File40

 翌日、校内は、昨夜旧校舎で起こった一連の出来事の話題で持ち切りだった。


「昨夜の旧校舎には小生たちと恐田一味の他に誰もいなかった筈だが、どうして、こんな大騒ぎになっているのだろうか? 恐田一味にとっては誰にも知られたくない話題だと思うのだが」

 佐茂が眉間に皺を寄せながら言った。

「俺っちは、言ってないさ」

 すかさず、虎丸が言った。

「いやいや、小生は我が部員も終夜先生のことも微塵も疑ってないんだなあ」

「おそらくですが……恐田一味が今後悪さをしないように協力をしてくださった霊や妖怪のみなさんたちが昨夜の出来事のお話しをしているのを、多少なりとも霊感のある御方がたまたま聞いてしまったといった感じかと思うです」

「それさ! それ以外考えられないさ!」

 疑いが晴れた容疑者のように虎丸が言った。

「ところで、恐田 狡毅たちは学校に来たですか?」

「1年A組の後輩に聞いたんだけど、急遽転校することになったらしいさ。江口 一色と白桃 艶香も登校してないってさ。恐田たちにいじめられていた生徒も安心したのか、明日から登校するって話さね」

「良かったなの。あたち、弱い者いじめ許せないなの」

 美魂さんが言った。

「恐田父の方もマスコミに大人気のようだな」

 佐茂がスマホの動画ニュースを一同に見せた。画面右上のテロップには、

『速報 政治資金規正法違反 恐田炎院えんいん議員 逮捕』

 という文字が躍っていた。

「まあ、自業自得ということだな」

 部室のドアが勢いよく開いて、白衣姿の終夜先生が登場した。

「やあ、諸君! 待たせてしまって申し訳ない! 昨夜は大変ご苦労であった! 準備はできているかい?」

「はいっ! 行きましょう!」

 一同の声が重なった。


 一同が旧校舎の敷地内に足を踏み入れると、所々で生徒たちや教師、学校関係者の姿が見受けられた。若葉色の葉を纏った木々が金色の光を浴びながら薫風に撫でられそよそよと揺れており、昨夜とは一転して清々しい空気が流れていた。本校舎前の、ただし子さんの銅像の台座の上には色とりどりの花々とランニングシューズが供えられていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

降魔高校オカルト部の怪異事件帖 喜島 塔 @sadaharu1031

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