File35
「この棺の中に、アンタたちの愛する子たちを封じ込めたわ」
「ちょっ、待てっ! キサマ、私の息子を殺したのかっ!」
恐田氏の顔が爆発した怒りで業火のように真っ赤に染まった。
「いいえ。まだ殺してないわよ。大切な人質を殺しちゃったら意味ないじゃない?」
ただし子さんは、氷のような微笑を浮かべながら淡々と言った。
「お願い! あなたにしたことは謝るから、娘を返してよお」
白桃が泣き叫んだ。
「悪かった! 俺たちが悪かったから、息子を返してくれ、頼む!」
江口が土下座をしながら言った。
「私からも、この通りだっ! 狡毅は、この先のこの国を変える政治家になるために生まれてきた子なんだ」
恐田氏も土下座をした。
「そうね。この先のこの国を地獄に変える政治家になるかもしれないわね」
ただし子さんは、せせら笑った。
「まあ、どうでもいいわ。アンタたちの子を想う気持ちはよく分かったわ」
「息子を返してくれるのかっ?」
恐田氏が言った。
「いいわよ。条件付きでね」
「条件?」
3人が同時に息を呑んだ。
「アンタらの可愛い可愛い子のために、銅像になりなさい! 永遠にね。言ったわよねえ? 『我が子のためなら何だってできるっ!』て」
そう言って、ただし子さんは狂ったように嗤った。瘴気がどんどん濃く強くなっていき、ただし子さんが張った結界の外にも漏れ出していった。
「どうしよう。このまま放っておいたら、ただし子さん、悪霊になってしまうです」
結界の隅にこっそり隠れていた二家が美魂さんに小声で言った。
「今、止めることができなかったら、霊音の霊力を最大限に解放しても敵わないと思うなの。それに、最大限の霊力解放に霊音の体が耐えられるかどうか心配なの」
美魂さんが言った。
「私なら大丈夫です、美魂さん、お願いしますです」
二家の覚悟を受け取った美魂さんは、彼女の霊力を最大限に解放した。旧校舎の敷地内に足を踏み入れた時とは比にならない高密度の白い焔が二家を命懸けで護っていた。
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