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 恐田 狡毅らの事件が起きてから二週間ほどの時が過ぎた。この事件がきっかけで恐田 狡毅の「裏の顔」は学校中に知れ渡り、彼を慕っていた者たちは手のひらを返した。事件当初は恐田のことを心配していた信者たちも「3人で家出でもしてるんじゃね?」という至極現実的な考えをするようになり、彼らにそっくりの銅像に関しては、彼らに恨みを持つ者による悪戯か、彼らの自作自演であり「呪い」などという非現実的なものではないという意見が多勢を占めるようになり、素行が悪い3人が姿を消したことで学校内は平穏を取り戻したかのようにも見えた。恐田らに恨みがある生徒は奴らが何らかの事件に巻き込まれて戻ってこないことを祈って、奴らの机の上に不吉な花言葉をもつ花を飾ってスマホで撮影をしたりしていた。


 一方、恐田、江口、白桃の親たちは、毎日のように学校と警察を行き来し、職員らに対して罵声を浴びせていた。特に恐田 狡毅の父であり政治家である恐田 狡介氏は社会的地位が高い権力者で彼の理不尽な言動は大概がまかり通ってしまうことから、学校側も警察も今回の事件を無下に扱うわけにもいかず、銅像の件に関しては捜査を打ち切りたいというのが本音なのだが恐田氏の怒りを買うと面倒なので、限られた人数で頑張っていますよというていで、渋々捜査を行っているという印象だ。


 そして、皆の緊張感が緩んだ頃合いを見計らったかのように三度目の怪異事件は起こった。被害者は2年C組の目立めだち 我利矢がりや。自称ユーチューバーだ。彼は今回の事件を『我利矢がゆく!』という彼が運営しているチャンネルで使いたいネタだと思っていたが、旧校舎の門に「立入禁止」と書かれたポリスラインが張り巡らされていたために断念しようと思っていた。だが、その矢先に警察が捜査の手を緩めた。「自称」ではなく、専業の売れっ子ユーチューバーになりたいと思っていた彼は、このチャンスを逃すわけにはいかないと思い、深夜、旧校舎に忍び込んだ、というわけだ。

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