幕間4
全十二ある魔鋒粛正士団の指揮官が召集される定例会で、皇帝から下された決定だった。
当然、異を唱えた。
それでもレオンハルトが反対の意志を見せれば、彼を慕う者たちが集い、反旗を翻せた。
それはつまり、内乱を意味する。味方も皇帝派も、両陣営に被害が出るだろう。
ただでさえ帝国は、魔女を優遇する唯一の国家として諸外国から危険視されている。
そこへ内輪揉めによる瓦解が起きれば、他国が干渉してくることは目に見えていた。
つまり、レオンハルトが
功績を重ね、期待を背負えるだけ背負い続けた末、身動きが取りづらい立場になっていた。
それでも、やれることはある筈だとレオンハルトは先遣隊の指揮を買って出た。
かつての自分が巻き込まれ、翻弄されるしかなかった第四次世界大戦を再演させない為に。
先遣隊に配属されたヴィットーリアも気がかりだ。戦争の引き金は、彼女の一撃となる。
そこにどんな大義を盛ろうと、世界からの風当たりは相当強くなる。だが自分が指揮官になれば、指示を出した自分が責任を負えるだろう。
そう決めて、いざ出陣の日。共和国から脱した諜報員からの救難信号が来た。
技術情報は盗めたが、ニカンドロフの捕縛にも暗殺にも失敗したと。自分の至らなさのせいで戦争が起きてしまうと。涙を噛み殺した報告を受けた。
この年若い青年に両国の、世界の命運が掛かっていたのかと愕然とし、気付いた。
最初から失敗することが前提だったのだ。皇帝は、諜報員救出と魔女狩りという大義名分のもと、ニカンドロフを内包する危険因子を排除しようとしていた。
摘まれていく。ヴィットーリアも諜報員の青年も、若い芽が実力を成熟させる前に使い潰されていく。あってはならないことだ。
未来を託す次世代が、自分たちだけで戦えるようになるまでの時間を稼がなければ。
……けれど、一つだけ思い違いをしていた。進軍中、第七空挺舞台が立ちはだかっていると報告を受けた際の、ヴィットーリアの言だ。
「口が悪くてイイ趣味して傲慢で実力があるのにサボりたがる持った教養を棚に上げたキレやすい、父親の話振るともっとキレやすい不良が居たっけ。猟兵で面倒くせーのはソイツだな」
同族嫌悪か?と聞いたら「はっ倒すぞ」と圧をかけられた。
もし、仲間に支えられながら、ナイフ一本で挑んで来た彼がソイツであるならば。
自分が思っているよりも、ずっと、次の世代の芽は、開花の兆しを、見せ、て……——
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