元ネタを知っていた千花が止めてくれた。
「さてさて、お時間的に自主研修はここで終了だと思うけど~ ジュンじゅんたちは名古屋を存分に楽しめたかな?」
「さいちゃんさんがどの立場で話しているのかは謎ですけど、俺たちが(一応)この自主研修の目標としていた『名古屋の食文化・魅力を五感で感じる』は達成できたかと」
「もう少し見たかったけれど、色々な海を再現した水族館を視て楽しむことは出来たし」
「この土地でしか見られない
「名古屋の名物も味わった」
「地元の人たちの声も聴けたよね」
「この場所では名古屋という土地の匂いや自然も感じられたよね」
「そっか、そっか~ さいちゃんさん感激だな~」
何故、俺たちの修学旅行で最も楽しみにしていたイベントがさいちゃんさんに乗っ取られてしまっているのか不思議で仕方が無いが、この修学旅行は以前の修学旅行とは別の意味で一生思い出に残る気がした。
まあ、あと2日あるのだけれど。
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