第3話 ボスバトル!
可変ゴーレム、バゴーザーの眼前には巨大な赤い竜、カースフレアドラゴンがいた。
こいつを倒せばダンジョンクリアだ。
そういえばバゴーザーの人型でモンスターと戦うのは初めてだな。
母さんは、的確な指示を出せって言ってたけど。どこまで正確な指示がいいんだろう?
右手で防御、左手パンチ、とかかな? それはそれで面倒かもしれない。
とりあえず、
「バゴーザー! カースフレアドラゴンをやっつけろ!」
『ウマ!』
おお!
かなり抽象的指示だったけど言うことを聞いてくれたわ。
バゴーザーはカースフレアドラゴンに向かってパンチの連打。
おおお!
「バゴーザー! がんばれ!!」
『ウマ!』
うわぁい。理解度高すぎぃ。
しかし、バゴーザーはドラゴンの尻尾に弾かれてしまう。
「わぁあああ!! バゴーザーぁあ!!」
吹っ飛んだバゴーザーは壁の中にめり込んだ。
「大丈夫!?」
バゴーザーは瓦礫を跳ね除けて元気に立ち上がる。
『ウマ!』
「おおお! 傷一つない!!」
今度はドラゴンの炎攻撃。口の中からバゴーザーに向かって放たれる。
「うわぁああ! ちょ、大丈夫!?」
『ウマ!』
「おおおお! まったく効いてない!!」
バゴーザーのレベルは4だけど、それだけでも十分な強さなんだな。
初級ダンジョンだから敵が弱いのかもしれないな。
んじゃあ落ち着いて考えてみよう。
バゴーザーのできる攻撃用の能力は……っと。
○
鎖付きの拳が敵目掛けて飛んで行く。
これだぁ!
「バゴーザー!
『ウマ!』
バゴーザーが右手を前に出すと拳だけが敵に向かって飛んでいく。
バシューーーーーッ!!
おおお!
カッコいい!!
ロボットアニメのロケットパンチみたい!!
命中するとカースフレアドラゴンの右半身が破壊された。
バキィイイイイインッ!!
「うは! 凄い威力!!」
拳には鎖が付いており、自動で元の腕に戻る仕組みになっていた。
んじゃ、もう一回だ!
「バゴーザー!
『ウマ!』
バキィイイイイインッ!!
カースフレアドラゴンの残った左半身を破壊。
「やった! 倒したわ!」
ドラゴンは消滅して手のひらサイズの石になった。
「魔晶石だ」
確か、これが売れるんだよね。もらっておこう。
『ウマ! レベルアップ!』
おお!
『レベルが4から10に上がりました』
えええ!?
上がりすぎじゃね?
流石はボスだ。
それとも初級ダンジョンだからサービスなのかな? まぁ、どっちでもいっか。
取得能力はこんな感じ。
○防御特化 レベル1
防御力が+10%される。
○攻撃特化 レベル1
攻撃力が+10%される。
○速射火炎ブレス レベル1
口から炎魔法を出す。
○体力特化 レベル1
体力が10%アップする。
○ダンジョンデータ レベル2
ダンジョン内の情報がわかる。
現在表示できる情報。階層。地図。
○
頭部に付いたカッターで敵を攻撃する。
〇〇特化は基本ハズレ能力と見ていい。
攻撃能力っぽいのがありがたいよね。
お! ダンジョンデータがレベル2になってる。
ダンジョン内の地図が表示できるのはありがたよね。
ゴゴゴゴゴゴーーーー!
え、なんだなんだ?
地響きと共にダンジョンは消滅。
辺りは日の光に包まれた。
「うわ、眩しい!」
地上に出たのか。
「あはは。めちゃくちゃ楽勝だった」
『ウマァ』
「ふふふ。君のおかげだね。バゴーザー」
バゴーザーは馬の頭を私の体に擦り付ける。
『ウマァ♡』
「ふふふ。いーーこ。いーーこ」
あ、そういえば。
「君って内在魔力で動いてるっていってたよね?」
『ウマ?』
ステータス画面を表示させる。
内在魔力
12/10000
はい??
「ちょ、左が現状値でしょ? もうすぐ切れるじゃん。なぜ言わなかった!?」
『ウマ!』
えーーと、確か、魔晶石が燃料になるって母さんが言ってたな。
んじゃあ、さっきゲットしたカースフレアドラゴンの魔晶石で。
「これ食べる?」
『ウマァ♡』
バゴーザーは喜んで魔晶石を飲み込んだ。
ステータス画面を確認する。
内在魔力
10000/10000
おお、一気に満タンだ。
「これからは燃料が切れそうな時は知らせるように!」
『ウマ!』
なんか理解してくれたっぽい。
素直で可愛い奴だな。
「んじゃ、母さんの所に帰ろっか」
『ウマ』
「バゴーザー! バイクモード!」
ガキィイイイイイイン!!
