第11話 探索者になる 後編


 私の眼前に数値が浮かび上がる。




名前:市御 ひとえ


LV:1


攻撃:2


体力:10


防御:3


速度:10


知力:0


魔力:0


特性:防御タイプ。


スキル:鋼鉄ボディ。




 え!? 

 なんか弱っ!!

 全てのステータスがウロちゃんに負けてる!!

 しかも魔力ゼロとか終わってるしぃ。


ズゥーーーーーン……。


 終わった。

 探索人生終了のお知らせ。

 S級探索者の母さんの子供だからさ、ちょっと期待してたけど、全然ダメじゃん。


「ひ、ひとえさん! 防御タイプですよ! す、すごいです!!」


「いや……。外れタイプでしょ。そもそも、防御タイプの癖にさ。防御の数値がウロちゃんより低いって終わってるじゃん」


「そ、それは……。その……」


 ああ、なんかめちゃくちゃ落ち込むよ。


 受付嬢はニヤリと笑った。


ひとえさんはスキル持ちですね!」


 え?

 ああ、鋼鉄ボディね。

 そう言われてもなぁ。防御力が低すぎるし。


「これは中々のレアスキルなんですよ!」


「そう言われても、このステータスじゃなぁ」


「試しに鋼鉄ボディをタップしてみてください」


「ああ、なんか詳細見れるんですかね?」


 ポチッと。




○鋼鉄ボディ レベル1。


防御値を1000倍にしてプラスする。

全属性の魔法耐性。

魔法ダメージを20%軽減する。




 おおおお!

 なんか……強いかも!?


「うは! ひとえさんすごいです! これなら敵の攻撃が通りませんよ!!」


 確かに……。

 1000倍なら防御力は3000になるのか。レベル1でこれなら桁外れかも。


「流石は一香さんの娘さんです。このレアスキルならダンジョン探索は快適かと」


 一時はどうなるかと思ったけど希望は持てるかもしれない。そもそも、攻撃はバゴーザーがやるわけだし。ウロちゃんが賢者タイプだから色々な魔法を覚えてくれそう。


 バゴーザーが攻撃。

 私が防御。

 ウロちゃんが魔法。


 あれ?

 なんかめちゃくちゃバランス良いパーティーだぞ!


「うん! やる気出てきた!」


「あは! わたくしも楽しくなって来ましたわ!!」


「では、ひとえさんたちは初心者の探索者ですから最低ランクのE級ランクとさせていただきます」


 それはそうだよね。


「どうやったらランキングは上げれるのでしょうか?」


「3回ほど、その等級のダンジョンを攻略すれば1等級上がります」


「あ、じゃあ既に初級を2回攻略してるからさ。あと1回でいいのかな?」


「へぇ……。既に攻略済みでしたか。ではステータス画面で攻略ダンジョンの履歴を見てみましょうか」


 そんなのができるのか。探索者に登録するって恩恵がすごいな。


「はぃいいいいいいいいいいいいいい!?」


「びっくりしたぁ! ど、どうしました!?」


「え、え、S、S……」


「はい?」


「S級ダンジョンを攻略してるぅうううう!!」


「え? 私たちが攻略したのは初級ダンジョンですよ?」


「そんなわけありません。ダンジョンにはボスモンスターの名前が付けられていますからね。カースフレアドラゴンのダンジョン。イービルブリザードイーターのダンジョン。いずれもS級ダンジョンですよ!」


「ええええ」


 そうだったの?


「うは! すごいですよ。ひとえさん!!」


 いやいや。

 どうなってるんだろう?


 ……そういえば、コメントでは何人かの人がS級モンスターって書いてたな。

 ネット視聴者の戯言だと思って無視してたけどさ。あながち間違ってなかったのかな?


 バゴーザーのダンジョンサーチで見つけたダンジョンを攻略しただけなんだけど?

 あの能力ってバゴーザーの適正能力に似合ったダンジョンが案内される条件だよね。

 つまり、バゴーザーってレベル1で既にS級の力を持っていたってこと?


 うう……。母さんがくれた可変ゴーレムは相当にすごい代物だったんだなぁ。


「もしかして、登録費用の200万は魔晶石を売ったお金でしょうか?」


「……ですね。イービルブリザードイーターを倒した時にゲットした魔晶石です」


「それは高値で売れますよ」


 なるほど。全ての辻褄が合ったな。


「ですが、初級登録はE級からなのです。それに探索者に登録したからには等級と見合ったダンジョンに入ってもらうのがルールとなっております」


「へぇ。じゃあE級の探索者はE級にしか入れないんですか?」


「ええ。罰則はありませんが事故防止の観点から協力はしてもらっています。面倒ですがよろしいでしょうか?」


「うん。仕方ないよね」


「ではイティハーサが配信するダンジョンアプリをご活用ください」


 へぇ。アプリまで配信してるんだ……。


 それは探索者だけに与えられるダンジョンの情報が詰まったアプリだった。


「このアプリを使えば、ダンジョンに関する有益情報が直ぐにでも知ることができます」


「じゃあダンジョンの地図も?」


「勿論です。ご自身の等級を入力すれば今入ることのできるダンジョンが表示されますよ」


 バゴーザーのダンジョンサーチと被ってるな。


「ただし、配信する時は使えません。そこはご注意くださいね」


 なるほど。

 じゃあ、基本的にダンジョンに潜っている時は使えないな。

 配信中はカメラとスマホが同期して配信画面が優先されるもんね。

 状況によって使い分けが必要なのか。


「よし。んじゃあ早速ダンジョン攻略行こっか」

「はい♪」


「あ、仲間を集めるならダンジョンギルドがありますが?」


「なんですかそれ?」


「イティハーサの奥の建物がギルドになっているんです。そこで探索者の仲間探しやクエストの受注などが可能です」


「ああ、じゃあ今はいいです」


「え?」


「2人でいくんで。ね?」

「はい♡」


「で、でも、未成年の女の子だけで? 危険では!?」


「ははは。もうS級ダンジョンを攻略してるからさ」


「……そ、そうでした」


「じゃあ、説明は終わり?」


「はい」


 えーーと。お姉さんの名前は……。


「私はサンドラです」


 ああ、


「じゃあサンドラさん。色々ありがとうございました」


「ではクエストを攻略しましたらまた声をかけてください。ひとえさんの情報は私が担当させていただきますので」


「うん。じゃあ早速行ってきます」


「はい。お気をつけて! ご武運を祈っております」


 私たちは厩舎に行った。


「駐車券の無料は2時間までだからね」


「残り時間は10分ですか。イティハーサは見る所が多くて楽しいですね」


「うん。これからボチボチ通うだろうからさ。少しずつ探って行こうよ」


「はい♡ とっても楽しみです」


 バゴーザーは私たちに顔を擦り付ける。


『ブルル……。ウマァ』


「ははは。ちょっと寂しかった? ごめんね」


 ダンジョンアプリを起動して、初級ダンジョンを表示させよう。


「よぉし。んじゃ初級ダンジョンに行こう!」

「はい!」


 バゴーザー白馬モードは即座に初級ダンジョンに到着した。


 あ、そだ。

 

「ウロちゃん。初級からでもダンジョン配信しようよ」


「はい。そう思って用意したのですが……」


「どしたの?」


「す、すごいです! ダンジョンライダーの登録者数が1万人を超えています!!」


 えええええ!?

 再生数は……。


「100万越えぇええ!?」


 なんかすごいことになってる!!

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