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 六月二十三日。風速 正子さんの二十五回忌当日。二十一時三分。


 終夜先生とオカルト部部員一同と美魂さんと、ただし子さんの親友の駿河 逸美さんが、体育館跡地がある北門の前で、ただし子さんを成仏させる作戦の内容確認をしていた。一歩誤れば命を落としかねない危険な作戦だ。皆、緊張で顔が強張っていた。


「私は霊能者、美魂さんは神の使いとしての使命がありますから全身全霊で使命を全うするですが、皆さんは、この世界のプロではないです。誤解しないでください。皆さんをバカにしてるわけではないです。この道に生きる私たちでさえ、今回は少し怖いです。だから、此処で降りても責めたりしません。この敷地内に足を踏み入れたら、もう後には引けないですから」

「な……何を今更言うんだい。二家くん。私は、オカルト部の顧問として皆を護る使命がある。それに、ただし子くんを苦界から救い出したいという気持ちに偽りは微塵もない」

 終夜先生が生まれたての小鹿のように足を震わせながら言った。

「確かに、小生は霊能力をもっていないが、この頭脳を使って、二家と美魂さんのサポートをすることができるんだなあ」

「俺っちには霊能力もないし脳筋だけどコミュニケーション力じゃ負けないさ。それに、俺っちは、ただし子さんと同じ陸上選手だからね。きっと共感できる話題が多いと思うさ」

「私は、ただただ、正子に会いたい。会って謝りたい。どんな姿になっていても正子は正子です。怖くなんかありません」

 皆の覚悟を受け入れた二家は、

「皆さんの覚悟、しかと受け止めたです」

 と言って微笑んだ。

「ところで、皆、この門どうするんさ? よじ登るんさ? 俺っちはできるけど」

 虎丸が、一同の眼前に聳え立つ牢屋のような門扉を指差しながら言った。

「それなら、問題ない」

 終夜先生がスーツパンツのポケットから鍵を取り出し一同に見せた。

「いやあ、新校舎の方だと、遠隔式の電気錠だのパッシブセンサーだの防犯対策がなされていて少し面倒臭いのだがね、旧校舎の防犯対策はこの鍵ひとつ。実にシンプルだ」

「ええっ? 終夜先生、そ、その鍵、勝手に持ち出したんすか?」

 虎丸が体をのけぞらせた。

「いや? さすがの私も、そんなコソ泥のような真似はしないよ。校長先生にお願いしたら快く鍵を貸してくれたよ」

 そう言いながら、終夜先生は、校長先生と奥さんとは違うと思われる若い女性が仲睦まじそうにしているスマホ写真を皆に見せた。

(コソ泥より質が悪い)

 一同、心の中で一斉にツッコミを入れた。

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