第2話

昨日、上司に「イヤな事は飲んで忘れよう」ってアドバイス貰って、そのまま実行したら、何とイヤな上司の事すっかり記憶から消えるという不思議な出来事が!


気分爽快。

学校出て初めての社会経験に意欲燃やして張り切ってた頃のオレが帰ってきた! お帰り、オレ! あの頃のキラキラのオレ会いたかったよ。


…なんて事もなく、朝イチ出会った知ってる顔がクソ上司なんて、ついてない一日の始まりじゃねーか。


「ははーん、さては遅れて来た反抗期だね?」


うるせえ、滅びろ。

と言うわけにも行かず(いや、小声で言ったけども)、適当にクソ上司様に挨拶をしてスマホに目をやった。


スマホの壁紙は、この仕事してて唯一良かったなと思う、仕事上で知り合ったグラビアアイドルとの写真。

広告の写真撮影の時に撮らせてもらったヤツ。もう天使超えて女神。今日もこの画面見ながら戦う。


世の中に使えない上司、何でオマエが偉いの?というヤツがたくさんあると思うが、ウチのクソ上司ほどじゃないと思う。


何ならクソ上司コンテストやったら三位以内に入る自信はあるぞ。もう人として、社会人としてダメ。先輩に相談したら、世の中には必要悪ってのがあって、と言われたがそんなもんで済ますな。必要悪に謝れ。


普段、オレは朝から夜まで外回りしてるから、会社のデスクにいるのは、夜中の数時間くらいなのに、アイツ、その数時間で三件もやらかしてんだよ。


その一、節電宣言。

「会社のコスト削減のために、不要な電気は消しましょう」

…って、あちこち消しまくって、仕事のデータが入ったサーバーの電源落としたんだよ。幸いウチの技術者が直前にバックアップ取ってたから大惨事にはならなかったけど、サーバーの復旧まで仕事が出来ない中惨事だった。

で、当の本人は電源切りまくって満足して帰ったまでは、まだいいとして、翌日、仕事が片付いてない件に関してキレまくる。怒ってテーブル叩いた拍子にこぼれたコーヒーがパソコンに、って出来の悪いコントかよ。


その二、エレベーター事件。

最近、よその部署からも相談を受けてるのだが、エレベーター内で女子社員に必要以上ににくっつき匂いを嗅ぎまくる。

今回はクソ上司イチオシの女の子とエレベーターが一緒になり、興奮しまくったアイツは、エレベーター室内の酸素を吸い付くさんばかりに匂いを嗅ぎすぎて、クソ上司の口に女の子の髪が吸いこまれた。

女の子は悲鳴を上げて、エレベーターが着いたらそのままダッシュで逃げ出した。


その後、早退し髪を切ったらしい。


その三、マイボトルの中に酒。

クソ上司部長は、ほぼ毎日打ち合わせと称して取引先と会社の経費で飲み回ってるので普段から酒臭い。

取引先もそれを知った上で、クソ上司と打ち合わせをする。本気で仕事するときは別の上司と打ち合わせをするので、多分カモられてる。

普段から酒臭いので気にしていなかったが、どうも仕事中も飲んでいると言う噂がたった。気になるのがずっと持ち歩いている小さな水筒。

コーヒーやお茶なんかは、社員用の自販機(社員カードをかざせば無料で飲める)で済むのに、トイレに行く時も待ってる。

社員同士で、コレは怪しいと隙を見て奪おうとしたら、抵抗してきて暴れて、中身を室内にぶちまける。


そして漂うアルコールの匂い。


オレ、このままだと多分過労死する。

仕事のキツさじゃなくて、クソ上司の対応に。死因、クソ上司。


ろくに仕事をしない。

勤務中に飲んだくれる。

自分のミスは人に押し付ける。


なんで、こんなヤツがクビにならず、のうのうとしてるのか。もしかすると、実はスゴイ能力の持ち主でオレらが見てないところで活躍してたり、最悪でも会社の偉い人の親族とかで優遇されてたり、とか。


先輩が探偵雇って調べたが、何もなかった。

社長の弱みを握ってるとかもなかった。

実は入社当初は超エリートで、って言ったら先輩に大笑いされた。


「あぁ、あの人、入社式に遅刻した上に、歓迎会で酔って大暴れして連れて行かれたよ」


…連れて行かれたって、どこに⁉︎

それ以上は聞けなかった。


いやもう、コレはクソ上司じゃなくて、社長が寛大すぎるんだろ。そして、クソ上司の鋼のメンタル。


この二つは見習いたい。


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俺の嫌いな上司 @goose351

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