「おっと、忘れる所だった。カメラの録画ボタンをオフにしておこう」
記録動画は家に帰って確認かな。
母さんに報告する楽しみもあるしね。ふふふ。これはいい仕事だ。
☆
『偉い! 流石は我が娘!! 早速ダンジョンをクリアしたわね!!』
「へへへ。バゴーザーが全部やってくれたけどね」
『命令とバイクの操作はあなただからね。
「あはは。なんかすごく楽しかった」
『ふふふ。ダンジョン探索の魅力はまだまだ奥が深いわよ」
だよね。なにせまだ初級のダンジョンなんだから。
『それじゃあ、生配信の状況が気になるわよね。丁度、この地下室にはパソコンがあるからそれで確認できるわよ』
「うは。至れり尽くせりだ」
しかし、
「ああーー!」
『どうしたの?』
「動画がちゃんと撮れてない……。私の髪の毛がレンズに掛かって真っ暗になってる」
『あちゃあ……。バイクに乗ってると髪の毛まで気が回らないわよね』
「それに、わずかに映ってる景色も随分とブレてるしね。これは探索動画にするには見苦しいよ。何やってるかわからないし」
『それじゃあ撮影者が必要ね。バイクの後ろに乗せて撮影してもらう協力者』
協力……。
「それをボッチの私に言いますか?」
『あなたならきっとできるわよ。私の子供なんだから』
「母さんもボッチだったんでしょ?」
『それは言わないでよ』
うーーん。
小学校の時にやった誕生日会は誰も来なかったからなぁ。
高校生になってもクラスメートとは仲良くないし……。
ああ、ラノベの読書とゲームばっかりやってるのが裏目に出たなぁ。
んじゃあネットで募集するぅ?
うう……。全く知らない誰かをバイクの後ろに乗せる勇気が出ない。
じゃ、じゃあ、クラスメートの誰かか……。
この時。
コメント欄をオフにしていたことを。
そして、0から始めた彼女のアカウントのファン登録者数が既に100人を超えていたことを。
『なにこの配信? やらせ??』
『女の子がカースフレアドラゴンを倒したっぽいぞ?』
『ありえねーーw』
『よく見えなかったけど、一瞬で倒したっぽい』
『まさか、こんなに簡単にカースフレアドラゴンを倒せるわけないじゃん』
『なんか、めっちゃ速く移動してたようなんだけど??』
『移動手段が謎! よく見えなかった!!』
『アカウント名が数字の羅列って適当だな。初心者か??』
『とりあえずチャンネル登録はしておく! 次回に期待!』
『あれは絶対にカースフレアドラゴンじゃないって! ボカして誤魔化してるだけだよな! だって、カースフレアドラゴンはS級モンスターなんだからな!』
☆
翌日。
彼女は高校1年生である。都内にある私立ピープロメテウス高校に通っていた。
その昼休み。
(さぁ、声をかけなきゃだけど誰にするかなぁ? 男子はないよねぇ。そうなると女子だけど。うう……)
見渡すと女子たちはグループが出来上がっていた。
(ああ、リア充どもめ。ダメだ、声をかける勇気が出ない)
その時である。
彼女は強烈な視線を感じた。
チラ……チラ……。
(ああ、西園寺さんだ……。また私のこと見てるや……)
それは黒髪のハーフエルフだった。
日本人とエルフの混血。
青い目をしており肌は雪のように白い。勿論、耳はとんがっている。
クラス1の爆乳の持ち主だ。その大きさはIカップを超えると囁かれていた。
彼女の名前はウロタカ・フォーマ・西園寺。
(西園寺さんって私のことをめちゃくちゃ見てくるんだよねぇ……。なんか怖いから目を合わさないようにしてるんだけどな)
西園寺はボッチである。
「…………」
(あれ? 市御さん。随分と今日は
(あーー。西園寺さんって鋭い目つきで怖いんだよなぁ。声をかけるのはなぁ……)
(や、やっぱり見てますわ。わ、
(しかし、消去法では彼女しかいないんだ。ボッチは彼女だけだしな。クラス1の美少女だけどさ。冷たい表情だから誰も声を掛けたがらないんだ)
(い、市御さんが
(し、仕方ない。声を掛けてみるか)
(こ、こっちに来ましたわーー!)
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